「メンヘラという言葉は、もう使わない」大木亜希子が話題の海外ドラマに見た、現代女性が幸せに生きるヒント
コロナ禍によってさまざまなパラダイムシフトが起きた2020年。孤独と不安が膨らむ情勢の中で、仕事やキャリア、パートナーや家族との未来について、改めて向き合った人も多いだろう。
そこで今回は、今後の「自分らしい生き方」に迷う女性を導き元気づけてくれるような、海外ドラマ3作品を紹介したい。
海外ドラマ専門チャンネル「スーパー!ドラマTV」で放送される『LOVE LIFE』、『ケイティ・キーン』、『ゾーイの超イケてるプレイリスト』は、いずれも働く女性が主人公のアメリカで話題のドラマ。
上記の作品をいちはやく視聴し、「それぞれの主人公に、たくさん共感できるポイントがあった」と話すのは、今年7月に初の小説『シナプス』を発表したライターの大木亜希子さんだ。
大木さん自身、小説の執筆を通じて「女性の幸せとは何か」について考えたという。
先行きの見えないこの時代、私たちはどうすれば幸せに生きられるのか。大木さんと一緒に考えてみた。
誰にも言えない「黒歴史」が、女性たちを強くする
3作品を通じて感じた主人公たちの魅力。それは、3人とも逆境や困難を経験しながらも、自分の傷と向き合い、ちゃんと立ち上がるたくましさを持っていること。そこに、今を生きる女性たちに必要なエッセンスを感じました。
『LOVE LIFE』のダービーは、現代女性が仕事と恋で経験することを全部ロックオンしているような女の子。仕事で出会ったハイスペ男性に認められたくて空回りしたり、メイクも服装も最悪のところを元カレに見られたり。どれも「それな〜!」ってことばかりで、ダービーは“以前の私”なんじゃないかと本気で思いました(笑)
昔はよくあったんですよ。身の丈に合わないハイスペ男性に恋をして、彼に見合う女性になりたくて無理して高い服を買い、彼と一緒にいるときは一生懸命いい女を演じてみるんだけど、話はまったく噛み合わない。
しかも、そうやってキラキラしているふりをしながら、家に帰ったらちょんまげ頭でカップ焼きそばを食べながら、原稿の締め切りに追われてボロボロになっているという時期が(笑)
周囲に触発されて、ダービーも「私はカメラマンになるんだ」と躍起になりますが、これもあるあるですよね。
私もライターになりたくて、誰にも見せられないようなポエムをスマホに書き留めたり、匿名で小説サイトに投稿してみたり。思い出すだけで顔から火が出そうな黒歴史を、20代のうちにいっぱい経験してきました。
でも、30代を迎えた今振り返ってみると、全部が正解だったと思うんです。あの頃つきまとっていた、先の見えない真っ暗な街道を一人で歩いているような不安や孤独感も、全部が正解だった。
「黒歴史」なんて言い方をしましたけど、黒歴史はたくさん経験しておいた方がいいって思います。なぜなら、誰にも言えずに墓場まで持っていくような黒歴史の数々が、今の私の糧になっているから。
ダービーは何度も失恋を繰り返しますが、時にそれと引き換えにしながら自分自身のキャリアを築いていきます。きっと彼女の中には、今まで関わってきた男性たちと対等な立場になりたい、恥ずかしくない生き方をしたいという想いがあった。その見返したい気持ちが、彼女が自分の生き方を見つける原動力になったんだと思うんですよね。
どんなに相手が社会的地位を持っていても、世間から「素敵」と言われるような人でも、自分に合わないのであれば一緒にいても良い影響はありません。つまずいたり、傷ついたりしながらも、自分はこれだというものを見つけていくことが、幸せへの道のりなんだと思います。
女社会を自分らしく生き抜くコツは、“本音”を語ること
それは、『ケイティ・キーン』のケイティも、『ゾーイの超イケてるプレイリスト』のゾーイも同じです。
高級デパートを舞台に、女性同士の足の引っ張り合いにも負けず、プライベートを楽しみながら夢の階段を駆け上がっていくケイティは、同性から見てもすごく爽快。ダービーが共感なら、ケイティは憧れの対象ですよね。
