希望の部署に配属されなかった若手社員が「やりたい仕事」に就くために今すべきこと

ライフネット生命・岩瀬大輔の「若手女子のお悩み相談室」
『入社1年目の教科書』の著者がアドバイス
ライフネット生命・岩瀬大輔の「若手女子のお悩み相談室」

入社前に思い抱いていたイメージとのギャップに戸惑ったり、「この働き方でいいのだろうか?」と漠然とした不安を感じたり……。自分の進むべきキャリアが明確になっていないからこそ、若手女子はさまざまな悩みを抱えているもの。そんなお悩みに『入社1年目の教科書』の著者である、ライフネット生命・岩瀬さんがアドバイス!

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役社長兼COO 岩瀬大輔さん
1976年埼玉県生まれ、幼少期を英国で過ごす。1998年、東京大学法学部を卒業後、ボストン・コンサルティング・グループ、リップルウッド・ジャパン(現RHJインターナショナル)を経て、ハーバード大学経営大学院に留学。同校を日本人では4人目となる上位5%の成績で修了。2008年、副社長としてライフネット生命保険を立ち上げる。2013年6月より現職。『ネットで生保を売ろう!』(文藝春秋)、『入社1年目の教科書』(ダイヤモンド社)、『直感を信じる力 人生のレールは自分で描こう』(新潮社)など著書多数
「入社前に希望していた部署に配属されませんでした。やりたい仕事に就くためにはどうしたらよいのでしょうか?」(24歳/入社1年目)

「入社前に希望していた部署に配属されませんでした。やりたい仕事に就くためにはどうしたらよいのでしょうか?」(24歳/入社1年目)

やりたくない仕事への向き合い方が
今後を大きく分ける

まず、「やりたい仕事」に就けなかったあなたが、今、どのような姿勢で仕事に取り組んでいるのかが気になります。

成果を出している経営者には共通する過去のエピソードがあります。皆さん、最初は自分が行きたい部門以外に配属されて、一見地味な仕事を経験されているということです。楽天の三木谷浩史さんも、日本興業銀行(現・みずほファイナンシャルグループ)に入行した当初、外国為替部に配属され、事務方の仕事をされていました。コピー取りなどの雑用も多かったので、「ならば日本一のコピー取りになってやる」と思ったそうです。

僕自身も同じような経験がありました。コンサルティングファーム時代、僕がアサインされたのは産業用手袋メーカーの流通プロジェクト。同期の仲間が、有名な食品メーカーの新商品開発や、通信キャリアの次世代インターネット戦略立案など、一見華やかなプロジェクトに加わるのを見て、「いいなあ。楽しそうだなあ」とうらやましく思ったものです。

ところが、いざ仕事が始まってみると、手袋の世界の奥深さにすっかり魅せられてしまいました。高熱にも耐え、化学物質をかけても溶けないなど、自分が知らなかったいろいろな手袋があるのを知り、カタログを眺めてはサンプルを集め、手袋をつけながらExcelのデータを作っていました。同じ仕事に就いても、文句を言う人と、明るく前向きな人とがいる。その違いが、今後の社会人人生を大きく分けるのです。

今は信頼を固め、足腰を強化する時期
目の前の仕事を最後までやり切る!

最初から「やりたい仕事」に就ける人など、むしろ少数です。

考えてもみてください。あなたが大学4年生で、自分がリーダーを務めるテニスサークルに1年生が入ってきたとします。練習もしないうちに、いきなり1年生が「試合に出たい」と言い出したら、「ちょっと待って!」と思うのではないでしょうか。まずは全員、コートの整備や球拾いなどから始めて、地道に練習を重ねる中で実力を証明し、ポジションをつかんでいくのが一般的な筋道でしょう。

僕たちマネジメントの立場から見ると、最も重用しやすい人とは、与えられた仕事を全力でやり切って成果を出せる人です。この人は管理系の仕事には向いていない、営業として対外的な仕事を任せるのは不安があるなどと思えば、与えられるチャンスも限られてしまいます。

他にやりたい仕事がある人は、なおさら今の仕事が大切です。やりたい仕事に就いたときには、誰だって頑張るはず。むしろ、やりたくない仕事に就いたときに、どう取り組むかが見られています。目の前の仕事に必死に挑んで、最後までやり切れるのか。「One for all, All for one」という三銃士の台詞がありましたが、自分自身の損得ではなく、チームのために貢献できるか。そうした評価を積み重ねていくことで、「この人なら大丈夫」という信頼を得て、チャンスを広げていくことができるはず。大切なのは、目先の異動ではなく、将来につながる長期的な信頼を固めていくこと。今は足腰を強化する時期なのです。

誰にとっても隣の芝生は青いもの
経験を積むほど「やりたい仕事」は見えてくる

もう一つ、自分のやりたい仕事も、確かなものではないかもしれません。ハーバード大学のMBAプログラムに留学したとき、世界中の若手ビジネスエリートが集まっていましたが、それなりの活躍をして、評価を得ている人たちでさえ、今とは違う「理想の仕事」を追い求めている。隣の芝生が青く見えるのは、みんな一緒だと感じました。

当社でも、ちょうど株式公開の準備をしているころ、新人の女性を企画部配属にしました。重要な打ち合わせに同席させていたのですが、彼女に「自分には何も身に付いていない」と言われ、驚いたことがあります。他の生命保険会社に入社した同期は、こんな試験を受けて商品知識を増やしているのに、私は岩瀬さんについて行っているだけで、成長している実感が持てないのだ、と。

株式公開の打ち合わせ現場に立ち会うなど、仕事人生の中でも二度とないかもしれない経験です。今となれば、本人にとっても笑い話でしょう。でも、新人時代は今の仕事以外を経験したことがないので、自分だけが遅れを取っているような気がしてしまう。

憧れている華やかに見える仕事も、実際にやってみると、意外と地味だったり、ハードだったりするものです。今の自分の狭い価値観でやりたい仕事を決めるよりも、まずは与えられた仕事に必死に取り組んで成果を出す方が、可能性は広がります。思ってもいなかった自分の適性や仕事の面白さに気付くことがあるかもしれません。

だからこそ、まずは今の仕事を頑張りましょう。「やりたい仕事」に就けなかった今こそ、あなたの頑張りどきなのです。

取材・文/瀬戸友子