【家政婦・タサン志麻】プロフェッショナルが教える家事時短術3つのポイント
働く女性にとって、仕事と家庭の両立は悩ましい問題だ。欧米ではハウスキーパーやベビーシッターを活用する文化が根付いているが、日本には家事をアウトソースするという価値観はまだまだ浸透しきっていない。努力家で真面目な女性ほど、仕事も家事も子育ても「完璧にやらなくては」と一人で抱え込んで苦しんでしまいがち。
そんな現状に、家事代行マッチングサービス『タスカジ』ハウスキーパーのタサン志麻さんは、「親が楽しそうにしている家庭で育った子の方が、きっと幸せ。自分の心にゆとりを持つためにも、もっと人の力を借りて」と呼び掛ける。
“伝説の家政婦”の異名を持つ志麻さんは、日本とパリの調理師学校で学んだ後、人気フレンチレストランでシェフとしての修行を積んだ。フランス人男性と結婚後、妊娠を機に料理人の道を離れ、家事代行マッチングサービス『タスカジ』のハウスキーパーとして活躍するようになったのだという。
限られた食材と調理器具で何が作れるか、毎回“ワクワク”して考える
「シェフの仕事は長時間労働で家庭との両立が難しかった。それでキャリアチェンジを考えたのですが、飲食店勤務以外で料理のスキルを活かせる仕事がないか探して見つけたのが今の仕事です」
フレンチの技を取り入れた家庭料理の腕はたちまち評判に。「予約の取れない家政婦」として、メディアにも多数取り上げられるようになった。
「依頼をくださるお客さまは、一般の共働き家庭の方が多いですね。ご自宅にお邪魔して冷蔵庫にある食材を使い、1週間分のおかずの作り置きを用意したりするケースが多いです。お願いされれば食材の買い出しからすることも。それから何を作るかは、ご家庭ごとの好みに合わせて決めます」
定期で通っている家庭も多く、1年以上付き合いを続けている家庭もある。また、レストランとは全く異なる一般家庭のキッチンに立つようになってから、「仕事の充実感が増した」と志麻さん。
「レストランで働いていた頃はとにかく『レベルの高い料理を作ること』が目標で視野も狭くなっていましたが、今、一番大事にしているのは『目の前の人が喜んでくれる料理を作ること』。私には、後者の方がずっと向いているって今は思います。限られた調理器具や食材で何が作れるか、日々違うシチュエーションの中で料理を作る事で毎回新しい工夫や発見がありワクワクします」
志麻さんに仕事を依頼する家庭では、「仕事と家事の両立で精一杯で、子どもとゆっくり過ごす時間が持てない」と語るお母さんたちが非常に多いという。
「家に帰ったら『夕飯作らなきゃ』って思うだけで、憂鬱な気分になってしまう方もいますよね。でも、帰った時にもう夕飯ができていれば、自然と笑顔になれるし子どもとゆっくり向き合う時間も取れる。実際に、『志麻さんに来てもらってから、子どもに優しく接することができるようになった』と言ってくれる親御さんもいて、それがとても嬉しかった」
もともと志麻さんがフレンチの道に進んだのは、フランス人の「家族と楽しむ食事の時間」を大切にする文化に共感したからだった。シェフ時代も、今も、食を通じて家族や友人同士が共に過ごす時間を作り出すことを一貫して仕事にしてきたのだという。
「ゆとり」確保のための家事時短術ポイント3つ
一回の訪問で志麻さんが作る料理は、依頼主によって内容も品数も変化するが、多ければ16~17品を作り置きする。また、基本的には、食材も調理器具も、各家庭にあるものを使うため、あらかじめ何を作るかのプランは立てない。その場にあるものを最大限に活用し、限られた時間の中でいくつもの料理を作る志麻さんは、「時短家事の達人」でもある。
そんな志麻さんが家事時間短縮のためにアドバイスするのは次の3つのポイント。
(1) 洗い物はシンクに溜めておかない
「使った調理器具は料理の最中でもどんどん洗っていきます。野菜を洗ったザルは手を洗うついでに洗う、油ものは何かを茹でたお湯でさっと流す。あとでまとめてやろうと思って溜めておくと、油汚れが全体に広がってしまったりして、結局洗いものの時間が余計に必要になったりするんです。汚れが落ちやすいものは、使ったらすぐ洗って片付けるのが鉄則! それだけでも片付け時間の短縮になります」
(2)「トマト缶」を常備する
「トマト缶をいくつか常備しておくと、ぱぱっと料理に使えるので本当に楽です! 常温でも保存がききますし、スープや煮込み、パスタ、ハヤシライスなど、洋食系の料理には何でも使えますね。メニューに悩む時間も、短縮できるはず」
(3)機能・操作がシンプルな家電を揃える
「食洗機にロボット掃除機……時短に役立ちそうな便利な家電は、何でも使ってみたらいいと思います。でも、家電を揃えるときに気をつけたいのは、機能と操作がシンプルかどうかですね。ハイテクな家電ってたくさんありますけど、よく分からない高機能なものを買って結局使わない、なんてことありませんか? それを考えると、シンプルで使い方が単純なものを揃える方が役立つと思います」
家事も仕事も、一人で抱え込むよりチームで分担する方がよっぽど生産的
かつては、“手抜き”が苦手だったという志麻さん。「料理人時代は何でも自分でやろうとして、雑務まですべて抱えてしまっていた」と語る。しかし、ハウスキーパーの仕事に就き、自身も子育てを始めた今、よりいっそう効率的かつ生産的な働き方を意識するようになった。
「誰かに頼っちゃいけないなんてことはないのに、全部一人でやらなきゃって思い込んでしまうのはよくあること。でもそうやってギリギリの状態で孤軍奮闘するより、誰かに仕事を任せた方がチーム全体の利益になることもある。たくさんの人で分担した方が、結果的にうまくいくんですよね。これは仕事だけでなく、子育てにも家事にも全く同じことが言えると思います」
共働きが一般化した時代。かつてのように“母が家事をやるべし”という幻想に縛られる必要はないし、「自分が何でもやるしかない」と諦める必要もない。うまく手を抜く術を覚えること、時にはお金を投じてでも人に頼ってみること。少しの工夫から生まれる“ゆとり時間の確保”で、自分と家族が笑顔でいられる生活をつくりたい。
取材・文/上野真理子
『志麻さんのプレミアムな作りおき』(志麻 著/ダイヤモンド社)
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