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NOV/2019

管理職になるべきか、どうしたらなれるのかーー女性たちの悩みに上野千鶴子・浜田敬子・石井リナ・秋田夏実が回答

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11月8日に開催された『MASHING UP』カンファレンスで、『「女性活躍」はキモチワルイ?– 新しい言葉をみつけよう』と題したディスカッションが行われた。

「管理職に興味はあるけど、どうしたらなれるのか分かりません」
「企業で管理職になることに魅力を感じないです……」
「海外の女性と日本の女性に対して、おじさんの態度は違うもの?」

質疑応答の時間には、参加者からたくさんの質問の手が上がった。本記事ではWoman type読者と同世代の女性たちの質問と、その回答について紹介しよう。

「女性活躍」は気持ち悪い?
※写真左から
Business Insider Japan 統括編集長 浜田敬子さん
ブラスト代表取締役社長 石井リナさん
社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長 上野 千鶴子さん
アドビ バイスプレジデント 秋田夏実さん

管理職、興味はあるけど「なり方が分からない」

Aさん

管理職になることへの興味はあります。ただ、そのステップが可視化されていないので、どういう実績をつくればいいのかが分かりません。男性を見ていると、昇進の方法は口頭で伝えられているようなんです。それが可視化されない限りは、私が管理職に就くのは難しいのかなと思ってしまいます。

秋田:昇進・昇格の基準が明示されていないことに対して人事が手を打っていないことが一番の問題ですが、やはり自分で「管理職になりたい」と声を上げることが必要だと思います。まずはあなたの話をまともに受け止めて、きちんと動いてくれるであろう上司ないしは人事を探してください。

その人に対して管理職になりたいという意思表示をするとともに、何をどのようにクリアしたら、あるいはどんな実績をあげたら昇進できるのかを確認し、キャリアプランを一緒に立ててもらいましょう。そしてレビューをしてもらってください。

何を達成したら昇進できるのか、上司や人事との間で明確化させれば、誰もノーとは言えなくなります。「達成した暁にはぜひチャンスをください」という話をすると、前に進めるのかなと思います。

「女性活躍」は気持ち悪い?

浜田:「会社は何かをしてくれる」と思っている人が多いですけど、上司の立場からすると、ぜひ言っていただきたいです。「声を上げなさい」「交渉しなさい」とよく女性たちには伝えているのですが、待っていても変わりません。交渉しちゃって全然大丈夫ですよ

上野:日本の女性は自己主張が下手なんですよね。「いえいえ、私なんか……」と謙遜し、「そう言わずにお願いします」って言われて初めて引き受けるようなやりとりが多いですけど、自分をアピールするってすごく大切なことです。

企業で管理職になることに魅力を感じない

Bさん

私は20代なのですが、同世代には男女双方とも管理職になりたがらない人が多いように感じます。企業で管理職になることに魅力を感じない人が多いのかなと思うのですが……。

秋田:権限を持つようになると、これまでとは違った地平線が見えてくるんです。管理職になることによって、「誰にどう持っていけばこの要求を通せるのか」が見えてくる。要は自分で考えたことを自分で形にできるようになるわけです。

そこに対して楽しいと思える瞬間は絶対ありますよ。面倒なこともありますけど、それでもそこに辿り着いてみないと見えない地平線は、絶対楽しいです。

石井:私も会社の代表になって、同じレイヤーの方と同等に話ができたり、交渉しやすくなったりっていうのは明確に感じています。それは大きなメリットですね。

「女性活躍」は気持ち悪い?

上野:仕事を通じて大きな何かを達成し、自分が成長するっていう、この喜びは何物にも代えがたいですよ。そしてそれは一旦味わったらやみつきになるものだと思います。女性はそういうことを体験できるポジションで権力の「蜜の味」を味わったことがないから、管理職に魅力を感じないんでしょうね。

浜田:男性に昇進欲がなくなっているのはチャンスですから、「皆がやりたくないなら私がやります」ってぜひ手をあげてほしいです。そしてその楽しさを味わっていただければと思いますね。

日本のおじさんは、海外の女性と日本の女性で“態度を変える”?

