「仕事したら負け?」働く女性が暴露、これが我が社のモンスター社員だ!【心理学者 杉山崇さん監修】

最近、耳にする機会が増えた「モンスター社員」という言葉――。

組織のルールを無視して身勝手に振舞う人や、感情を抑えず周りの人にあたり散らす人。会社に来ても全く仕事をせず堂々としている人、他の人を利用することばかり考えている人……。職場にさまざまなトラブルをもたらす“モンスター社員”にどう対処したらいいのか、悩んでいる人は多いかもしれない。

心理学的に正しいモンスター社員の取扱説明書』(双葉社)の著者であり、心理学者の杉山崇さんは「モンスター社員が近年増加していると言われる背景には、あらゆる業界で深刻化する“人手不足”が関係している」と話す。それは一体どういうことなのだろうか?

読者から寄せられた悩みに回答してもらうかたちで、モンスター社員とは何か、そして彼/彼女たちにどう対処すべきなのか、タイプ別に教えてもらった。

杉山崇

【お話を伺った方】
心理学者・神奈川大学教授 
杉山 崇さん

神奈川大学教授、大学院人間科学研究科委員長。心理学相談センター所長。法政大学大学院講師。心理職歴25年の臨床心理士。精神科、学校、企業などであらゆる年代のあらゆる悩みに応じてきた。うつ病と対人関係の研究で有名で、厚生労働省の政策に協力する委員でもあり、一級キャリア・コンサルティング技能士として指導的役割も担う。NHK等のTV番組出演をはじめ、各メディアにおける心理解説でも活躍。多数の自著も刊行。近著は『心理学的に正しいモンスター社員の取扱説明書』(双葉社)
公式ホームページ

そもそも、「モンスター社員」って誰のこと?

はじめに、「モンスター社員」の定義をはっきりさせておきたい。ただ単に仕事ができない人と、モンスター社員の違いは何なのか。杉山さんは、モンスター社員を次のように定義する。

モンスター社員とは?
偏った人付き合いや仕事のスタイルで職場に不利益を与え、繰り返し(3回以上)同じ注意や指摘をしても直らない人

ポイントは、客観的に見て「職場に不利益を与えている」にもかかわらず、それを複数回指摘されても態度・行動を全く改めようとしないというところだ。また、実際そのような人物は、近年増加傾向にあるのだろうか。

杉山先生

昔から、どの職場にもモンスター社員は存在していたと言えます。ただ、かつての日本企業であれば、バックヤードの仕事を任せるなど、比較的コミュニケーションが不要な業務にそういった人を配属することができた。ある意味、うまく隔離することができていたのです。

しかし、最近はどの業界も人手不足が顕著。モンスター社員といえども、彼らを悠長に隔離している余裕がありません。また、十分な教育体制を整えられず、人材育成に手がまわらない職場も増えていますから、モンスター化を助長してしまっている部分もあると思います。

あなたの会社にもいるかも? 4大モンスター社員

モンスター社員

あらゆる職場でその存在が“顕著なもの”になりつつあるモンスター社員。杉山先生によれば、代表的なタイプは4つに分類できるという。

■依存系モンスター
特徴:人に甘えて、仕事から逃げようとするところが特徴。「仕事をしたら負け(損)」だと考えている。そのため、他人に自分の仕事を押し付けてくる。やらなければいけないことを放っておいて、周囲を困らせる。女性に多いという。周囲がしっかりタスク管理をする仕組みをつくってしまえば、組織への不利益は軽減する傾向にある。

■承認欲求系モンスター
特徴:承認欲求が激しく、「自分を見てほしい」という強い願望。そのため、根も葉もない噂などを自ら流し、職場の人間関係をかき回すことがある。話題の中心にいたがるタイプで、依存系モンスター同様、女性に多く見られる。自分に注目を集めたいだけなので、普段から話を聞いてあげれば暴れない。周囲の割り切りも重要。

■頑固系モンスター
特徴:自尊心が強く、コミュニケーション能力や、人の気持ちを察する力が著しく低いタイプで、男性に多い傾向。頑固さゆえに得意分野では良い成績を残しているケースも多く、中には実績を買われて管理職になっている人も少なくない。「反論されること」が大嫌いで人の話を聞き入れず、自分の意見に固執する。周囲の人には忍耐力が必要。

■自己愛系モンスター
特徴:自己愛が強く、自分のことを「無能な人間たちを導く存在」だと考えている。男性に多く、自分の考え方や仕事の進め方などを他者にも強要してしまう。部下の心身を壊すクラッシャー上司にもこのタイプが多い。自分の言うことを部下や周囲の人が受け入れてくれて当たり前と思っているので、とても厄介。一対一で戦うと疲弊するので、会社の相談窓口や、被害者仲間を見つけて対処するのがよい。

仕事しな過ぎ、威張り過ぎ……職場のモンスター社員、どう対処する?

