【菊間千乃】女子アナから弁護士へ。事故をきっかけにリハビリを経てゼロからの再スタート

弁護士になった今、やっと明るい将来が見えてきた
菊間さんの試験勉強の様子やその間の葛藤に関しては、著書『私が弁護士になるまで』に詳しく記されている。
仕事を辞めてからは1日15時間もの時間を勉強に費やし、志を同じくする仲間と励まし合い、切磋琢磨し合う。その日々の描写は淡々としているが、どこか息苦しくなるほどの緊張感が伝わってくる。
そんな勉強を経て、菊間さんは2度目の挑戦で司法試験に合格。現在菊間さんは、主に企業法務を扱う法律事務所で、弁護士としての第一歩を踏み出している。
「この年になって毎日学ぶことばかり」と晴れやかに笑う表情には、一点の曇りも見られない。
そして、菊間さんが弁護士へのキャリアチェンジという挑戦を経て得たものは、自信と出会いと高揚感だった。
「勉強を頑張った6年間は、やはり自分の自信につながっていますね。この自信は、ケガから復帰した過去の自分が勉強中の自分を励ましてくれたように、この先の自分を励ましてくれると思います。
そして、出会い。『人は財産』と言いますが、前職の人脈は切れることなく、今は法曹界にも何でも話せる方々がたくさんいらっしゃいます。定年がない世界ですから、現役の大先輩から直に学ぶこともたくさんあり、とても刺激を受けています」
また、菊間さんにとって最大の収穫は、高揚感だという。
「常に10件ほどの案件を抱えています。一つとして同じ事件はありません。まだまだ一人前には程遠い私ですが、ものすごい勢いで成長しているのを感じることができるんです。
だから今は、お仕事が楽しくて楽しくて仕方がない。毎朝事務所に出勤できるのが嬉しくて、つい早起きしちゃうんです」
5年後には、元アナウンサーということを忘れられるくらい弁護士として胸を張って立っていたいと語る菊間さん。そして10年から15年後、いつになるかは分からないけれど、いつかは独立したいという夢を抱いている。
小さな一歩で周囲が変わる。そんな体験から得た自信

司法試験に挑戦という壮大な経験を経て、新たな将来へと踏み出した菊間さん。もし何かに挑戦したいという人が身近にいたら、どんな言葉をかけるのだろう?
「自分が動かないと、見える景色は変わらない。でも、ちょっと動くだけですごく変わる。だから、いろんな景色を見たいという好奇心があるのなら、動いてみたら?と伝えたいですね」
そう言った菊間さんは、「でも……」と言葉を継いだ。
「新しい一歩って、会社を辞めるほどの大きな一歩である必要はないと思うんです。現状に『嫌だなぁ』と文句を言う前に、自分からちょっと動くことで周囲は変わる、そうすると気持ちもワクワクしてくるっていうことを感じてほしいなと思います」
そして菊間さんは、「ほんの小さなことだけど」と前置きし、自らの経験を語ってくれた。
それは、菊間さんが前職にいたときの出来事。
当時、何度挨拶しても彼女を無視をするスタッフがいた。あるとき菊間さんは、無視されると分かっているから、その人の側を挨拶をせずに通り過ぎた。その瞬間、ひどい自己嫌悪に陥ったという。
「それで思い直したんです。挨拶を無視する向こうが悪い。自分はやるべきことをやろうって」
それから菊間さんは、その人から逃げることなく、顔を合わせれば挨拶をするということを繰り返した。しばらくして菊間さんがいつも通り挨拶をすると、そのスタッフがぽつりと言った。
「冷蔵庫にシュークリームが入ってるから、食べれば?」
「その言葉を聞いた瞬間、『勝った』って思いましたね(笑)。実はその人とは、今では仲良しなんです。私のこと、生意気そうなヤツだと思って嫌いだったんですって」
やるべきことをやっていれば、周囲は変わっていく。もし変わらなくても、正しいことをやっていれば気分がいい。この小さな挑戦によって、菊間さんは小さな自信を得ることができた。
笑顔という“武器”とともに。ハッピーな渦を巻き起こしていこう!
外に飛び出て環境を変えることだけが、挑戦ではない。
職場の壁や嫌なことに対して文句を言うのではなく、「じゃあ、自分はどうすれば楽しくなるだろうか?」と考えるのも大切な“Another Action”だと菊間さんは言う。
「この状況を変えるために自分は何ができるのだろうと前向きに考えて行動し、自分自身が幸せで、キラキラと輝いていることが小さな一歩だと思います。
楽しくしていると、周りもつられて楽しくなっていきますよね。そんなハッピーな渦を、いろいろな職場でたくさんの女性が巻き起こしていけば、環境はずいぶん変わるんじゃないかと思うんです」
笑顔は人を和らげる。それはある意味、大切な“女の武器”だと菊間さん。男性弁護士ではなかなか崩せない心の壁も、女性弁護士の笑顔ひとつでゆるむことだってある。
そんな菊間さんは、マスコミに身を置いていた経験を踏まえ、ゆくゆくは法曹界と報道の世界という2つをつなぐつなぎ役も担っていきたいと語る。
「法曹界には、報道に不信感を抱いている方も少なからずいらっしゃいます。逆にマスコミは、法曹界の大切な活動を十分に拾い上げていないという面もあります。そんな2つの世界の掛け違いを解きほぐしていけたらいいですね」
「でも、まずは弁護士として一人前になることが大切」とほほ笑む菊間さん。今後どんな苦境に立ったとしても、しなやかに乗り越えていくに違いない。
定価:1260円(税込)
著者:菊間 千乃
>>菊間千乃さんの「その後」を聞いたインタビューはこちら
菊間千乃がアナウンサーから弁護士に転身後の約11年間を振り返る「欲望に向かって行動した先には、ハッピーしか待っていません」
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取材・文/朝倉真弓 撮影/竹井俊晴
『Another Action Starter』の過去記事一覧はこちら
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