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APR/2018

「自分に呪いをかけないで」離婚後、実家から離れた地で子育てするシングルマザーの“大変じゃない”両立生活

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3組に1組のカップルが離婚すると言われている現代。実際に離婚する人がそれだけいるのだから、離婚を検討している人はもっと多いかもしれない。今現在子育て中の人はもちろん、これから子供を持ちたいと思っている女性にとっても、シングルマザーになる可能性は大いにある。

「大変そう」という、漠然としたイメージばかりが先行しているシングルマザー。しかし、当事者である朝日新聞社の中釜由起子さんは、「そうは感じない」と穏やかに話す。二児の子育てに、新聞社での多忙な仕事。さらに実家は鹿児島で、親を気軽に頼れる環境でもない。

そんな彼女の両立生活には、どんな状況であっても女性がたくましく生きていくためのヒントがつまっている。

朝日新聞 シングルマザー
朝日新聞東京本社 総合プロデュース室 
メディア・ディレクター telling,編集長
中釜由起子さん

2005年、新卒で朝日新聞社に入社。『週刊朝日』の記者兼編集者として5年半従事したのち、デジタル系の部署の企画営業を経て、新規事業の部署へ。26歳で結婚し、第一子を出産。29歳で第二子を出産し、32歳で離婚、シングルマザーに。現在は10歳と7歳の息子を育てながら、ウェブサイト『telling,』の編集長を務める

自分は大丈夫。でも、この不安定な時期を子どもが乗り越えられるのか……

『週刊朝日』で記者兼編集者として働いていた、入社2年目の26歳で結婚。その半年後に男の子を出産しました。予想外の妊娠だったし、社内を見回しても同世代で子供がいる人は全くいなくて、社内でも異例のことだったんです。でも、私はバリバリ仕事がしたかったから、仕事を辞める選択肢は全く考えませんでした。連載ものの企画や表紙など、週刊誌の中でもスケジュールが立てやすい部分の担当に変えてもらい、仕事を続けてきました。

29歳で2人目を産んでしばらくしたころ、諸事情あって夫との関係が悪くなってしまい、離婚を考え始めました。「子どもがいるんだし、頑張って結婚生活を続けた方がいいんじゃないか」、そんな葛藤はあったけれど、私は経済的に自立しているから、別れても大丈夫という結論に至りました。

結局、32歳で離婚。子供たちを連れ、スーツケースを1個だけ持って、ある日突然、夫と暮らした家を出ました。「大丈夫。何とかなる」そう思っていたけれど、ここで意外な壁が立ちはだかります。シングルマザーって、たとえ仕事があっても家を貸してもらうのが大変なんですよ。だから最初は、ウィークリーマンションを1~2週間ごとに転々としました。「今日はどこのお家に帰るの?」って保育園から帰ってきた子供に聞かれたこともあった(笑)。結局、定住できる家が見つかったのは、家を出てから2カ月後のことでした。

朝日新聞 シングルマザー

週刊誌の編集の仕事は不規則なので、仕事と子育てを両立するために使えるアウトソーシングは何でも使いました。離婚前も育児は私が中心でやっていたから、その点はどうにかなると思っていたけど、家を出たちょうどその頃に新規事業の部署に異動が決まり、職場でも新しい環境へ。新規事業の仕事はハードだと聞いていたし、仕事も生活もがらっと変わり、このままで大丈夫なのか……。その点は不安でした。

実は、会社の人には家を出たことを黙っていました。甘えたくなる気持ちもあったけど、今回の部署異動はかねてからの希望でもあったので、どうにか頑張りたい気持ちの方が強かった。もともと記者になりたいと思ったのは、話題の場所に行きたいとか、旬な人に会いたいとか、そういうミーハー心。仕事が趣味と実益を兼ねていたから、息抜きにもなっていたんです。それにこの仕事は忙しくても裁量はあるから働き方も自分次第でデザインできる。融通が利くことは、子育てとの両立面で大きかったですね。

だから、私のことよりも、子供が不安定にならないようにすることが大変でした。当時上の子は5歳で、下の子はまだ2歳。どうしても一時的には不安定な環境で過ごすことになるから、しばらくの間は定期的に鹿児島から母に来てもらっていました。半年くらいでシングルマザー生活にも慣れてきて、一年経ったころには完璧に生活は落ち着きましたね。

両立生活を支える、“仮想おばあちゃん”と“仮想おじいちゃん”の存在

シングルマザーになって5年が経ちますが、シングルだから大変っていうことはあまり感じないです。私の個人の価値観ですが、「自分を理解してくれない人」がいつも近くにいることの方が、一人でいることよりよっぽどストレスだったんです。最近よく言われる、「夫が家事をやってくれない!」みたいな怒りとも無縁。家は私の城で、私はその城の女王さま。好き勝手できる自由があります。

シングル家庭においては、子供も立派な戦力です。お皿を洗う、お風呂掃除をする、ゴミを捨てるといった、家族で分担すべき家事を、私は子供と分担しています。「これをやらないとうちは回らないんだよ」って説明して、やらないときは「ほら、こんなに家が汚くなったでしょ?」って。子どもたちも「そうだね」って分かってくれます。

