「上司が正しく評価してくれない」と感じたら? 今すぐ見直すべき2つのチェックポイント
この連載では、さまざまな人生経験を積んできた『Mentor For』のメンターたちが、“豊かなキャリア”を描いていくためのヒントを後輩女性に向けて送ります
はじめまして、『Mentor For』公式メンターの岡本佐知子と申します。普段は、パナソニック i-PROセンシングソリューションズ株式会社で、人事総務担当執行役員として働いています。
今回は、これまでのマネジメント経験や、人事としての経験を生かし、「上司に頑張りが伝わらない」という相談者の方のお悩みに答えてみたいと思います。
先輩に聞きたい!今回の相談内容
「上司の評価に納得がいかない」
半期ごとに上司との面談があるのですが、私なりに頑張っていたことが上司に伝わっていないようで、評価に納得がいきません。
自分のことをアピールするのが苦手なので仕方がないかな、と思う半面、もっと頑張りを見ていてほしいという不満もあります。
自分の頑張りを上手く伝える方法が知りたいです
自分なりに努力して頑張ったのに、上司には伝わっていなかったんだ……。もっと評価してもらえると思っていたのに…………。
上司との面談で、想像していたのと違った評価を受けたときはショックですよね。私も、企業で20年近くキャリアを積んできて、若いころに同じように感じた経験がありますので、その気持ちはとてもよく分かります。
こうした悔しい気持ちを持たれているということは、Bさんは一生懸命に仕事を頑張っていて、もっと成長したい、もっと活躍したい、もっと評価されたい、と思っているのですよね。
その気持ちや努力がどうしたら報われるか、一緒に考えてみましょう。

私は、今は管理職としてメンバーの評価をする立場になっていますが、この立場になって初めて「評価する側」の視点を理解できました。
この視点を若いころに理解できていたら良かったのに……と常々思っていますので、今日はそれをシェアしますね。
ポイント1:「評価のポイント=自身への期待値」であることを認識しよう
上司にとって、それぞれのメンバーの評価の良し悪しを決めるポイントとは何でしょうか。
それはズバリ、企業組織の中で、そのメンバーに期待されている役割や成果をどの程度満たせていたのか(または、上回れていたのか)、なのです。
おそらくBさんの会社でも、毎年、会社としての目標が定められていると思います(もし「会社」という単位が大き過ぎて想像しづらい場合は、Bさんが所属する「部署」や「チーム」と読み替えてください)。
会社の目標を達成するために、Bさんに求められている役割は何でしょうか。そして、その役割をどの程度果たせているでしょうか。
このようにお聞きすると、「できている気がする」と思うかもしれませんし、もしかしたら、「そういえば、そもそもどんな期待があるのか、はっきりとは分かっていないな」と思うかもしれませんね。

自分の頑張りを認めてもらい、評価してもらうには、評価者である上司と同じ目線に立つ必要があります。
上司は会社(または部署)の目標をどのように設定しているでしょうか。そして、それを達成するために、Bさんにどのような貢献を求めているでしょうか。
もしもそれが明確ではないと感じるなら、まずはそれを上司に確認してみましょう。なるべく具体的にイメージできるように確認できると良いですね。
Bさんに期待されている役割の「内容=やること」だけではなく、例えば、「考えられる最高の成果」とはどんな成果なのか。逆に、「最低限、これだけは」、というレベルはどの辺なのか。
上司はBさんに何をいつまでに終えてほしいと思っているのか。それをどんなふうに進めてほしいと考えているのか(どんどん周りを巻き込みながら? それとも、まずは自分で考えてみてほしい?)。
あるいは、仕事の進捗をどのように上司に報告するのが良いのか、などなど……。
評価は、最終的には自分ではなく、他人(上司)がするものですよね。
なので、自己評価と上司からの評価がずれていると感じる場合は、まずは上司としっかり話し合いをして、上司が本当に期待していることは何かを確認してみましょう。

ただ、上司にそんなことを聞いていいのかな、自分から声をかけづらいな……、と思うかもしれませんね。
私もキャリアの初期には、上司や先輩にどのように相談したら良いか分からずに、自分への期待値が曖昧な状態でただただ過ごしてしまった時期もありました。
あの時、率直に上司と話し合えていたら良かったのに、と気付けたのは、ずいぶん後になってからのことです。
上司とこうした話し合いをすることで、「メタ認知」のスキルが鍛えられていきます。
メタ認知とは、目の前の仕事や作業をしている自分のことを、俯瞰して見てみるスキルです。あたかも幽体離脱したかのように、天井のあたりから自分自身見ている状態、とったイメージです。
そこから、「自分」はどんなふうに見えますか? 上司と同じ認識を持って仕事ができている? 周りとのコミュニケーションはしっかりとれている?
「メタ認知」力が向上することで、あなた自身の成長も加速していきますよ。頑張っているメンバーを見ると、上司としても、応援したい気持ちになります。
一方で、どんなに頑張っていても、その頑張りの方向性が、会社の期待と違っていると高い評価を付けることはできない。上司としてもつらいところです。
なので、上司にとっても、メンバーが自分から「私は私への期待をこのように認識していますが、合っていますか?」と確認してくれるのはとてもありがたいことなのです。