ケイティの上司のグロリアのように、嫉妬心から後輩を蹴落とす年上女性って、職場にもいると思います。私もアイドル時代、年上の先輩とどう付き合っていくか気が狂いそうになるほど考えました(笑)
そこで出した私の答えは、常に本音で向き合うこと。女性同士ってお世辞を見抜くのが怖いくらいに上手いですよね。だから、心にも無いお世辞で取り繕ったって余計に嫌われるだけ。
それに、お世辞ばっかり言っていると、うわべの関係は築けても、自分の個性は出せない。つまり、自分の魅力を周りの人に認めてもらうこともできません。怖い年上の先輩に嫌われるより、そっちの方が重大なリスクです。
だったらケイティのように、自分が正しいと思っていることは、たとえ目上の相手でもちゃんと伝えないと。
何かチャンスを掴みたいなら、自分はこれだけの能力がある、これだけの実績を積んできたと自信を持ってプレゼンできなきゃ、これからの時代、あっという間に潰されてしまう。丸裸で生きることの大切さを、ケイティから感じましたね。
『ゾーイの超イケてるプレイリスト』のゾーイは、父親の病気という重い現実を背負いながら、それでも前を向いて生きていく姿に共感しました。
最初は絶望しているゾーイが、父親との関係性の中から希望を見出していく。そこに感動があるんですよね。音楽も素敵で、パワーをもらいました。
ダービーも、ケイティも、ゾーイも、いろんな挫折を経験しながら幸せを見つけていく。その姿に自分が重なるから、どの作品もつい入り込んじゃうんだろうなという気がします。
弱さも情けなさも。隠さず自己開示する
私たちの人生にも、挫折や困難はつきもの。特にこの2020年は、コロナ禍という逆境に誰もが翻弄された1年でした。
ただ、私自身のことをお話しすると、そこまでツラい思いをしたという感じではないんです。予定していた読書会の開催が危ぶまれるなど、仕事面でのピンチはあったけど、いち早くオンライン読書会に切り替えたり、空いた時間で新しい仕事の企画を考えたりと、自分なりにポジティブに乗り越えることができました。
そんなコロナ禍を経て気付いた、私たちがこれからの時代を幸せに生きるために必要な能力は三つ。
一つ目は「適応力」です。私がコロナ禍に上手く適応できたのも、かつて人生に詰んだ経験があったから。
アイドルからライターに転身し、自分のことをデキる女性と思い込んでいたら、いきなり病気になって、何もかもを失ってしまった。
あそこで一度底を見ていなかったら、コロナ禍でもっとパニックになっていたと思う。恥も外聞も捨てたあの頃の経験が、私を強くしてくれました。
二つ目が「正しい自己開示力」。私たちがこんなに息苦しく感じるのは、言いたいことが言えないから。自分らしく幸せに生きるためには、もっと自分を開示していくことが必要です。
いいんです、やらかしたなと思ったら、やらかしたって素直に言えば。もうSNS映えなんて気にする時代は終わりました。
いいねの数を競ったって幸せになれないことくらい、もうみんな分かっている。だから、「比べ合い地獄、ツラかったよね」ということをちゃんと開示できる空気を、今回のドラマような作品や私たちがつくっていけたらいいなと思います。
私は「メンヘラ」という言葉はもう使わないようにしているんです。なぜかというと、傷付いた心を自虐的なフレーズで形容してしまうと、余計に自分を傷付けることになるから。
私たちは、もっと自分たちのことを大切にしてあげた方がいい。弱いところも、情けないところも、正しく自己開示できる方法を身に付けることは、これからの時代のトレンドになる予感がしています。
そして、三つ目が「自分でお金を稼ぐ力」です。
私はずっとハイスペ男性と結婚することが女の幸せだと思っていました。でも今は「結婚してもしなくてもどっちでもいい」と心の底から言えるようになった。そういう気持ちになれたのも、自分の幸せを“自炊”できるようになったから。そのために必要なのが、自分でお金を稼ぐ力なんです。
自分で仕事をつくる力さえあれば、どんなに世の中が激変しようと、万が一会社が潰れようと、食べてはいけます。そしてその自信が、自分を強くしてくれる。
