会社を円満に辞める方法とは? 転職志望の女子が行うべき退職準備3ステップ

転職したいと思いながらも、「辞めたらどう思われるかな」、「私が抜けたら仕事が回らないかも」と悩み、辞め時を逸してしまっている人は意外と多いもの。周囲に配慮するのは悪いことではないが、転職タイミングをずるずると逃し続けてしまうと、後になって後悔する可能性も……。そこで、12回の転職を経て現在は経済評論家として活躍している山崎元さんに、ベストな退職方法について伺った。

“後悔回避症”の人にありがち?
転職に踏み切れない人の特徴とは

「辞めたいのに辞められない。そういう人は、周囲に気を遣っているように見えて、実は、物事の優先順位を自分でつけられない人かもしれません。今いる職場の人からも良く思われたいし、キャリアアップもしたい。誰かが決めてくれれば動けるが、自分では決められない。八方美人、優柔不断なタイプの人にも多い傾向と言えるでしょう」

と、山崎さん。人には、「自分で決めて失敗したくない」と考える「後悔回避」という心理現象があり、転職へと踏み切るための判断力を鈍らせるのだという。

また、「周りに迷惑が掛かるかも」という気持ちも、自分で意識的に切り捨てなければ、いつまでも転職には踏み切れない。

「転職は自分の権利、その穴を埋めるのは会社の義務です。『自分が辞めたら職場の人に迷惑が掛かるかも』ということは、考えなくても大丈夫。人材の確保や配置の責任者は、マネージャーなどの上司にあるものです。自分にとって転職するのが一番だと思うのなら、今の職場への迷惑は考えすぎないこと。辞め方で誠意を示し、できるだけ感じ良く退職すればいいだけです」

「ベストな辞め時」は無い!
自分が転職したいと思う理由が最優先

「転職する」という決意が固まれば、いつ会社を辞めるのかを具体的に決める必要が出てくる。そこでまた、「自分と会社にとってベストな転職タイミングとはいつなのか」を考えてしまい、辞め時を失っている人も多いという。

「正直なところ、『ベストな辞め時』というのは無いものです。会社がどのような状況にあろうと、転職に良い時期も悪い時期もありません。自分の側の状況から考えてみても同様、大事なのはタイミングではなく、自分が転職したいと思う理由です」

そうは言っても、「転職時期の目処が立てられない」と悩む人もいるだろう。そんなときは、自分にとって何が重要なのかを明確にすることが効果的だそう。

「自分が今後の人生で実現したいことや、仕事で重視することなどを紙に書き出して、何が大事か順番を付けてみると良いでしょう。そうすれば、一刻も早く転職すべきなのか、まだ数年後でも良いのか、大まかな目処が分かるはずです」

ただ、「未経験分野への転職というケースだけは、先延ばしにしない方が良い」と山崎さん。

「転職を経て長期的なキャリアを形成していくことを考えると、未経験分野への転職時期は早いにこしたことはありません。特定の分野で能力を磨き、ビジネスパーソンとしての実績を積んでいくためにも、だらだらと転職を先延ばしにしてしまうのはNGです。28歳くらいを目処に転職しておくのが望ましいでしょう」

円満に会社を辞めるための退職準備3ステップ

転職をすることが確定したら、退職の仕方で誠意を見せておきたいところ。山崎さんによれば、円満に退職するためには以下の3つのステップが重要だそう。

【1】 転職先の入社を確実なものにする

「まずは新しい会社の採用を確実にしておくことが大前提。採用通知書を用意してもらい、健康診断などが条件付けられている場合は診断結果の確認をしておきましょう。今の職場で退職の意志を伝えるのは、すべての準備が整ってからです。転職活動の途中で上司や同僚に相談するのはお薦めできません。もしも転職先の都合で採用が取り消されてしまったりした場合に、今の職場で働きづらくなります」

【2】直属の上司から退職の意志を伝える

「退職の意志は直属の上司から伝えていきます。就業規則では30日前までの報告を義務付けていることが多いので、余裕をもって50~60日前を目安に報告すれば、余計なトラブルを避けられます。伝えるのは金曜日の午後がお薦めです。もしも『辞めないで欲しい』という上司からの説得が長引いても、『土日に考えます』と言えば話を切り上げることができますし、上司も気持ちの整理ができますから」

【3】自分から引き継ぎの方法を提案する

「退職日を決めるのと同時に、引き継ぎの方法やタイミングについても積極的に提案していくことをお薦めします。引き継ぎプラン作成やスケジュールなどを自分から行っておくことで、誠意が伝わりますし、過大な引き継ぎ作業を避ける上でも役立ちます。効率良く引き継ぎを済ませて、気持ちよく送り出してもらいましょう」

転職が自分にとってベストな選択だと思ったら、誠意を持って退職の準備を進めるだけ。こうして考えると、転職の段取りは驚くほどシンプルだ。どんな仕事を選ぶか、どこで働くかを決めるのは自分自身。余計なことを考えすぎて身動きがとれなくなる前に、チャンスに向かって一歩を踏み出してほしい。

経済評論家 山崎元さん

経済評論家 山崎元さん

1958年北海道生まれ。1981年東京大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。その後、野村投信委託、住友生命保険、住友信託銀行、シュローダー投信、NBインベストメントテクノロジー、メリルリンチ日本証券、パリバ証券、山一證券、第一勧業朝日投信投資顧問、明治生命保険、UFJ総合研究所に勤務。楽天証券経済研究所客員研究員、獨協大学経済学部特任教授、国家公務員共済組合連合会資産運用委員会委員。1994年東洋経済高橋亀吉記念賞優秀賞受賞。2005年1月に株式会社マイベンチマークを設立し代表取締役に就任

取材・文/吉戸三貴