上司に期待値をしっかりと確認してみたら、もしかしたら、それはBさんがやりたいこととは違った、ということもあるかもしれませんね。それも一つの気付きです。
私は人事職として組織でいろいろな方を見てきて、仕事へのモチベーションのあり方は本当に人それぞれだなと感じています。
自身が所属する組織に貢献できることが大事で、組織としての一体感が持てれば仕事内容にはそれほどこだわりがない人、優秀な上司や先輩がいるなど、自分自身が成長できる環境で仕事ができることが大事な人、あるいは、自分が希望する職種でスキルアップやキャリア形成ができるということがとても大事な人……。
あなたにとって大事なことは何でしょうか。
仕事においては、Will(やりたいこと)、Can(やれること)、Must(求められていること)の重なりを広げていくと満足感が高まると言われています。
上司とMust(求められていること)をしっかりと確認しながら、一方で自身のモチベーションの源泉を内省し、Will(やりたいこと)やCan(やれること) との重なりを広げていきましょう。
その上で、今の環境ではどうしてもこの三つが重ならない、ということであれば、重なる環境を探すことも選択肢の一つかもしれません。
ポイント2:上司への報連相は、自分からしっかり行う
もう一つのポイントは、「報連相(ホウレンソウ:報告・連絡・相談)」をしっかりと行うことです。
報連相は、新入社員研修でよく出てくる言葉ですよね。でも、恥ずかしながら、私自身が報連相の重要性を本当の意味で認識できたのは割と最近のことでした。

私は一人部署のマネージャーとしてキャリアを積んだ後、部下マネジメントの経験がほとんどないまま、別の会社の十数名の人事部門の長として転職することになりました。
その時はとても不安だったので、ある会社の人事部門長の方に、「人事部門のリーダーとして成功するためのアドバイスをください」とお願いしたことがあります。
その時にいただいたアドバイスが、「まずは上司である社長に自分からしっかりと報連相すること」でした。
実は、それまで私自身に「上司」としての経験がなかったこともあり、報連相の重要性があまり理解できていなかったんですよね。
人事部門の責任者として着任するのだから、いちいち社長の時間を取らずに、自分でどんどん意思決定していくことが期待されているのかな、と漠然と思っていました。
でもこれが大きな勘違いで、特に信頼関係が築けるまでは、意思決定の基準が合っているかを社長(上司)とこまめに確認していった方が良い。
社長との間で、「私たちは同じ目線で意思決定ができている」という信頼関係が築けた後に、程良く報連相の頻度を少なくしていくのが正解だったのです。
私自身、「上司」の立場になってみて、報連相をしっかりと自分からしてくれるメンバーは非常にありがたい存在です。
「上司」は、メンバーよりも幅広い領域について目を配って考えなければならないので、一つ一つの案件について、「あれ、今どうなってる?」と聞いて回るのは大変です。
この人は自分からちゃんと報連相してくれる、と思えれば、その人が担当している領域については、安心して任せることができます。

普段から、業務の報告や連絡をまめに行い、自身が担当している仕事については、どのように進めていけばいいか、なるべく早いタイミングで積極的に相談してみましょう。
「2割報告」と言って、仕事の2割が終わった時点で、仕事の進め方の方向性が合っているかを上司に相談することで、仕事の手戻りが大幅に減少します。
「部下」の立場からすると、あまり報連相をしすぎるのも、忙しい上司に迷惑だと思われないかな? と思うかもしれませんね。こんなときはまた、「メタ認知」的対話を登場させてください。
上司に、「私の報連相の頻度はどうですか? 報告や相談の仕方で、変えた方が良いと思うところはありますか?」と率直に聞いてみてはいかがでしょうか。
報連相の精度が良くなれば、上司は自然とそのメンバーの仕事ぶりをよく理解するようになります。
結果として、「私、頑張っています」というアピールをしなくても、自然とあなたの頑張りが伝わるようになりますよ。

【この記事を書いた人】
岡本佐知子
「Mentor For」公式メンター。パナソニック i-PROセンシングソリューションズ株式会社 人事総務担当執行役員。過去には、外資系生命保険会社、戦略コンサルティング会社、消費財メーカー、産業材メーカーにて勤務し、本年2月より現職。経営者やキャリア女性への社外メンターとしても活動中。1児の母
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