つい男性に寄りかかってしまうときって、自分が弱っているときなんですよね。でも、そうやって誰かに寄りかかる生き方をしていたら、相手との関係が断ち切れた瞬間、自分で自分を肯定できなくなる。
生きていれば、孤独な夜は必ずやってきます。私も「今彼氏が自分にいて、抱きしめてくれたらどんなに楽か」って何度も思いました。だけど、そこで歯を食いしばってでも孤独に耐え、粛々とスキルを磨くことで、自分でお金を稼ぐ力が身に付くんです。
人は成功した部分しか見ないから、華やかな場所にいる人を見ると、つい羨ましくなります。でも、みんなそうやって孤独な夜を乗り越えてきているんですよね。歯を食いしばった夜が、自分を築く。そこで手に入れたキャリアは、絶対に自分を裏切りません。
30代になって知った、“欲しがらない”生き方
こんなことをエラそうに言っていますが、私もまだまだいろんなことに悩んでいる最中。それでも、20代の頃に比べたら、自分のことを認めてあげられるようになったと思います。
最後に、自尊心がズタボロだった私が、少しでも自己肯定感を高めるために実践していることをシェアしますね。
一つは、「人への礼は、その日のうちに形にして返す」こと。私は常に鞄に便箋と封筒を入れておいて、誰かに何かをしてもらったら、すぐにお礼状を書いて送るようにしています。
例えば、ある時、林修先生が私の本を読んでくださったことを知って。うれしくて、すぐにお礼状をお送りしたんですね。そしたら、先生が番組で私の本を取り上げてくださったんです。
私は「本を読んでくださって嬉しい」という思いで動きました。でも、それが結果的にチャンスに繋がった。
あの時、私の手紙を読んでくださった林先生のことを今も人生で一番の恩人だと思っています。
人とのネットワークを持続するには、感謝の気持ちが大事。その感謝の気持ちも、25歳までは思うだけでした。でも25歳を過ぎた頃から、気持ちは形で表すのがマナーだと思ったんです。だから、何かしてもらったときや誰かの誕生日には、欠かさずに手紙を送るよう習慣付けています。
そしてもう一つが「手柄を自分のものにしない」こと。私の書いた『アイドル、やめました。』(宝島社)という本は、ありがたいことに三度も重版がかかりました。その時「私ってすごいじゃん」って一瞬調子に乗りそうになったんですね。
でも、よく考えたら、あの本は取材を受けてくれた元アイドルの女の子たちがいたから書けた本。私は原稿を書いただけで、すごいのは自分を開示してくれた女の子たちです。だから、重版のお礼に、取材に協力してくれた女の子たちにプレゼントを贈りました。そうしたら、何だかすごく気持ち良かったんです。
20代の頃は、とにかく自分が目立つことが全てでした。だけど、30代に入って少しずつ認められたい欲が落ち着いてきて、人に感謝すること、それによって周りが喜んでくれることで自分が満たされるようになりました。まだまだですけど、欲しがらない生き方というものが少しずつ分かり始めてきました。
幸せが何かなんて、自分の状況や時代によってさまざま。これからも、手にしたつもりの幸せを見失ってしまうことがあるかもしれません。でも、どんなときもちゃんと自分の足で立ってさえいられれば、ブレることも迷うこともないはず。
自力で立って歩んでいけたら、たとえどんな時代が来ても私は私の幸せを自炊できる気がします。
取材・文/横川良明 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)
【プロフィール】
大木 亜希子(おおき・あきこ)さん
1989年8月18日生まれ。千葉県出身。2005年、ドラマ『野ブタ。をプロデュース』で女優デビュー。数々のドラマ・映画に出演した後、2010年、アイドルグループ・SDN48のメンバーとして活動開始。12年に卒業。15年から、Webメディア『しらべぇ』編集部に入社。PR記事作成(企画~編集)を担当する。18年、フリーライターとして独立。著書に『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)、『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(祥伝社)がある。
