「J.Kローリングはまるで預言者」『ファンタビ』ティナ役、キャサリン・ウォーターストンが大事にする信頼と絆
ハリー・ポッター魔法ワールド最新作、映画『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が2018年11月23日全国公開となり、ティナ役を演じるキャサリン・ウォーターストンが来日。シリーズ1作目の『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』に引き続き、ウィザーディングワールドの一員として、エディ・レッドメインやジョニー・デップ、ジュード・ロウなどの豪華キャストと共演した喜びをWoman type読者に向けて語ってくれた。

女優
キャサリン・ウォーターストン
1980年3月3日生まれ。イギリス出身。テレビ映画『Americana』(2004)でデビュー。映画『インヒアレント・ヴァイス』(2014)で、ホアキン・フェニックス演じる主人公の元恋人役に抜擢され、一躍注目を浴びる。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(16)、『ファンタスティック・ビーストと黒の魔法使い』(18)ではヒロインの魔女、ティナ役を演じる
大切なのは、作り手同士の「信頼」と「絆」
「今回は2作目の撮影ということで、チームの絆がしっかり構築されているところからのスタート。撮影初日からお互いに信頼感を持ち、とても効率良く仕事に取り組むことができました」
インタビューの中で、キャサリンは何度も「信頼」・「絆」という言葉を使った。映画のようにたくさんの人が関わるものづくりの現場では、作り手同士の信頼の構築が最も大事なのだと力説する。
「例えば、ティナが杖を振るシーン。私はその一振りで、彼女がいかに偉大な魔女かということを表現したい。それをCG担当のスタッフが汲んでくれると、最高のシーンができ上がります。阿吽の呼吸と言うんですかね、これは演者とスタッフの信頼関係がないと成し得ないことなんです」

また、本作の主人公ニュートを演じるエディ・レッドメインには、絶大な信頼を寄せているという。「彼は正真正銘のプロフェッショナル。彼が掲げるものづくりの基準がすごく高いから、私も身が引き締まる思いでした」と尊敬の念を寄せる。

「エディはとても想像力が豊かな人。それでいて、人一倍努力をすることも惜しまない。映画をご覧になった人のどれくらいの人が気付くかは分かりませんが、『ファンタビ』の中には彼のこだわりが細部に散りばめられています」
小さな魔法動物を驚かせないように、かかとからそっと足をおろし、ニュートがゆっくりと歩くシーンがある。これは、実際に動物学者がそうすることを調べたエディが、自ら発案して行った演技だったとキャサリンは明かす。
NOを突きつけられても、悲観的にならないこと
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』では、ティナの人間的な成長、ニュートとの恋の行方も見所の一つになっている。彼女の中に起き始めた“微妙な変化”をいかに表現するかが、チームの課題となった。

「今回、衣装担当の方からティナにワンピースを着せたらどうかという提案があったんです。ニュートに想いを寄せるティナのロマンチックな一面を表現したいから、ということで。でも、私はそれは違うと思った。ティナの変化を表現するには、髪型を少し変えるくらいで十分。あとは前作同様、パンツスタイルであるべきだと提案したんです。なぜなら、彼女は仕事に対してすごく誠実な女性だから。任務を遂行するために、ワンピースは実用的じゃない。だから彼女はその服を選ばないと伝えました」

仕事を愛しているけれど、職場で反抗的な態度をとって失敗してしまったり。
大胆な行動も取るけれど、シャイな一面もあったり。
ティナの魅力は、人間らしい矛盾をたくさん抱えているところだ。
「私と彼女の共通点は、悪いことがあってもくじけないところ。役者の仕事をしていると、人から拒絶されることはよくあります。私も、オーディションを受けて『NO』と言われたことは数知れずある。人によっては何年も『NO』を突きつけられるものです。それでも、自分の信念に従って、物事を悲観せずに前に進んでいく。そういうタフさは私自身の強みだし、ティナにも似ているところじゃないかと思いますね」
現代社会を生きる人の葛藤が、
巧妙にストーリーに落とし込まれている

J.Kローリングは、本作の脚本を4年前に仕上げたというが、劇中で描かれる魔法界と人間界の分断は、現代社会の問題点をも浮かび上がらせるものにもなっている。キャサリンは「J.Kローリングはまさに預言者のよう」と驚きを口にした。
「偉大なアーティストの多くは、先見の明があるものですよね。彼女も間違いなくその一人。まるでサイキックのように現実世界の問題を予言し、作品のテーマとして巧妙に落とし込んでいる。ただ、こうした難しい問題を、非常に繊細に扱い、エンターテイメントとして提示してくれるから、私たちも素直に作品を楽しめるんです」
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、劇場公開日から10日間で累計観客動員数約206万人、興行収入約29億円を記録。世界興行でも3週連続でのNo.1を記録し(2018年12月3日時点)、日本のみならず世界で大ヒットとなっている。これだけ多くの人を虜にする魅力とは何か、改めて問うと「現代社会を生きる人々の心の中で起きている葛藤を、非常にうまく落とし込んだストーリーが共感を呼ぶのだと思う」という答えが返ってきた。
「自分はインサイダーか、アウトサイダーか。自分にとっての正義、悪とは何か。正反対のように見えて、実は表裏一体でもある問題を前に、苦渋の決断を下す人々の姿が本作では描かれます。そこも、私たちが抱える葛藤とマッチするのかもしれない」

『ファンタスティック・ビースト』シリーズは、全5部作。1作目の舞台はニューヨーク、2作目の舞台はロンドンとパリ。毎回違う都市を舞台にストーリーが展開していくことが発表されている。次はどの国でニュートやティナたちの姿を見ることができるのだろうか。物語の展開から目が離せない。
取材・文/栗原千明(編集部)
【映画情報】
■監督:デイビッド・イェーツ(『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』 『ハリー・ポッター』シリーズ後半4作品)
■脚本:J.K.ローリング(「ハリー・ポッター」シリーズ著者)
■プロデューサー:デイビッド・ヘイマン(『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』、「ハリー・ポッター」全8作品)
■出演:エディ・レッドメイン、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、エズラ・ミラー、キャサリン・ウォーターストン、ダン・フォグラー、アリソン・スドル 他
■配給:ワーナー・ブラザース映画
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