プロが教える“困りもの高齢者”への対処法! わがまま&キレる老人との関わり方
高齢化がますます進んでいる日本。日常生活や、仕事の中で、高齢者と上手に付き合っていくことが求められている。しかし、理解不能な行動にひやっとさせられたり、周囲の迷惑を気にしない振る舞いにイライラさせられたり、働く女性たちの中には老人との付き合い方に悩む人も多い。
そこで、『老人の取扱説明書』著者の平松類先生に、読者から寄せられた悩みに回答していただいた。
相談4:「優しくして」老人

銀行の窓口で働いているのですが、「おばあちゃんなんだから優しくしてよ!」「優先してよ」と言って、本来自分でやるべき書類の記入だったり、手続き関係のことを全部丸投げしようとしたり、列に割り込んだりしてくる人がいるんです。
「おばあちゃんなんだから」って自分で言ってる時点でわがまま過ぎますし、ご年配の方でもちゃんと自分で何でもできる方はたくさんいらっしゃいます。
その人のわがままに振り回される職員が多くて、人の時間を奪っている意識がないのかなと思ってイライラしてしまいます。
手伝ってあげても感謝の言葉を言われることもありません……それがまたストレスなんです

Answer:“見えない文字”にイライラしてしまう高齢者用に、大きな文字の書類を用意する
前編に引き続き、これから私がお答えすることは、医学的な内容および、多くの高齢の方への接してきて感じてきたことの一つの解答です。さまざまなケースがあるので、一アドバイスとして受け止めていただけたらと思います。
このご相談内容を見ていると、ただのわがままという事もありますが、書類の場合は「見えない」という事がよくあります。高齢者の場合は、12ポイント以上の文字でないとかなり見にくくて、イライラして人に任せたくなる人が多いです。
以前、手術説明文書の文字が小さいときは、病院側に任せていた人が多かったですが、文字を大きくしたら自分で書いてくれる人が増えました。
このように若い人には楽でも高齢者にはつらくなってしまっているものもあります。他の高齢者の方は「我慢して」対応してくれているのかもしれませんよ。

待ち時間に関しては、わがままだけではなくて体が弱い人もいます。
例えば、肺が弱くて長時間待っていられないなどです。以前、「早く見てほしい」とわがままを言っているのかなと、職員が判断した患者さんがいました。
しかし、飲んでいる薬を確認してみると肺の病気があり、つらくて早くしてほしかったようです。けれども、見た目には「単なる元気なおばあちゃん」で、はきはきしているので職員は誰も気がつかなかったのです。
見た目だけでは判断できない、体の問題を抱えていることもあると心得ておきましょう。
次に、相手にしてもらう作業は、本当に高齢者にやりやすい状況かということを確認してみてください。
資料の「文字の大きさ」はもちろん、「タッチパネルは指が乾燥していても押せるか?」「記入台の高さは楽な高さか?」などです。

もちろん組織的に取り組まなければいけない場合はすぐに対応することが難しいですが、台の高さに問題がある場合は低い場所で対応してあげることもできますし、文字の大きさであれば老眼鏡だけではなくて拡大鏡を準備する、難聴の人のための簡易補聴器を利用することもできます。
優先を希望する方に関しては、会社としての取り決めが必要になります。「●歳以上は優遇」とか「●●の疾患の方はお申し付けください」というようにして明確にラインを決めてあげると対応が簡便になりますね。
例えば70歳の人が「優遇して」、と言ってきたとき「おいくつですか?」と聞き、「70歳です」と答えられたとします。そうしたら、「申し訳ございません80歳以上の方は早急に対応させていただいているのですが」というようにできます。
仮に、さらにわがままを言われたとしても「80歳以上優先という決まりなのに70歳で優先してもらおうとしている」という事が明確になります。
一方で、いきなり「わがまま」と決めつけるのは絶対にNGです。「実は目が悪い」「実は耳が悪い」ので不具合な事もあります。
また、「実は病気」で我慢していて体調を崩す人がいますし、「私は病気なのにそれを放っておいた」と激怒されることがあります。なので「何かご病気をお持ちですか?」など確認しておくと安心です。
優先できない場合も「本当は優先してあげたいのだけれども、他の人のためにできない」という事を本心から伝えることが大切です。いかにも面倒臭いから「優先したいのだけれども、できない」と言うと、その気持ちが伝わってしまいます。
相談5:怒れる老人

メーカーでカスタマーサポートの仕事をしています。
よく相談の電話をかけてくるご年配の方がいるのですが、何かに激しく怒っているけれど、話はよく聞き取れないし、よくよく話を聞いても内容が支離滅裂。
うちの商品の問い合わせではなく、世の中に対する不平不満をただただ話し続けることも。話を聞いてあげても『お前聞いてないだろ!上司出せ』と急に私に敵意を向けることがあります。
電話を取ってしまったからには切ることもできませんし、もう単純に怖いし、ストレスです…!

Answer:何よりもまず相手を尊重し、「感謝の意」を伝えてみてください
高齢になると「誰かに必要にされている」という事が少なくなります。仕事を退職して頼りにされなくなったり、子どもも自立してだれも頼らなくなります。
また食事の世話などまでほかの人がやるといよいよ「誰かに必要とされている」感覚が少なくなってくるものです。「必要とされている」実感を得たくてネガティブになる人もいれば、攻撃的に対応する人もいます。
よくあることとしては、「元職場」に単なる顧客のふりをして電話をしてしまう高齢者もいます。
また、声帯が年齢により衰えてくるので発音が悪くなったり、声が出にくくなってしまうという事があるので不機嫌そうに聞こえることがあるのです。
電話を受けたら、何よりもまず「感謝の意」を伝えてみてください。一意見を聞けた、という感謝でOKです。

一方で、本当に大切な意見や相談の事もあり得ますので、「お電話口では聞き取りにくくて申し訳ございません」と話した上、書面で連絡いただいて、上司や会社で共有させていただくという方式も有効な方法です。
ただそれが「本心から」言っているというようにお話ししないと見透かされてしまいます。
早く終わらせようとすればするほど「大切にされていない」と思わせてしまうもの。怒りが出たり、さらに長く話をして自分が「いかに重要か」をアピールしたくなってしまいます。
相手を敬い尊重しながらも、短い時間で対応できる方法をとった方がいいですね。
【書籍紹介】
『老人の取扱説明書』 (SB新書/平松類)
9刷、6万部突破のベストセラー!
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