疲れてイライラ、子どもにあたって自己嫌悪―働くママが「負のスパイラル」を抜け出すための処方箋

 育児と「豊かなキャリア」の両立を!ワーママ2.0
『育キャリカレッジ』池原真佐子のWebメンタリング
育児と「豊かなキャリア」の両立を!【ワーママ2.0】

結婚しても、出産しても、仕事は続けたい。しかも、ただ働くだけじゃなく、やりがいのある仕事がしたい!――そんなワーキングマザーから寄せられたお悩み相談の数々に、働く女性向けにメンターサービスを提供する『育キャリカレッジ』代表の池原真佐子さんがメンターとして回答していきます!

今回の相談

(Bさん 専門職/35歳/子供2歳)

いつも疲れています。仕事が終わって保育園にお迎えにいって、家に帰ったら次々に家事をこなして……という毎日で、自分だけの時間を持てないことについイライラしてしまいます。すると、子どもにもあたってしまって、後で自己嫌悪します。疲れと怒りと後悔の負のスパイラルを抜け出したいのですが、いい方法はありますか?

池原さんからの回答

行き場のない疲れと怒りが溜まっている様子が、文面からも伝わってきます。産後1年ほどたったときに、“女性が豊かなキャリアを育む”をコンセプトに、女性にメンターをマッチングする「育キャリカレッジ」を立ち上げた私自身も、Bさんと同じ2歳の子を持つワーキングマザー。疲れが溜まってイライラしてばかりいる時期がありました。そのような経験を踏まえて、私なりの処方箋を紹介させていただきます。

子どもにあたって自己嫌悪

「疲れている」「怒っている」
それに気付いているだけですごい

Bさんのこの短い文面の中には「いつも疲れています」「イライラしてしまいます」「疲れと怒りと後悔の負のスパイラル」というキーワードがあります。

まず、自分の状況を言葉にして出せることがすごい、というのが素直な感想です。SOSを出せない、自分で気付けなくなってしまう、そうなる前に、Bさんは「怒り、疲れ、後悔」に気付きました。最初のステップとして、そのような自分を褒めてあげてください。

私は会社を立ち上げて5年目ですが、3年目の時に妊娠。臨月で夫が海外赴任をしてしまい、産むその日まで働き、産後は3週間から仕事復帰をしました。そして子供が1歳をすぎた頃には新規事業として「育キャリカレッジ」を立ち上げました。

その後、仕事はどんどん増え、ワンオペ育児にも疲れ、とにかく疲弊していた時期がやってきました。でもそういう時、「疲れている、やり場のない怒りが溜まっている」ことに気付かなくなっていたのです。ちょっとしたことで感情が上下し、幸せだなと感じる余裕もなく、日々をこなすだけで精一杯でした。

しかし、あるきっかけで「私は怒っていたんだな、疲れていたんだな」と初めて気付きました。それまでは、負の感情に向き合う余裕すらなかったのです。そこからは大きく現実が変化していきました。

ですので、Bさんはこの時点で、自分がどのような感情に覆われているのかを言語化できていることは、変化の大きな一歩だと思います。そしてその次に、具体的に何をすればいいかをお伝えします。

ライフスタイルをアップデートする

Bさんの「イライラの起点」が「自分の時間が無いこと」であれば、まず「どうやったら自分の時間を作れるか」を考えてみてください。次の質問を自問自答してみてください。

●毎日、何に一番時間を取られているのでしょうか?
●それは、自分で無ければできないことでしょうか?
●それは、手を抜いたり頻度を落としたりできないのでしょうか?
●自分の時間は週何時間あればイライラしなくなりますか?
●自分の時間があったら何をしたいですか?
●自分の時間を作るために月いくらまでなら投資できますか?
●自分の時間を作るためのサービスは何がありますか? 民間のシッター会社や公的なサポート等(有料、無料)
●自分の時間を作るための、心理的なハードル、外部の抵抗勢力は何ですか?
●自分の時間を作るために誰を味方にできますか?

負のスパイラルを抜け出すためには、「イライラしたら1、2時間人に預けてマッサージ」等の対処療法ではなくて、日常的に自分の時間を確保できるよう、思い切って何かを辞める、代替サービスにする、などの根本的な変化が必要なのだと思います。

変えるためには、ゴールを明確にすること、そして、何が原因で、どういう解決法があるのかを知る、というのがシンプルです。

私の場合は、日常のこまごまとした雑務に時間を取られていることがわかったので、それらを改善することにしました。

その結果、毎日スーパーへいくことを辞めました。その代わり『honestbee』という買い物代行アプリで近所のスーパーから宅配してもらっています。

また、細かい日常の業務を何もかも自分で抱えこむことをやめました。仕事は新しい人を雇ってルーティンをお任せしたり、家事の一部を外注したり。子供の食事も、凝ったものを作るのはやめ、栄養だけは気を配りながら、野菜等の素材を、ただ切ったり煮たり焼いたりするだけのシンプルな食事にしています。

また、睡眠時間が短いと心の余裕がなくなることも判っていたので、どんなことがあっても睡眠時間だけは優先して確保しています。そうやって、地道ではありますが、自分の時間を多く取るように、生活そのものをアップデートしていきました。

さて、Bさんの場合は、何をどうアップデートできそうでしょうか? ぜひ、30分でもいいので、上記のリストを見つめながら、まず自分自身の現状をしっかり見つめてみてください。

最後に。負のスパイラルから抜け出す覚悟を持ってください。人は、どのようなネガティブな状況であっても、現状を維持することが楽だと感じる生き物です。何かを変えるのは、容易いことではなく、心のどこかで「このままの方が楽」という気持ちがあります。

覚悟を持って、今のスパイラルに終止符を打ち、変化を起こすこと。それが、子育ても仕事も、そして人生も、前に進めるために必要なことかもしれません。


【この連載の寄稿者】
株式会社MANABICIA代表/育キャリカレッジ 代表
池原真佐子(いけはら まさこ)

福岡県出身、早稲田大学・大学院で成人教育を専攻。PR会社、NPOを経てコンサル会社で勤務。在職中にINSEADのパートタイムのコーチングと組織開発の修士(Executive Master in Change)を取得。同時に、エグゼクティブコーチング等の人材育成を手がける(株)MANABICIAを創業。その後妊娠するも、臨月でパートナーが欧州に転勤、東京でワンオペ育児開始。産後1年半経ったころ、キャリア女性にメンターをマッチングさせる育キャリカレッジを新規事業として立ち上げる。2018年秋からはドイツにも拠点を持つ予定。2017年に英ユニリーバDOVEでNourishing SecretのCMに、日本を代表する新しい女性として出演。その他、日テレNews等のメディア出演も多数。著書『自信と望むキャリアを手に入れる 魅力の正体』(大和書房:日本と韓国で発売)