【はあちゅう×村上萌対談:前編】「自分らしく働く」って何だ!? 20代女子が“そこそこの幸せ”を捨てたときに見つけられるモノ
誰かの仕事や生き方が羨ましく思えたり――。
周囲からの評価を気にして、何となく「いい子」で生きてきた自分が嫌になったり――。
私たちは一体、いつになったらこのモヤモヤ地獄から抜け出せるのだろうか。
そんな悩めるWoman type世代とともに20代を過ごしてきたのが、会社員からフリーランスの作家へと転身してキャリアを重ねるはあちゅうさんと、『NEXTWEEKEND』代表としてメディア運営や雑誌の発行、イベントプロデュースなどを手掛けてきた村上萌さん。最近の2人を見ていると、何だかすごく自分らしく伸び伸びと仕事をしている。
「ずっと背伸びをしていた」と2人が振り返る20代。30代を前にようやく踵を下ろし、地に足をつけて歩き始めた2人の姿から、私たちがもっと自分らしく働き、納得感を持って生きていくために必要なことを考えてみたい。
20代は「80%くらいの幸せ」にずっとモヤモヤしていた
――オンラインサロン『ちゅうもえの楽屋へいらっしゃい』の運営や『週末野心手帳』の開発など、一緒に多彩な活動をされてきたお二人。私たちから見ると、ものすごくキラキラした生活を送っているように見えるのですが、20代半ば~後半にかけて悩んだことはありますか?
はあちゅうさん(以下、はあちゅう):いろいろと悩みまくりですよ!
村上さん(以下、村上):うん。一番悩む時期だよね。
はあちゅう:私はずっと「これだ私の仕事だ!」と思えるものに出会えなくて、毎日モヤモヤしていました。「書く仕事」がしたいという気持ちはあったし、ビジネスパーソンとして学べることが多そうだったのと広告に興味があったので、電通に就職したはいいものの、憧れの職場にいたはずなのに時々「この人生でいいのかなあ……」とふと不安になってしまったり……。周りからは「本も出せて電通にも入れて、人生上々だね」なんて言ってもらっていたんですけど、心の底では「こんなはずじゃない」とか「もっと自分がやりがいを感じられる仕事があるはず」っていう想いがずっと消えなかった。だからと言って、何をどうすればいいかなんて全然分からないし、ただずっと鬱々した気持ちを抱えていましたね。
村上:私も同じです。20代半ばのころは自分が本当に何をやりたいのか定められないまま、ずっと不安を抱えていました。就職活動は一応したけれど、結局もらった内定を全部辞退しちゃって、みんなが華々しく入社式を迎える中、私だけニート状態になっちゃって(笑)。このままじゃいけないとは思いつつ、焦っても答えは見つからなくて、当時はすごくつらかった。
――意外にも、お二人とも元から「やりたいこと」が明確だったわけではなかったんですね。ずっとモヤモヤした気持ちを抱えていたということですが、周囲からの評価が気になったりもしていましたか?
はあちゅう:私はすごく気にしていました。当時は、大学生の頃のブログがきっかけで「スーパー大学生」って取り上げられて、妙なプライドができていた時期だったんです。「やりたい仕事をして、誰から見てもかっこいい自分で、常にキラキラ輝いていなくちゃ」と信じ込んでいたんですよね。それで、余計に苦しくなっていました。
村上:私は自分の理想と現実のギャップにもがいていた感じですね。当時から「説得力のある人になって、自分がいいと思ったものをカタチにしていくような仕事がしたい」という願望だけはあって……。でも、すっごく漠然としているし、何の具体性もない。そんなことを周りに話しても、「そんなの秋元康にしかできないよ」って言われて(笑)。
はあちゅう:20代半ばくらいの頃ってすごく不幸なわけではないんだけど、すごく幸せかと言われたらそうでもない。パーセンテージで言えば、80%くらいの幸せ度が常に続いている状態かな。私はそれに「このままでいいのかな」って悩んでいたんですが、一方で「これくらいで妥協するのが大人になるっていうことなんだよ」って世の中から言われているような気もして。会社の中で縮小していく中途半端な自分を、本心では受け止められずにいたんですよ。
新しい環境に思い切って飛び込んだら、納得感のあるイマが待っていた
――はあちゅうさんは、20代ならではの「モヤモヤ期」を脱出して、自分らしい働き方が見つかったと感じられるようになったのはいつ頃ですか?