Cさん

私は日本とフィンランドのハーフです。仕事の時、外国人のスタンスで英語で会話をしているときは話を聞いてもらえるのに、日本語に切り替えた途端に私の隣の上司の顔しか見なくなるなど、おじさんたちの態度が豹変することがあります。フィンランドではこういうことがなかったのでびっくりしているのですが、私が過敏になっているのか、もしくは海外の女性と日本の女性に対しておじさんの態度は違うものなのか、お伺いしたいです。

秋田:同じ女性でも、日本人だということで低くみられる場面は私も数多く見てきました。

浜田:どう振る舞えばいいんでしょう? 外国人に限らず、男性と一緒に営業に行くと、たとえ女性が上司で男性が部下であっても男性に話しかける人って日本の場合は多いじゃないですか。そういうときに「交渉相手は私なんだ」っていうのをどう切り返せばいいと思いますか?

「女性活躍」は気持ち悪い?

秋田:「仕方がないか」と思ってしまうことが負けなんだと思うんですけど、私はもうあまり気にしていなくて。ただ、発言や視線、振る舞い、話す内容など、要所で「自分がこの場をリードしている」という空気感はちゃんとつくります。

そうやっていくと最初は私のことを軽んじていたであろう相手も、徐々にその空気に飲まれていくものです。「リーダーはこの人で、この人の話をちゃんと聞かなければこのミーティングは成立しない」と相手に思わせる。これは年齢を重ねたからできるようになったことではありますけどね。

どうして女性だけがそこまで考えなければいけないの? とも思いますけど、それをやっていくことは自分のスキルアップにもつながります。ぜひ意識してみてほしいですね。

上野:海外の日系企業は外国人の女性社員からセクハラ訴訟を受けて、セクハラは高くつくことを学習しました。だから「外国人の女性には気を遣わなければいけない」という教育を受けている。一方で日本の女性になぜ配慮をしないのかというと、同じ日本人だからと甘えが出るためです。そして、日本の女性がそれを受忍しているからです。

石井:この方法が正しいとは思っていないですけど、私や周りの子は「Twitterに書かれるからセクハラしない方がいい」というイメージを持たれているので、分かりやすいセクハラを受けることはあまりないですね。でも、何でこんなことをしなきゃいけないのかは分からないし、そういう振る舞いをしない人が悪いとも全く思わないです。

浜田:私が管理職になってよかったと思うことの一つは、男性がリスペクトをしてくれるということ。日本はものすごい階級社会なんですよ。「長」と付く役職の人に男性は弱いですから、管理職になった途端、一人前として扱ってくれるようになった人もいました。周囲から舐められない立場に実際に就くとまた、自分にとって新しい視界がひらけるようになると思いますね。

「女性活躍」は気持ち悪い?

取材・文・構成/天野夏海 写真提供/『MASHING UP

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アドビ バイスプレジデント
秋田夏実さん

東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。マスターカード日本地区副社長、シティバンク銀行デジタルソリューション部長などの要職を歴任。2017年4月に金融業界を離れ、アドビに入社。18年より現職。現在はマーケティングのVice Presidentとして、アドビのクラウドサービスのマーケティング、デマンドジェネレーション、広報・ソーシャルメディア、ブランディングを含むコミュニケーション戦略といった日本でのマーケティング活動のすべてを統括。夫と共に3人の子供(2男1女)を育てながら日々奮闘

ブラスト代表取締役社長
石井リナさん

新卒でオプトへ入社し、Web広告のコンサルタントを経て、SNSコンサルタントとして企業のマーケティング支援に従事。初のInstagramマーケティング書籍となる『できる100の新法則Instagramマーケティング』(インプレス)を共同執筆するなど、デジタルプロモーションを中心にセミナー講師としても活動を広げている。現在は起業し、女性向けエンパワーメント動画メディア『BLAST』の立ち上げ、運営を行う。日本を代表し、世界を変えていく30歳未満の30人を表彰するForbes 『30 Under 30』にも選出された

社会学者・東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長
上野 千鶴子さん

富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1993年東京大学文学部助教授(社会学)、1995年から2011年3月まで、東京大学大学院人文社会系研究科教授。2012年度から2016年度まで、立命館大学特別招聘教授。2011年4月から認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。専門は女性学、ジェンダー研究。この分野のパイオニアであり、指導的な理論家の一人

Business Insider Japan 統括編集長
浜田敬子さん

1989年朝日新聞社入社。前橋・仙台支局、週刊朝日編集部などを経て99年からAERA編集部。女性の働き方雇用問題、国際ニュースを中心に取材。副編集長、編集長代理を経て2014年から編集長。16年5月から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして新規プロジェクトの開発などに取り組む。『働くと子育てを考えるWORKO!』『Change Working Style』などのプロジェクトを立ち上げる。テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』の水曜コメンテーターなども務める。著書に『働く女子と罪悪感 「こうあるべき」から離れたら、もっと仕事は楽しくなる』(集英社)

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