Woman type読者に聞き取り調査を実施してみると、「我が社のモンスター社員」に関する暴露情報が続々と寄せられた。そこで、代表的な事例を3つ編集部でピックアップ。杉山先生に適切な対処法を教えてもらった。

<暴露1>仕事しな過ぎ女

28歳/一般事務

新入社員の後輩女性が『私は絶対に残業しない』と言い張って、任せた仕事を放って帰ってしまいます。

かといって、日中仕事を他の人より頑張るでもなく、効率的に働こうとして いるわけでもありません。『定時で帰るのは私の権利だ』と言い張って聞かないので、扱いに困ります。

杉山先生

依存系モンスターの一種です。仕事に対する自覚が足りない若手社員に多いのがこのタイプ。何事も勝ち負けや損得で物事を考えます。『残業をしたら負け』『自分のペースで働いて、なるべく仕事はしないが勝ち』という理屈です。

ただ、このパターンの場合、相手が新入社員ということもあって改善できる可能性は高いと思います。『仕事は皆で補い合いながら取り組むもの』『チームで一緒に目標達成する楽しさ』などを伝えながら、仲間意識を持たせていきましょう。

そもそも、『仕事をする・しない』は勝ち負けではないということを直球で伝えるのもあり。または、自分一人が残業しないで済む方法ではなく、チーム全員が残業しないで済む働き方を、本人に考えさせてみてはいかがでしょうか。組織の一員であることを強く意識付けすることが大事です。

<暴露2>威張り散らす女

25歳/営業職

私の女性上司は、後輩の言うことを一切聞いてくれません。『私が正しい』の一点張りで、他の人の言うことを全く聞き入れないのです。

部下や後輩が自分の意見を少しでも否定しようものなら、ヒステリックに怒鳴り散らします。そんな上司のもとでは何も提案する気になれず、仕事も楽しくありません。

モンスター社員
杉山先生

自分の存在を周りに認めさせたい自己愛モンスタータイプですね。理想が非常に高いので、彼女は彼女で『なりたい管理職像』と現実の自分とのギャップに苦しんでいます。そして、部下や後輩に意見されると、彼らにそんな意図はなくても、自分が気にしているギャップに対して“ダメ出し”されたような気がしてしまい、ヒステリーを起こしまうのです。

このタイプへの対処法はシンプルで、『私って、いい上司』と思わせておくこと。うまくおだてておくだけで、ヒステリーはある程度おさまります。一方、絶対にやってはいけないのは、相手のダメなところを真っ向から否定すること。一度『敵だ』と見なされると、徹底的にあなたを排除しようとしてくるので、余計厄介なことになります。

相手のヒステリー等で業務に本格的に支障が出ているなら、人事系の部署や、上司の上司にあたる人などに相談を。

<暴露3>気にし過ぎ女

26歳/販売職

「同僚の女性はいつも、『あの人が私の悪口を言っているに違いない』とか、『あの上司は私のことが憎いから昇進させてくれない』とか、とにかく何の根拠もない妄想ばかりしています。

しかも、『あの人は不倫している』など職場の人の噂も好き勝手に話すので、チームの士気も下がって迷惑しており、『そういうことを言うのはやめなよ』と指摘を何度もしましたが全く聞き入れてくれません。

杉山先生

承認欲求系モンスターの一人ですね。このタイプの人は、自分自身の問題と向き合うのが苦手で、『傷付きたくない』という気持ちが強いです。『あなたがダメなんだよ』と言われて傷付きたくないから、先に『あの上司は私のことが嫌いだから昇進させてくれない』など、問題を他人のせいにすり替えた発言をします。

こうした自己防衛の意識はクセになってしまっていてなかなか変わりにくいので、周囲の人には諦めも必要です。『あの子はかわいそうな人だから』という共通認識を持って、言いたいことを言わせておき、噂は信じないようにするしかありません。

愚痴や噂話を聞かされてしまうシチュエーションをなるべくつくらないようにするなど(二人っきりでいるのを避けるなど)、あなた自身の自己防衛も必要です。

職場に不利益を与え、混乱させるモンスター社員たち。ただ、どんなに困った人であっても、会社にいる以上は付き合っていかなければいけないもの。自分の立場やメンタルヘルスを守るためにも、適切な対処法を心得ておこう。

取材・文/上野 真理子

Information

モンスター社員

『心理学的に正しいモンスター社員の取扱説明書』(双葉社)
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