会社員生活はもう嫌だ! 起業に興味を持った女性が確認すべきこと
長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『育キャリカレッジ』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
「育キャリカレッジ」のメンターになって半年余り。最近こんな相談を受けることが多いことに気付きました。
「理想の働き方を考えるうちに、起業に興味を持ち出したのですが、どう思いますか」
相談者はバリバリ仕事をしている独身女性から育児休業中の方、育休明けで仕事に復帰した方までさまざまです。それぞれ、身を置く環境は全然違いますが、なぜか共通しているのが、「起業」を会社勤めよりも良い働き方として受け止め、興味を抱いていることです。
確かに残業が続いたり、朝の始業時間に遅れそうになったりした時、自分の裁量で自由に時間を決められて働けたらいいなあ……と思うことは、会社に勤めている方なら誰もが一度は経験していることでしょう。
現に私も、フリーランスのキャリアコンサルタントとは別に会社員としても働いているので、決められた時間に出社していますが、これがなんと大変なことか! 子供たちを保育園に送ってからの出勤を出社時間に間に合わせるためだけに、朝から過剰なエネルギーを使っています。
そんな毎日を過ごしていると、自分のやりたいことで自分らしく働きたい、起業という道もあるのではないか、と思うのは自然なことかもしれません。
「起業」は全てを解決してくれるわけじゃない

経済産業省は2016年度から、女性の新しいキャリア・ステージとして「女性の起業」を位置付け、支援事業を行っています。女性の起業の機運は、確実に醸成されてきていると言えるでしょう。私も、起業は働き方の選択肢の一つになると考えていますし、自分らしい働き方を追求する中で、それを実現しようとすることは素晴らしいことだと思っています。
でも、それは全ての人にとっての「理想の働き方」ではありません。
起業をすれば「稼ぐ」という新しい苦労がついて回ることになり、人によってはむしろ自由になるどころか「不自由になった」と感じるかもしれません。税務申告一つとっても、会社がどれだけのことをしてくれているかが分かるでしょう。企業に勤めていた方であれば、会社がやっていてくれた年末調整を自分で確定申告したときに「去年までは楽だったのに」と感じるはずです。
冒頭の相談内容に話を戻しましょう。「起業に興味を持ち出したのですが、どう思いますか」。こうした相談を受けたとき、私はメンターとして、まず「どうして起業に興味をもったのか」というその背景を、じっくり聞くことをしています。
中にはもちろん、自分のやりたいことが明確で、本当にまっすぐ起業を目指している方もいらっしゃいますが、そうでない方も多くいます。起業というのは分かりやすい一つの象徴的なイメージで、本音は「現状への不満を解決したい」「新しいことにチャレンジしたい」という気持ちの高まりであることが少なくありません。「転職を考えている」ことの現れであったりもします。
誤解してほしくないのですが、それでもいいのです。私はメンターとして「ほらね、あなたは現実逃避しているだけなのよ」とは、決して思いません。メンタリングをしていると、メンティーが〇〇に悩んでいると話してくれていても、メンティー自身が本当の自分の悩みに気付いていない、または蓋をしているということは多々あるのです。
だから、「起業……」と言いつつもモヤモヤしている、「何をどんな風に行動に移せばいいか分からない」方たちを前にした時こそが、私たちメンターの出番である、とも言えます。特に外部メンターは社内の人間関係のしがらみがなく、自分の正直な気持ちを吐露できる相手です。そんな相手に話をしてみると、自分では気付かなかった気持ちや考えを発見できるのです。
自分の過去を時系列で振り返ってみよう

では、実際にそのような相談を受けたとき、メンターでありキャリアコンサルタントでもある私自身がどう対応するかを、ご紹介します。
このようなケースにおいて、私が有効だと考えるのが「過去の自分自身のキャリアを丁寧に振り返り、自らの言葉で語り直す」ということです。これは、「ナラティブアプローチ」というキャリアカウンセリングの手法で、ナラティブとは物語の意味です。過去の現象に対する意味付けや価値観を再認識するためのキャリアカウンセリングの重要な手法の一つとなっています。
具体的には、このような質問を重ねていきます。
「どうして今の会社に入社したのですか?」
「入社した当初はどんな気持ちでしたか?」
「会社を辞めたいと思ったことはありますか?」
「それはどんな時でしたか?」
「その時の気持ちを教えてください」
重要なのは「過去を時系列で振り返る」ことです。こういった問いかけを繰り返すことで、メンタリングの後に「人生はしっかりとした1本の線でつながっていた」と多くの方に気付いてもらえます。
キャリアを自分自身でなぞることの最大のメリットは、自分に自信が持てるようになることにあります。見えてきた自分のこだわりやライフテーマは、一般的に「強み」と言われるものです。
自分にもしっかりとした「軸」があったのだと再認識し、自分自身の強みを獲得することで、半ば逃避的に起業を夢見ていた方も地に足をつけ、自分自身のキャリアに向き合うことができるようになるでしょう。
「あなたの強みは何ですか?」 そう聞かれても、なかなか即答できない方が多いのではないでしょうか。でも、もしも自分の強みや軸を見失ってしまっていて、何かモヤモヤしているなら、是非メンターに相談してみてほしいと思います。
また、「そういう相手を確保しておく」、ということも実は重要なのかもしれません。メンターとは経験や知識を基にアドバイスしてくれる存在ですから、信頼できるパートナーや家族、友人で十分に務まることもあります。それ以外で新しい視点やTipsを得たい時は外部メンターが有効です。
いつかあなた自身も周りの誰かから相談を受け、メンターとしての役回りを求められることがあるかもしれません。今回のコラムが、そのときの一助になれば幸いです。

【この記事を書いたメンター】
山田恵理さん
JCDA認定CDA(キャリアデベロップメントアドバイザー)、国家資格キャリアコンサルタント。「育キャリカレッジ」の公式メンター。現在は週3日、都内の人材会社で女性起業家を支援する事業に関わるほか、フリーランスとして女性専門キャリアコンサルタント事務所に所属、育キャリのメンター&プロボノ、秋田時代からの縁で遠隔キャリア相談や秋田県のメルマガにキャリコンコラム寄稿など幅広く活動している。双子の息子は3歳半のやんちゃ盛り。苦難の保活はゴールを迎えたが、育児と夜泣きに追われる日々
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