職場では「すみません」より「ありがとう」を伝えて――ワーキングマザーが前向きに働き続けるためのヒント
長く仕事は続けていきたい。でも、どんな仕事が自分に合っているのか、そもそもどんな人生を送りたいのか、自分のありたい姿が明確にならない女性も多いはず――。そこでこの連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
こんにちは、『Mentor For』公式メンターの安藤知子です。前回は、キャリアはジャングルジムというテーマでした。2回目は、より日常的な視点で、女性、特にワーキングマザーの仕事術をテーマにしたいと思います。
ライフイベントは女性にさまざまな影響を与えます。男性の育児参加が以前より広がっているとはいえ、仕事時間などの制約の多くは女性の肩に乗っているように思います。
私自身もワーキングマザーでしたし、部門長としてチームメンバー、また人事本部長という立場でも多くの女性社員の育成やサポートに関わってきました。ワーママ当事者としてだけではなく、ワーママのマネジメントをした立場から、仕事・キャリアに悩まないためのヒントをいくつかまとめてみました。
【1】ビジネスの会話へのスイッチを意識!
コミュニケーションは理解と共感の両方が大切。理解は左脳的、共感は右脳的とも言います。右脳全開で子供に接するワーママは、ビジネスの場では意図的に左脳のスイッチをオンにしましょう。
「結論→理由→提案(または代替案)→承認(確認)→ クロージング」という会話の流れを頭の中に描いておくといいと思います。
【2】NOではなく逆提案をしてみよう
いつも時間ギリギリで頑張っているワーママにとって、納期の短い依頼は辛いもの。また、迷惑を掛けたくないという気持ちから、やりたい仕事を断ってしまうことはありませんか?
そのような時には、「これならできます」という逆提案をまずは試してみませんか? 仕事のアウトプットでは時間と完成度は相関関係にあります。例えば「明日までにこの資料を作れる?」と聞かれた場合、「無理です」ではなく、「明後日まで時間があれば100%のレベルでできます。明日までなら80%のレベルですが、今回の目的は達成できると思いますが、どうでしょうか?」というような提案を考えてみましょう。
ビジネスでは、アウトプットに常に100%の完成度が求められているわけではありません。ただ、依頼する上司は期待するレベル感を明確に伝えることを忘れがちで、依頼された部下は100%のアウトプットが求められていると思い込んでいるケースが多いのです。
より効果的に仕事をしていくためにも、まずはアウトプットの期待値を確認し、逆提案をしてみましょう。適切な逆提案をしてくれるメンバーは、上司にとっても頼もしい存在のはずです。
【3】助けられ上手になろう
ワーママにとってのチャレンジの一つは、子供の病気などで出社ができないといった制約が突発的に起こることです。そのような時にどうするのか……緊急時の対応が、その人の仕事に対する姿勢を表すことが多々あるものです。最大限の努力で自分の役割を全うする姿勢は大切ですが、同時に仕事は一人で完結するものでもありません。
そこで、助けられ上手になるヒントをいくつか挙げてみます。
◆「リスク」の共有も仕事の一部
「大丈夫?」と聞かれても、迷惑を掛けたくない一心で「何とかします」「頑張ります」と答えてしまうことはありませんか? 自分の仕事を「できそうにない」と言うのは勇気がいるかもしれません。でも、不測の事態に、チームとしてどのようにリカバーするかを考えるのも上司の仕事です。期日までにタスクの完了が難しいかもしれないという「リスク」がある場合に、リードタイムを持って上司と共有するのも大切な責任の一つだという視点を持ちましょう。
◆状況は分かりやすく説明しよう
突然出社できなくなった時、上司やチームメンバーが一番困ること……それは、何が緊急で、何が明日でもよくて、どこに情報があるのか……そういった状況が分からないことです。プロジェクトの進捗状況など、最小限の説明で分かるように日頃からファイリングなどを心掛けるのは必須です。また、緊急なことがない場合には、「ないことを伝える」のを忘れないようにしましょう。
日頃からの情報共有も大切ですが「いつもメールにccを入れているから分かりますよね」というのは避けた方が懸命です。多くの部下を持つ上司や同僚が全てのccメールを読むのは不可能だという前提で、要点を簡潔に伝えるなど、相手の立場に立ったサポート依頼を心がけましょう。
◆サポートには思い切り感謝を!
心からの気持ちであれば、感謝し過ぎることはありません。感謝を伝える言葉は「すみません」より「ありがとう」です。「ありがとう」はその場にポジティブなエネルギーをもたらします(「ありがとう」と「すみません」を実際に鏡の前で口にしてみてください。言葉が表情や雰囲気に与えるインパクトの違いを確認してみましょう)。そして、同僚から受けたさりげないサポートも上司にも報告し、認知してもらいましょう。同僚にとっても上司からの認知は嬉しいものです。
一方的にサポートを受けるばかりで気が引ける……これがワーママのモヤモヤの一つかもしれません。確かに、ある期間はそのような状況に直面するかもしれませんが、ビジネスは長期にわたって続いていくもの。受けたサポートを返す機会は必ず巡ってきます。「恩返し(ペイバック)」ではなく「次に渡す(ペイフォワード)」という視点を持ってみましょう。ワーママが後輩たちにペイフォワードしていく……そんなチームは温かく強い組織として成長していくと思います。
今回も、最後まで読んでいただいてありがとうございます。お役に立つことが一つでもあれば嬉しく思います。
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