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AUG/2012

「慎吾ママ」を生み出したヒットの源は「嫌なものは嫌」―放送作家 たむらようこさん×藤井佐和子さん対談企画

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藤井佐和子
株式会社キャリエーラ 代表取締役 藤井 佐和子(ふじいさわこ)
大学卒業後、大手光学機器メーカーの事務職を経て、インテリジェンスにて女性の転職をサポート。現在は株式会社キャリエーラを設立し、キャリアコンサルタントとして、女性のキャリアカウンセリング、企業のダイバーシティーサポート、大学生のキャリアデザインなどに携わる。カウンセリング実績は1万2000人以上。オフィシャルブログ「藤井佐和子のキャリアカウンセリングブログ」も好評。

ゲスト:放送作家 たむらようこさん

「慎吾ママ」を生み出したヒットの源は「嫌なものは嫌」―放送作家 たむらようこさん×藤井佐和子さん対談企画
放送作家
たむら ようこさん

1970年、福岡県生まれ。早稲田大学卒業後、テレビ制作会社に就職。ADを経て放送作家に転身し、「慎吾ママ」のキャラクターを世に出すなど、業界きってのヒットメーカーとして知られる存在に。「サザエさん」「サラメシ」「グータンヌーボ」「祝女」「めざましテレビ」などの番組で構成や脚本を手がける。2001年、女性ばかりの番組制作会社「株式会社ベイビー・プラネット」設立。

朝は3時に起床し、出社前にもひと仕事
一日に5本の会議をこなすことも

藤井:子育てをしながら放送作家の仕事をして、さらに社長業もこなすのは大変そうですね。普段はどんなスケジュールなんですか。

たむら:朝起きるのは3時。息子が寝ている間に、まず自分の原稿を片づけます。その後、会社で働く後輩の放送作家たちから送られてきた原稿をチェックして、メールで指示を出しておきます。7時になったら息子を起こして、ご飯を食べさせて。
昨年から通っている保育園に息子を送った後、10時に出社します。午前中は、週に何日か“朝練”をします。皆で集まって、ひとつの課題に沿って企画や意見を出し合うんですよ。「高田純次さんが今人気なのはなぜか、理由を述べよ」とか。それが11時半くらいには終わるので、それからテレビ局などで行われる会議へ出かけることが多いですね。

藤井:会議って、多いときはどれくらいこなすんですか。

たむら:4〜5本ですね。いったん家に帰って、子どもを寝かしつけてから、また会議へ出かけることもあります。
藤井:そんなに立て続けに会議に出ると、頭の中が混乱しませんか。

「慎吾ママ」を生み出したヒットの源は「嫌なものは嫌」―放送作家 たむらようこさん×藤井佐和子さん対談企画

たむら:それが大丈夫なんですよ。それぞれの番組でスタッフも違いますし、その場に行けば頭が切り替わる。それぞれの番組ごとに、別の人間になる感じですね。私は昨年から「サザエさん」の脚本を担当しているのですが、放送が開始された42年前から番組に携わっている演出家さんや放送作家さんがずらりと並ぶ中で、私は41歳にして新人気分を楽しんでいます。一方で、自分がメインで企画した番組なら、現場で舵取りする立場になりますしね。

藤井:放送作家の仕事で、一番苦労するのはどんな点ですか。

たむら:時間のやりくりですね。映像にナレーションをつけるのは放送作家の仕事ですが、その前に番組の素材を撮影して、ディレクターさんがVTRを編集するというプロセスがある。でも、色々な事情でスケジュールが押して、VTRが手元に届くのが遅れることも珍しくないんです。でもオンエアの日時は決まっているし、音を入れるナレーターさんも手配済みなので、放送作家のところで何とか調整するしかない。会議の予定が入っていたのに、VTRの到着が遅れたために、どうしてもそちらの作業を優先せざるを得なくなって、会議をキャンセルすることもあります。そのたびに「すみません」と頭を下げるのは、やっぱりストレスになりますね。でも、テレビの前の女性たちに面白い番組を届けたいという思いがあるから、続けられるんです。

「嫌なものは嫌」と言うことから
新たな企画やアイデアが生まれる

藤井:私、たむらさんが手がけた「祝女」が大好きなんですよ。女友達と一緒に見たこともあるんですが、「女の気持ち、よく分かってるよね」って言いながら楽しんでいます。

「慎吾ママ」を生み出したヒットの源は「嫌なものは嫌」―放送作家 たむらようこさん×藤井佐和子さん対談企画

たむら:ありがとうございます! 嬉しいなあ。「グータンヌーボ」などもそうですが、私は“女のリアル”を描きたい気持ちが強いんです。テレビの世界では、男性から見た、理想化された女性像が描かれることが多いので。ただ、本当にリアルに描きすぎると、生々しかったり、痛かったりするので、「リアルを素敵でくるむ」というのが私のモットー。「祝女」も、内容は結構ヒリヒリするような痛みを含んだものですが、出演者がきれいな衣装を着て、おしゃれなカフェにいることで、そのヒリヒリが和らぐわけです。

藤井:面白い番組を作るために必要なものって、何でしょう?

