「キャリアの主導権は自分で握る」withコロナ時代をサステナブルに働き続けるために大事なこと

いつも真面目に、頑張り過ぎてしまう私たちだから――。コロナ禍の今こそ見つめ直したい、擦り減らない働き方、生き方を実践するヒントとは?
「SDGsという言葉を聞いたことはありますか?」――「はい」32.9%……これは、大手新聞社が今年実施した調査結果です。
SDGsとは、Sustainable Development Goals(=持続可能な開発目標)の略称で、貧困撲滅やジェンダー平等など、国連総会で決められた「2030年までに持続可能でよりよい世界を実現する」ための国際目標です。
最近では学校の授業などでも取り入れられているので若い世代ほど認知度が高く、別の調査では高校生・大学生の5~6割が認知しているという結果も。
Woman type読者の方の中にも、「聞いたことがある」人は多いのではないでしょうか?

SDGsで大切にされているサステナビリティ(持続可能性)の考え方は環境や資源に関連して使われることが多いですが、実は皆さんにとって身近な「働き方」においても大切な考え方です。
私が共同代表を務めるWarisでは2019年から「サーキュラーHR」というプロジェクトを展開しています。
これはヒトと「はたらく」のあり方を再構築し、循環型社会をつくっていくためのプロジェクトで、具体的にはメディアやイベント運営を通じて、「はたらく」領域におけるサステナビリティをどうつくっていくかを考え、発信しています。
そしてこの「サーキュラーHR」において、私たちが大切にしているコンセプトが下の5つです。

こちらの5つのコンセプトをベースに「withコロナ時代のサステナブルな働き方」に大切なポイントをお伝えしていきます。
キャリアの主導権を自分が握る!
まず大切なのは「キャリアの主導権を自分が握る」意識を持つことです。先行き不透明なWithコロナの時代、そして人生100年とも言われる長寿化の時代を私たちは生きています。
働く期間も長期化しています。年金の支給開始年齢も段階的に引き上げられてきていますし、健康なのであれば70歳くらいまでは働くつもりでいた方がよさそうです。
多様な選択肢の中からその時の自分にとってより良いものを選び取っていくこと、それが何より大切です。キャリアの主導権を会社任せにせず、「自分が握る」感覚です。
働き方は正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイト、フリーランス、会社経営など本当に多様な選択肢があります。
どれがいい、悪いということではなくて、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分がどうありたいかを考えた上で自分にフィットする生き方・働き方を選ぶことが求められます。
しかも今はこれらの働き方を複数組み合わせるのも十分可能です。
社員や派遣社員として働きながらフリーランスという人がいたり、会社経営をしながらフリーランスという人もいます。今はない働き方の形態もこれからどんどん生まれてくるかもしれません。
自分らしく働ける環境を自分でつくる

私自身は会社を辞めてフリーランスとして独立した時に、「こういう働き方がしたかったんだ!」と強く感じました。
フリーランスって、いつどこで誰とどんな仕事をするのか、決めるのは自分。自己裁量が大きいからこそ、そこにやりがいも生まれます。こういう自由度の高い働き方が私はしたかったんです。
ですから、仲間と会社を創業してからも、「自分たちが自分らしく働ける環境」を大切にしてきました。
そのため、①全社員リモートワーク、②コアタイム2時間だけのフレックスタイム制、③副業兼業OKなどの人事制度をつくって実際に運用してきました。
もし、会社に勤めていて、「自分らしさが実現できない」ということであれば自分らしく働けるように周囲に働き掛けるのも一つの手。
多様な働き方を促進するプロジェクトを自社に立ち上げてもいいし、「経験したい仕事」を周囲や上司にアピールするのもいい。自分らしくいられる環境を、自分でつくっていきましょう。
今いる会社ではとてもそんな動きは難しい……そう感じるのであれば、転職や独立など、主体的に環境を変えるのも方法です。
サステナビリティとは持続可能性。今の自分は自分らしく働けているのか。この先、自分らしく仕事を続けられそうか。定期的に見直しつつ、自分からアクションする視点を大切にしていきましょう。
学び直しで自分をアップデート!

サステナブルに働くときに大切な二つ目の要素が「学び直し」です。学び直しとは主に大学や専門学校などで社会人が新たな知識やスキルを学び直すことを指します。
人生100年時代、働く期間も長期化する中、テクノロジーの進歩も速いですから時代の変化にあわせて自分に必要な学びを行って自分自身をアップデートし続けることが重要です。
内閣府の資料によれば、自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収変化の差額は、1年後には有意な差は見られませんが、2年後では約10万円、3年後ではなんと約16万円にも……!
報告書では「自己啓発の効果はすぐには年収には現れないが、ある程度のラグを伴いつつ効果が現れると考えられる」と分析されています。
就業確率を高める効果についても、非就業者が自己啓発を実施すると、就職できる確率が、10~14%ポイント程度増加することが示唆されています。
技術革新に伴い必要性が高まる分析・対話型業務(=専門性の高い職業)への移動に関しても、自己啓発は1年後から有意に就業確率を高める効果を持っていることが示唆されています。現在の職業が定型的な仕事であっても、自己啓発を行うことで非定型の仕事に就ける可能性が2~4%ポイント増加しています(下図参照)。

(内閣府「平成30年度 年次経済財政報告」より)
気になる自己啓発の内容ですが、①通学(大学・大学院、専門学校、公共職業訓練など)、②通信講座(通信制大学を含む)の受講、③その他(書籍での学習、講演会・セミナー、社内の勉強会等)の3つを比較して見ると2年後における年収への効果をみると自己啓発の内容によらず有意な結果となっていて、通学が約30万円と最も高く、通信講座が約16万円、その他が約7万円と続いています(下図参照)。

(内閣府「平成30年度 年次経済財政報告」より)
いずれも「学び直し」が年収や専門性のアップに効果的であることがはっきりとわかるデータになっています。
「越境体験」で自分の強みを磨く

最後にサステナブルに働くためのヒントとしてお伝えしたいのが「越境体験」です。
「越境体験」とは「現在の自分が置かれている環境とは違う環境に身を置くこと」で、具体的には副業・兼業(パラレルキャリア)や外部での学び直しを指します。
以前にWoman typeさんのインタビューでもお話ししたことがあるのですが会社とは異なる環境に身を置くことで、そこで出会った人たちから新しいフィードバックを得て、自分の強みに気付いてさらに磨くことができます。
これは私自身の経験談なのですが、会社員として働いていた頃にとあるNPOでプロボノをやらせてもらったんですね。そこで営業や広報を担当させてもらったおかげで、営業資料の作り方も学べたし、広報スキルも身に付いた。
それらはすべて起業した時に役立つ大きなポータブルスキルになりましたし、プロボノを通じて築いた人脈は起業後も私の財産になっています。
自愛と利他がサステナビリティの基本
いかがでしたか? 「サステナビリティとは自愛と利他」とは、Warisで働くあるメンバーの言葉ですが、まったくその通りだと思います。
生き生きと働き続けるために自分を大切に、そして周囲とゆるやかに連携しながら自分らしく力を発揮できるかたちをつくっていきたいですね。

【この記事を書いた人】
Waris共同代表・国家資格キャリアコンサルタント
田中美和
大学卒業後、2001年に日経ホーム出版社(現日経BP社)入社。編集記者として働く女性向け情報誌『日経ウーマン』を担当。フリーランスのライター・キャリアカウンセラーとしての活動を経て2013年多様な生き方・働き方を実現する人材エージェントWarisを共同創業。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」理事
『ニューノーマル時代のLive Your Life』の過去記事一覧はこちら
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