でも、何でも家の中で完結させてしまおうとは思っていません。誰かの力を借りないと回らないことは絶対にあります。うちは実家が鹿児島なので、しょっちゅう手を借りるわけにはいきません。だから、“仮想おばあちゃん”“仮想おじいちゃん”をたくさんつくるようにしていて。例えば、ベビーシッターさんは60代の方ですが、毎週同じ方に来ていただいているので、子供からするとおばあちゃんみたいな感覚なんですよね。私の育児の足りない部分にもアドバイスをくださるので、いろいろな視点を取り入れることができます。

朝日新聞 シングルマザー

習い事は地域のコミュニティーみたいな所に入れています。そうすると、今度は“仮想おじいちゃん”がたくさんできます。地域の方とつながると、「何かあった時に、僕たちが見ているからね」って言ってくれて、私も安心できる。しかも、子供たちも私以外の大人に注意された方が、素直に言うことを聞くことも多いんですよ。

最近では家庭教師さんにも来てもらっていて、私が夜遅いときは英会話を教えてもらいつつ、家で面倒も見てもらっています。ママ友や近所の方に協力してもらうことも多いし。うちにはいろいろな大人が出入りするから、子どもたちも人見知り知らず。本当のママだけじゃなくて、おばあちゃんみたいな人、おじいちゃんみたいな人、おねえちゃん、おにいちゃんみたいな人、頼れる大人が側にいっぱいいるんです。

助けは絶対不可欠だと言いましたが、一方では自分の力でちゃんとやりたい気持ちもあります。そういう覚悟を持った上で、どうしてもできないときに「お願いします」って言う方が、周囲の人に助けてもらえるとこの生活の中で学びました。その代わり、誰かが困っていれば、私ももちろんできることの範囲で存分に手を貸します。例えばパソコン周りが得意じゃない人の雑務を引き受けるとか。ギブ&テイクですね。

離婚をして無くしたことはある。でも、得たものだってたくさんある

最初のころは、自分がシングルマザーであることを何となく隠していました。変に気を使われたりするのが嫌だったんです。でも、妹に相談したら「別に気にならないから、どうしても大変なときはお力添えくださいって言えばいいんじゃない?」って言われて。「確かにそうだな」と。それからは必要以上に気にしなくなりました。「ご主人は?」って聞かれたら、「夫はいません」って明るく言う。そうすると相手にも、「そうなんだ」って普通に受け止めてもらえる気がします。

シングルマザーになると、つい自分に“呪い”をかけてしまいがちです。貧困とか孤独とか、メディアを見ているとネガティブワードがついてまわるから。それに周りの人にも「え、大変でしょう?」と言われるし、自分でもそう思い込んでしまう。でも「私ってかわいそうなんだ」って自分が思うようになったら、それこそ良いことは起きません。夫がいない、余裕がない、助けてもらえない……持っているものより、持っていないものばかりに目が向いてしまって、引け目を感じてしまう。

もちろん、シングルマザーで厳しい状況に置かれている人は確かにいると思います。でも、決して私は特別な存在じゃない。それでもこの生活が大変じゃないと言い切れるのは、「足し算」を意識しているからかもしれません。「自分の好きなように生活ができるようになった」とか「お小遣い100円で子どもにお風呂掃除を毎日してもらってラッキー」とか。離婚して無くしたものより、得たものに目を向けています。

誰かが言った「こうすべき」に従うのは思考停止。やりたいようにやればいい

朝日新聞 シングルマザー
大変なことはないと先ほど申し上げましたが、シングルマザーになって痛感したのは、同じ境遇にある方々の事例があまりにも目に入らないということ。絵に描いたような素敵な家族の話は世の中に溢れているけれど、型から外れた親子のことや、家族の話ってなかなか届かないんですよね。

今は『telling,』という新しい女性向けのメディアを作る仕事を任されているのですが、そこでは仕事や結婚、出産に悩んでいる人にお話を聞く機会が増えました。まさにプライベートと仕事が重なるとてもありがたい仕事です。

いろいろな方にお話を聞いて思うのは、「やりたいようにやればいい」っていうこと。「親に言われた」とか「仕事で迷惑がかかる」とか、それでやりたいことを我慢するのはもったいないですよ。それに、「あの人がこう言ったからこうすればいい」というのは、思考停止だと思うんです。自分のことは自分で決めなければ、何をやっても人のせいにしたり、後悔したりすることに繋がる。だからこそ、いろいろな人の生き方を見て、自分でいいと思うものを探ってほしいなと思います。

その上で、自分で責任を取ること。こういう話をすると、「私はそんなに強くない」って言われちゃうんですけどね。人のためじゃなく、自分のために生きようって思えるようになったら、だいぶ見える景色って違うと思いますよ。

他の人から見ると、私は波乱万丈な人生を送っているのかも。でも、自分の人生には割と満足しています。子供を産んでよかったし、子供との生活は楽しい。もっと子育てに協力してくれる人がいるのであれば、あと5人ぐらい産んでもいいって思うくらい子どもが大好き。今のところひとり親であることを気にしている様子はないし、ひとり親だからマイナスだと私が思うこともありません。

いろいろな人が集まる中釜家は、とっても楽しいですよ。仕事が終わらないときはうちでご飯を食べようって仕事の人を誘うこともありますし、週の半分は誰かしら家族以外の人が来る。

何があっても生きていけるように仕事はしっかり続けること、そして、周囲の人と助け合える関係性を築くこと。これができていれば、シングルマザーでも案外大丈夫。こういう人も中にはいるんだよって伝わったらいいですね。

取材・文/天野夏海 撮影/栗原千明

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