赤坂で前代未聞の“舞台メイキング”ミュージカルを目撃する夜/『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』【連載:ふらり~女の夕べ】
プレミアムフライデーに、NO残業デー。働き方改革が進み、プライベートタイムは増えたけど、一体その時間に何をする……? 会社を追われ、行き場をなくし街を彷徨うふらり~女たちへ、演劇コンシェルジュ横川良明がいま旬の演目をご紹介します。奥深き、演劇の世界に一歩足を踏み入れてみませんか?

演劇ライター・演劇コンシェルジュ 横川良明
1983年生まれ。関西大学社会学部卒業。ダメ営業マンを経て、2011年、フリーライターに転身。取材対象は上場企業の会長からごく普通の会社員、小劇場の俳優にYouTuberまで多種多彩。年間観劇数はおよそ120本。『ゲキオシ!』編集長
皆さんはミュージカルってご覧になったことはありますか? 歌とダンスとお芝居がつまった、これぞ究極のエンターテイメント。爽快なストーリーと音楽の力に、客席にいながら元気と勇気をもらえるのが、ミュージカルの魅力です。
そんなミュージカルの素晴らしさを凝縮したのが、今回ご紹介する『HEADS UP!』。ミュージカルと言えば、『レ・ミゼラブル』のような海外作品をイメージされる方も多いかもしれませんが、この『HEADS UP!』は2015 年11 月に初演された日本生まれのオリジナルミュージカル。その分、きっとミュージカルをご覧になったことがない方には身近で親しみやすく、ミュージカルが大好きな方にも新鮮に映るはず。ぜひこの機会に、まだ知らない新たな扉を開けてください!
ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』

【Point1】
主役はスタッフ! 波乱の舞台裏を描いたバックステージミュージカル
この『HEADS UP!』は、とあるミュージカル公演の裏側を描いたバックステージエンターテイメント。しかも、スポットが当たるのは、舞台裏を行き交うスタッフたち。何もない舞台に大道具のセットが組まれ、照明、音響、衣裳、制作、小道具、演出部と、各セクションのスタッフが本番に向けて準備していく姿を、その目で目撃する前代未聞の“舞台メイキング”ミュージカルです。
物語の中心となるのは、ベテランと新人、2人の舞台監督。舞台監督とは、公演に向けた仕込み(セッティング)、本番、バラシ(撤収)が終わるまでの全行程を管理・調整する総指揮官のこと。公演の安全と成功を左右する、なくてはならない重要なポストです。次から次へと襲いかかるトラブルの数々に、舞台監督らスタッフはどう立ち向かうのか。その奮闘を、コミカルに、エネルギッシュに描きます。

ミュージカルの裏側と聞くと遠い世界のように思えますが、世にある職種のほとんどが、あまり光が当たらない裏方仕事。世の中は、そんな名もない人たちの努力や工夫で成り立っています。そういう意味でも、お仕事女子の目から見れば意外と「こういう無茶ブリある!」「こういう困った人いる!」と共感できるシーンも。日頃のストレスをスカッと晴らせるお仕事エンターテイメントとも言えそうです。
【Point2】
構想10年以上! あのラサール石井さんがミュージカル愛のすべてをこめた渾身の快作
初演時から絶賛の声を集める本作は、第23回読売演劇大賞 演出家部門 優秀賞を受賞するなど、そのクオリティーは演劇界のお墨付き。普段劇場に足を運ぶ習慣がない方も安心して楽しめる“ハズさない”1本と言えそうです。

その品質を裏づけるのが、実力派スタッフ陣。原案・作詞・演出を手がけるのは、みなさんもよくご存じのラサール石井さん。テレビのラサールさんしか知らない方にとっては「ラサールさんがミュージカル?」と意外に思われるかもしれませんが、実はラサールさんは早稲田大学ミュージカル研究会のご出身。ミュージカルをこよなく愛するラサールさんが10年以上もの間ずっと構想を温め続けてきたのが、この『HEADS UP!』なのです。
脚本を務めるのは、ラサール石井さんがその才能に惚れ込んだ劇作家の倉持裕さん。「演劇界の芥川賞」と名高い岸田國士戯曲賞を受賞するなど、演劇界ではその実力は広く知られていますが、近年は内村光良さんの出演する『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』の脚本も手がけるなど、ますます精力的に活動中。そんなスゴ腕スタッフたちが描く、スタッフたちの物語。面白くならないはずがありません!
【Point3】
主演は哀川翔さん! ミュージカルならではの歌×ダンス×お芝居に酔いしれて
キャスト陣も思わずワクワクするような顔ぶれが揃っています。何と言っても注目は、主演の哀川翔さん。哀川さんとミュージカルというのも異色の組み合わせですが、それもそのはず。2015年の初演が、哀川さんにとってはミュージカル初挑戦。頼れる兄貴の普段はなかなか見ることのできない歌とダンスは見逃し禁止です。
また、女子的に気になる若手俳優は、新人舞台監督を演じる相葉裕樹さん。第16回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで審査員特別賞を受賞し、芸能界入り。09年よりオンエアされた『侍戦隊シンケンジャー』でシンケンブルー役を演じ、ファン層を拡大。近年は『グレイト・ギャツビー』『スカーレット・ピンパーネル』『レ・ミゼラブル』と大作ミュージカルに立て続けに出演し、次世代ミュージカルスターの筆頭株として期待を集める存在です。ぜひ彼の歌声にもじっくり耳を傾けてみて。

その他、劇団☆新感線の看板俳優・橋本じゅんさん、バラエティでもおなじみの青木さやかさん、映画『曇天に笑う』にも出演の池田純矢さん、さらに、元宝塚トップスターの大空ゆうひさん、第 24 回読売演劇大賞 最優秀男優賞を受賞した中川晃教さんら実力派キャストが勢揃い。その迫力の歌声を聴くだけで、きっと特別なひとときを過ごした満足感でいっぱいになるはず。
私って何のために働いているんだろう。そんな悩みにぶつかっている人こそ、舞台の成功のために、見えないところで汗を流し、走り回るスタッフたちの懸命な姿を通じて、仕事へのエネルギーをもらってください。
<公演詳細>
■あらすじ
ミュージカルファンなら誰もが知る”あの名作”が1000回目の公演を終え、華々しく終了する、はずだった。しかし、主演俳優の鶴のひと声で、某地方都市の古い劇場で1001回目を上演することになり、現場はてんやわんや。舞台美術は廃棄済み、スタッフも人手不足、キャストのスケジュールも押さえていない。さらに、舞台の総指揮を執るのはこの作品が初めてという新人舞台監督だった。とんでもない条件下でスタッフたちは必死に幕を開けようと奮闘する。果たして幕は無事に開けられるのか……。
■脚本
倉持裕
■原案・作詞・演出
ラサール石井
■作曲・音楽監督
玉麻尚一
■振付
川崎悦子
■出演
哀川翔、相葉裕樹、橋本じゅん、青木さやか、池田純矢、大空ゆうひ、中川晃教 ほか
■日程
2018年3月2日(金)〜3月12日(月)
■会場
TBS赤坂ACTシアター ※東京メトロ千代田線「赤坂駅」3b出口より徒歩1分
公式サイト
http://www.m-headsup.com/
公式ツイッター
@KAATHEADSUP
『ふらり~女の夕べ』の過去記事一覧はこちら
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