コロナ禍に“転職を繰り返す”リスクが増大。短期離職を防ぐためのポイントとは?【キャリアアドバイザーの本音】
この連載では、今SNSで話題のキャリアアドバイザー・えさきまりなさん(@MarinaEsaki)が、長く働きたい女性のための後悔しない転職術を“本音”で伝授します!
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こんにちは。キャリアアドバイザーのえさきまりなです。
皆さんもご存じの通り、コロナショックは観光・小売業などを展開する企業を中心に、深刻なダメージをもたらしました。コロナ不況は今後もしばらく続くことが予想されており、不安を感じている人も多いと思います。
また、コロナ禍に転職活動をしている・これから始めようとしている人の中には、「安定して長く働ける職場に入社したい」と考えている人も少なくないでしょう。
では、入社後すぐに退職せざるを得ない状況に陥らないために、転職者は何に注意して会社選びをすべきなのか、解説したいと思います。
経営不振の会社に入社するリスク
最近は、転職者の方から「経営不振の会社には入社したくない」という声をよくいただきます。誰しも、今転職するなら成長企業に入りたいと思うものですよね。
では、この時期に「経営不振の企業に入社するリスク」は何だと思いますか?
業績の伸び悩みによる経営破綻やリストラなどは大きな懸念事項ですが、加えて「社内環境の悪化」による短期離職も避けるべき事態です。
厳しい状況に置かれたときほど、その企業の経営者の体質やカルチャーが浮き彫りになるもの。
例えば、経営不振に陥っていたり、破綻寸前の企業の場合、極端な「業績重視」になるケースが多く見受けられます。突如厳しい業績ノルマや過重労働を強いるようになったり、上層部からの厳しい叱責が飛んだりと、心理的安全性に欠ける職場環境になることが多いのです。
当然ながら、従業員の満足度は決して良いものにはならず、自主退職者が続出。冒頭で挙げたように、中途入社したはいいものの、短期離職に発展してしまうかもしれません。
その結果、次の転職先がなかなか決まらなくなり、生活に困ってしまうことが最大のリスクなのです。
短期離職→転職のループに陥らないために、避けたい3つの失敗例
では、短期離職を繰り返すことになってしまうような転職を避けるためには、何に気を付けたらよいのでしょうか。
これまで私が実際に見てきた、よくある失敗例を3つ紹介します。
①ネガティブな動機から「未経験の仕事」を選ぶ
「新しい仕事に挑戦したい」という意欲は素晴らしいです。しかし、これまでとは180度異なるような仕事に就いた場合、なかなか成果を出すことができず、転職後に苦しむことも少なくありません。
さらに、万が一その仕事が自分に合わなかったり、適性がないことが判明した場合、次の転職がますます難しくなってしまいます。
もちろん、新しく挑戦する仕事でも、「どうしてもやってみたい」と思える仕事で、その仕事に就きたい目的・理由がしっかりしていればよいのですが、中には「前の仕事が合わなかったから」「不満があるから」というネガティブな気持ちの裏返しで職種チェンジをしようとする人もいます。例えば、接客販売の仕事が嫌だから、接客の要素がない事務職へ……という具合です。
他の職種が楽しそうに見えても、表面的な部分しか見えていない場合もありますし、実際にやってみるとどんな仕事にもいい面・悪い面があり、それをどう感じるかは皆さん次第です。
ネガティブな動機で全くの未経験職種にチャレンジしようとするよりは、これまでの職務経験が生かせる仕事を選ぶ方が、短期離職のリスクは下がるでしょう。
②「楽さ」重視で大幅なキャリアダウンをする
毎日のように長時間労働をしていたり、厳しいノルマを負っていたり、前職で肉体的・精神的に厳しい環境で仕事をしていた人に多いのが、「以前のような働き方は嫌だ」という思いから、想像以上のキャリアダウンを許してしまうこと。
例えば、営業職として働いてきた女性が、将来のライフイベントに備えて事務系のサポート業務にキャリアチェンジするケースは珍しくありません。
しかし、転職後に年収が100万円以上ダウンしたり、昇進・昇格の機会が減ってしまったり、さらには「仕事のやりがいを見失ってしまった」、という声もよく聞こえてきます。
責任から逃れたい、厳しい環境では働きたくない、楽になりたいという動機で転職すると、1~2年は楽しく過ごせるかもしれませんが、その後で壁にぶつかる時が出てきます。
一度下がった年収ベースを再び上げることはなかなか難しいですし、正社員としてバリバリ働くコースへ戻りたいときに戻るのは、今の日本では容易なことではありません。
5年後、10年後には考え方も価値観も変わっていて当然。だからこそ、一時的に“ゆるく働くこと”を感情で選ぶのではなく、30代、40代とキャリアを重ねたとき、自分がどんな状況に立っていたいかを想像しながら、キャリア選択することが大切です。
③目先の年収だけで選ぶ
例えば、現在の年収よりも100万円アップ、という魅力的なオファーを受けると、本来の転職の目的を忘れて飛びついてしまう方がいます。しかし、楽して稼げる仕事なんてありません。年収が高いということは、その分重いミッションが課せられたり、責任が伴う仕事であるということです。
本来の転職の目的が「年収を上げること」で、厳しい環境であったとしても構わない、という覚悟があれば良いのですが、「働き方を改善したい」「やりがいを重視したい」といった目的なのであれば、年収にばかり気を取られてしまうのは危険です。
転職における「目的」と「希望条件」は似て非なるもの。ですが、混同して考えている方が非常に多い印象です。
「目的」とは、転職するにあたって必ず実現したいこと。一方で「希望条件」は、可能であれば実現したい、という要素であり、絶対ではありません。
つまり、希望条件だったはずの収入につられてしまうことで、本来実現したかった転職の目的が果たされず、転職を繰り返す結果となってしまう恐れがあります。
転職を通じて、全ての希望を叶えることは困難です。何もかも理想通りの企業は実現しない、出会えたら奇跡だ、と認識しておくことが大切です。これは、引っ越し先を探すときのことをイメージすると分かりやすいかもしれません。
渋谷区、駅から徒歩5分、築浅でバストイレ別、2階以上のオートロック……と条件を付けすぎた結果、住宅情報サイトでの検索結果が0になってしまうのと同じで、企業に求めることが多すぎると、選択肢が狭まり、転職活動が難航してしまいます。
そうならないためにも、転職活動を始めたら「なぜ転職をするのか」を書き留めておくといいですよ。
【執筆者プロフィール】
えさきまりな
短大卒業後、事務職として働き、その後、二度の転職を経験。現在はキャリアアドバイザーとして年間600名以上の女性転職希望者の支援を行う。オンラインでも活動の場を広げ、「キャリアアドバイザーの本音」と題したTwitterアカウントが好評
Twitter:@MarinaEsaki
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