はあちゅう:私は2年前、28歳で独立してフリーランスになってからです。新しいワークスタイルを始めてからようやく、「あ、私こういう生活がほしかったんだ」って分かりました。以前から「書く仕事」だけに集中したいとは思っていたんですが、何だかんだ言って会社員ならではの安定感にも魅力があった。安定したお給料に、福利厚生。どれもフリーランスにはないものばかりです。やりたいことを貫くか、安定を取るか……20代半ばを過ぎたころからは、その間でずっと揺れていました。
そこから一歩踏み出すきっかけになったのは、オンラインサロンを始めたこと。ここで初めて、会社の力じゃなくて、「自分でビジネスをつくってお金を生み出す」という体験をしたときに、こういうことを続けていけば生活していけるなって自信が持てたんです。最終的に独立を決断できたタイミングは、オンラインサロンや執筆料などの副収入が、会社員としての収入を上回ったとき。慎重派だから、こういう「確信」なしに独立は絶対できないタイプなんです。
――村上さんは、そもそも就業経験もない中でフリーランスとして働く決断をされています。相当勇気がいることだったと思うのですが、いかがでしたか?
村上:それが、20代前半のころって、その重大さを理解していなかったんですよ! 家族も含めて、自営業の人が身の回りに多かったので。ただ、今だから冷静に言えることですが、「ライフスタイルプロデューサー」という肩書きで活動していた20代半ばまでの時期は、無理はしていましたね。そもそも「ライフスタイルプロデューサーって何?」という答えが自分で見つけられていなかったり(笑)。この肩書き自体、人から付けてもらった肩書きだったので、いつかは“違う何か”にならなきゃという焦りがありました。いただいた仕事はどれも精一杯やっていましたけど、やっぱり自分の人生を生きているような感覚がなかったんですよね。
――そこから、ご自身の仕事に納得感が持てるようになったのはいつ頃だったのでしょうか?
村上:私の場合は、これまでやってきた事業を法人化して、人を雇うと決めた時期からですね。フリーの頃の私の仕事って「再現性」がなくて、誰かに引き継げることがすごく少なかったんです。ずっと「自分をブランドにしたい」ってことだけに必死だったので……。でも、応援してくれる人や、サポートしてくれるアシスタントの子の未来を考えたら、もっとちゃんとこの事業が続いていくカタチを考えなくちゃいけないなと思うようになったんです。それからは、「自分の言っていることや、アイデアをブランドにしよう」っていう思考に切り替えました。おかげで、チームで働く安心感も持てるようになったし、広い視野も得られるようになって将来に対する不安が減っていきました。やりたいことにもますます集中できるようになって、働き方にも納得感が持てるようになってきましたね。
もっと自由に生きていいし、欲張りになっていい。
“そこそこ思想”は20代で捨てていく
はあちゅう:萌ちゃんも私も、お互いこの数年で仕事や人生に対する価値観がすごく変わったと思う。それこそ私はずっと「そこそこでいることが幸せなんだ」って自分に言い聞かせなくちゃって思っていたけど、独立してやりたいことに集中できる環境に飛び込んだら、もうそんなリミッターどこかにいっちゃいました(笑)。だからと言ってフリーランスになることや起業家になることが正解というわけじゃなくて、一人一人がそれぞれのカタチで「100%の幸せ」を感じられる働き方を模索していくことが大切なんじゃないかと思っています。
何となく「そこそこ思想」が染み付いてしまっている女性は少なくないと思うけど、もっと自由に生きていいし、欲張りになっていい。仕事でもプライベートでも、全力で幸せを掴みにいっていいんだって思えたら、30代からの人生がますます楽しみになりましたね。
村上:はあちゃんはフリーになってから昔よりずっと笑うようになったよね! 会社員時代はすごく真面目な印象だったけど、今はちょっと“抜けている”ところとか、「人間的な隙」も周りに見せられるようになったんじゃないかな?
はあちゅう:そうかもしれないね。昔は周囲の視線を気にしたり、虚勢をはってしまったり、ガチガチでした(笑)。自分らしい働き方ができるようになってからは、生き方も自由になって、感情の変化が表に出るようになったのかもしれない。
村上:私は“身軽で自由”なイメージが強いフリーランスから、会社組織の一員になった立場だけれど、今の方が「私らしい」と感じています。それはなぜかというと、自分で決めた道を進んでいるからだと思う。会社の代表として背負うものは増えたけれど、「自分でこうする」って決めたことをやっていられるから、精神的には自由だし、納得感が持てます。フリーでいようと会社員でいようと、結局のところ大切なのは「周囲に流されず、自分で自分の生き方を決めること」なんですよね。
この数年の変化をそう軽やかに話すはあちゅうさんと村上さん。後編は、20代女子には欠かせない恋愛トークも交えながら、自分らしい働き方・生き方を見つけるヒントを探っていきます!
>>後編へ続く
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取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太