Twitter:@akiko_twins
インスタグラム:@aaaaaaaa_chan
note:https://note.com/a_chan
作品紹介
『LOVE LIFE』
海外ドラマ専門チャンネル スーパー!ドラマTVにて、2021年1月2日(土)20:00より全10話一挙放送
<ストーリー>
ニューヨークで仕事に恋に奮闘するダービー・カーターの20代を、若者ならではの様々な不安も交えながら描くロマンティック・コメディ。ストーリーの幕開けは、ダービーがニューヨーク大学を卒業したばかりの2012年。ベストフレンドで快活なサラ、サラのボーイフレンドでおおらかなジム、歯に衣着せない友達のマロリーと一緒に楽しく暮らしているダービーは、初恋から“最後の”恋に出会うまで、様々な人間関係を通して、まだ知らない自分自身を少しずつ発見し成長していく。
© MMXX Lions Gate Television Inc. All rights reserved.
『ケイティ・キーン』
海外ドラマ専門チャンネル スーパー!ドラマTVにて、2020年12月24日(木)より独占日本初放送!
[二カ国語版]毎週木曜22:00 [字幕版]毎週木曜24:00
<ストーリー>
大人気青春ゴシップ・ミステリードラマ「リバーデイル」のスピンオフ。4人のアイコン的アーチーコミックキャラクターたちが、ニューヨークを舞台に仕事や恋に奮闘する姿を描いている。確かなファッションセンスを持ち、未来のファッション界の伝説となるケイティ・キーン。スターになることを夢見てニューヨークへやってきた、シンガーソングライターのジョシー・マッコイ。ドラァグクイーンショーに出ながらブロードウェイを目指す、パフォーマーのホルヘ・ロペス aka ジンジャー。色気とコネを武器に、アトリエのオープンを目論むペッパー・スミス。魅力あふれる街ニューヨークで20代の夢を一緒に追いかける4人は、ランウェイ、レコーディングスタジオ、ブロードウェイ、社交界への挑戦を通して、キャリアだけでなく、かけがえのない友情も手に入れることになる。
© Warner Bros. Entertainment Inc.
『ゾーイの超イケてるプレイリスト』
海外ドラマ専門チャンネル スーパー!ドラマTVにて、2021年3月25日(木)22:00より独占日本初放送スタート!
<ストーリー>
毎回名曲がたっぷり流れる、元気になれる、コメディミュージカル!2019年に米NBCで放送されたコメディミュージカル。シーズン2も制作決定!
主人公のゾーイは、他人の心の内を聞くことができる能力を持っているだけでなく、その内容を歌にして表現するというキャラクター。ゾーイが働くオフィス、家、そして街並みを歩いていても、人の心の声が歌となって流れていく。最初は戸惑うゾーイだが、徐々に歌で答えていく。流れる歌は、名曲ばかり。その時のキャラクターたちの心情によって、失恋ソング、力強い歌、楽しくなる歌で表現されていく。
©MMXIX, LIONS GATE TELEVISION INC. AND UNIVERSAL TELEVISION, LLC ALL RIGHTS RESERVED.
海外ドラマ専門チャンネル スーパー!ドラマTV
「S.W.A.T.」「MANIFEST/マニフェスト」「ブラックリスト」「クリミナル・マインド」「スーパーナチュラル」など、日本初放送のヒット作や傑作ドラマが満載の日本最大の海外ドラマ専門チャンネル。
スカパー!、スカパー!プレミアムサービス、全国のケーブルテレビ、ブロードバンドTVで放送中。
Twitter:@SuperdramaTV
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