たむら:「嫌なものは嫌と言う力」でしょうか。これって、ビジネスを生むためには大切だと思うんです。例えば「慎吾ママ」も、お母さんたちの「毎日料理をするのは、本当はちょっと嫌」という本音を拾って、「じゃあ、代わりに誰かが料理をしてくれる企画を出してみよう」と考えたことから生まれたんです。

藤井:「嫌なものは嫌」ですか。面白い考え方ですね。

たむら:やはりテレビ業界を含めて、日本はまだまだおじさん中心の社会なので、女性が何を嫌だと思っているのか、あまりにも理解されていないんですよね。まだ若手の頃、朝の情報番組を立ち上げる時に、男性の放送作家が「水着の女性たちが元気に体操するコーナーをやりましょう」という企画を出したことがあるんです。「爽やかでいいでしょ?」なんて言って。その時も会議に出席している女性は私一人で、「そんなの全然爽やかじゃないですよ」と言っても誰も聞いてくれない。それで、次の会議の時に「男の朝の体操」という企画をわざと持っていって、「男の人がブーメランパンツをはいて体操するんです。爽やかでしょ?」と言ったら、男性は皆、「そんなの爽やかじゃないだろ」と。それで私が「先週の企画も、同じことなんです。朝の情報番組のメイン視聴者は女性なんですから、同性の水着姿を見たって爽やかだなんて思いませんよ」と言ったら、ようやく分かってもらえた。そういう経験を何度もしたので、「ちゃんと口に出して『嫌なものは嫌』と言わないと、まともな番組は作れないのだ」と痛感したんです。

放送作家は未来を作る仕事
だから明るく元気な番組を届けたい

藤井:なるほど。そういう経験が、これだけ多くのヒット番組を生み出す原動力になったんですね。

たむら:私は、目の前に穴があったら、それを埋めずにいられない人間なんです。どこか欠けている部分があったら、それを満たしてあげたい。以前、お寿司屋さんに入ったら、難しい漢字が読めなくて困ったことがあったんです。スズキが食べたいのに、お品書きにあるどの漢字が“スズキ”か分からないから注文できない(笑)。それがすごく悔しかったので、「魚の漢字が読めたら、お寿司を食べられる」という企画を出したことがあります。そんなふうに、自分が失敗したことや辛かったことが穴だとしたら、それを放置せずに、必ず埋めて行く。それがすべて企画につながっているんです。

藤井:色々とご苦労があるとはいえ、楽しそうにお仕事をされているみたいですね。

たむら:放送作家は未来を作る仕事だと思っているので、できるだけ明るく楽しい番組を作って、見てくれた人たちが前向きな気持ちになってくれれば嬉しいなと思います。それともうひとつ、経営者としてやりたいことがあって。私は3年前にがんを患って、幸い今はこうして仕事に復帰できたのですが、大きな病を経験した人が社会復帰するのって、すごく大変なんですね。体力が低下したり、食事の摂り方に制限があったりして、普通に働くことが難しい人もたくさんいます。だから、そういう人でもできるような、体力的にも時間的にも負担が軽めの仕事を受注して、働く場を提供するような会社を作りたいなと考えているんです。もう会社名も考えているんです。「病後ライフ株式会社」っていうの(笑)。やりたいことはまだまだ尽きないですね。

【対談を終えて】
競争の激しいテレビ業界で生き残るのは、誰でもできることではないはず。たむらさんは、自分の企画が通らなくても決して諦めない強さがあるし、理不尽なことには逃げずに立ち向かって、辛い経験もすべて自分のものにしているのが素晴らしいと思いました。それと、お話を聞いて感じたのは、非常にロジカルな方だということ。目標を達成するためには何が必要かを考え、プロセスをきちんと組み立てている。やりたいことを次々と実現できたのは、きっと右脳と左脳の両方をバランスよく使っているからなんでしょうね。(藤井)

取材・文/塚田有香 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)

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