コロナ不況でリストラ加速。会社を辞めるか迷ったときに確認したい“3つの兆候”
航空、観光、小売など、コロナショックによる被害が甚大な業界を中心に、賞与カットやリストラを発表する企業が増えている。
そんな中、今いる会社の未来に不安を感じ、転職の検討を始めた女性も多いのではないだろうか。

女性の転職、採用事情に詳しいキャリアアドバイザーのえさきまりなさんは、「会社の業績が悪化したからといって、必ずしも『転職すべき』とは言い切れない。会社に残るという選択が自分にもたらすメリットにも目を向けてから、冷静に判断して」と転職者に促す。
では、今すぐ転職すべきかどうかを判断するためのポイントとは何だろうか。えさきさんに聞いた。

えさきまりな
短大卒業後、事務職として働き、その後、二度の転職を経験。現在はキャリアアドバイザーとして年間600名以上の女性転職希望者の支援を行う。オンラインでも活動の場を広げ、「キャリアアドバイザーの本音」と題したTwitterアカウントが好評 Twitter:@MarinaEsaki
コロナ不況で仕事減、リストラ不安の高まり
——コロナショック以降、どんな女性から転職相談が増えていますか?
大きく分けると、次の2つのタイプの方から相談が増えています。
まずは、自分の勤め先がコロナによって業績がダウンし、人員整理が始まったり、出社制限が入ったり、働く機会を得られなくなっている方です。
次に、今ところ会社は安定しているけれど、「世の中の情勢が不安」ということで、転職した方がよいのか相談しに来られる方。自分の身内や友人の中にリストラされた人がいたりすると、「明日はわが身」と不安になってしまうんですよね。
それで、今より安定した職に就いた方がいいのでは? と相談にいらっしゃる女性が多いです。
—— 一つ目のタイプだと、どういった業界で働いている人が多いのでしょうか?
観光業界やアパレル、化粧品関係など、サービス業に従事している女性が多い印象です。また、医療従事者の方の相談も増えています。
先日キャリア相談にいらした看護師の方は、「仕事が忙しく休みも十分に取れないのに、病院の経営が苦しく賞与も出ない。これではやっていけない」と話していました。
——いずれも、女性が多く働く業界ですよね。
その通りです。
介護医療などのケア関連の仕事や、販売関連の仕事では、その約8割が女性とも言われています。昨今のコロナ不況は、働く女性の雇用に大いに関係する問題ですね。
会社が“不健康”な時に現れる3つのサイン

——今いる会社の業績悪化を機に転職相談に来る女性が多いとのことですが、会社がどんな状態なら「今すぐ転職」していいのでしょうか?
「今すぐ転職してOK」だと思うのは、会社が次の3つのような状態にあるときです。
①労働環境が悪化し、健康的に働けない
まずは、自分が心身ともに健康的に働けない状態にある場合です。
例えば、人員整理があったりすると、完全にキャパを超えた仕事を一人で担当しなければならなくなるような事態も起き得ます。
業務量や残業時間が全く考慮されず、改善を求めても応じてもらえず体を壊してしまうようなら、我慢せず転職して良いと思いますよ。場合によっては休職という判断をするのもありですね。
②賃金未払いが続いている
よほどのことがない限り、このような事態にはならないと思いますが、賃金の未払いが続く場合はかなり危険。会社の経理担当などに問い合わせても対処してもらえないようなら、即退職してOKです。
賃金未払いは違法ですから、毅然とした態度で交渉を。場合によっては、弁護士など専門家の知恵を借りましょう。
③社員の権利を行使できない
女性で産休育休の取得を希望したら会社から退職を促されてしまった、有給休暇を取得しようとしたら欠勤扱いにされてしまった、そんな事例を相談者の方から聞いたことがあります。
しかし、産休育休も有給も、法律で定められた権利ですから、本来会社はそれを拒否することはできません。
なのに、社員が本来使える法律上の権利を行使できないような状態になっているなら、会社の状況が明らかにおかしくなっています。はやく見切りをつけて外に出る方が得策と言えるでしょう。
——会社がイリーガルな行為をしているかどうかが、分かりやすい判断基準になりそうですね。
ええ。そのような行為が一つでも起こるということは、今後も同様のことが積み重なる可能性が高いです。
業績が悪い状態になった時こそ、会社の本性が見える時です。社員を大事に考えてくれる会社かどうか、よく見て身の振り方を決めた方がいいですね。
「得難い経験」が、市場価値を引き上げることも

——では、イリーガルなことはないけれど、会社の業績が良くない場合はどうでしょう? 傾きつつある会社に、残っても大丈夫なのでしょうか?
業績が悪化している会社に残るという選択は、一般的にはネガティブな印象を持つ人が多いと思いますが、捉え方次第な面もあります。
リスクがあるのは事実ですが、実はメリットもあると思うんですよ。
——まず、リスクとは?
最初にあげられるのは、インセンティブや賞与カット、残業禁止による年収減ですね。基本給とは別のプラスアルファの収入は、なくなるものと考えてよいでしょう。
一定の収入を守りたければ、副業をするなどして仕事を増やす必要が出てくると思います。
次は、優秀な人材を筆頭に退職者が増えること。頼りにしていた人たちが会社を辞めてしまうと、精神的に不安になることがあるかもしれません。
最後は、個人査定などの評価が厳しくなること。例えば、自分の出したパフォーマンスが100だったとしても、会社の業績が悪化している場合は80や60という低い評価になることがあります。
逆に、業績が好調な会社にいれば、それが110、120で評価してもらえることがあるので、モチベーション維持にもつながりますよね。
これらのリスクを、ご自身がどう捉えるかが大事だと思います。
——意外ですが、メリットもあると。
例えば、社内で昇進できるチャンスが増えるケースはよくあります。
業績悪化の時期は退職者が増えるので、社内のポジションに空きが出ることが多い。そこに若手が抜擢されるケースです。
また、業績低迷が続く中、売り上げの改善などの難しい課題に挑戦し、逃げ出さずに向き合った経験は、大変貴重な経験になります。そこで実績を残すことができれば、あなたの市場価値も大幅に上がるでしょう。
他の人がなかなか経験できないことから学んだ知恵、そこで得たスキルを持って転職活動ができると、次の会社からの評価もずっと高くなりますよ。
また、先程リスクとして年収減をあげましたが、目先の収入が減っても「得難い経験を得る」ことを重視した方が自分の市場価値を引き上げ、生涯年収が上がるということも十分あり得ます。
会社の「赤字」は必ずしも悪いことではない

——短期、長期で得られるメリット・デメリットをよく理解した上で、自分はどうしたいのかを考える必要がありますね。
その通りです。周囲の人が退職をしているから「何となく私も辞める」というのは本当にもったいないです。
また、業績が赤字になっているからといって、それが「悪いこと」だと思い込むのも性急過ぎます。赤字報告をしている会社の中にも、健全な会社はたくさんありますから。
——「赤字=会社の状態が悪い」ことではないんですね。
もちろんです。赤字には理由がある場合が多いものです。
例えば、新しいシステムの導入など、先行投資をして計画的に赤字を出していることもありますね。
また、業績が落ちていてもそれを潔く開示している企業は健全です。次の打手を考えているなら、一時的に赤字になっても会社はすぐ潰れたりはしません。
赤字で危険なのは、会社に借金があり過ぎる場合や、売上を水増しするなど業績に関わることを隠ぺいしている場合くらいでしょうか。
——なるほど。では、自主退職をする場合と、リストラなど会社都合で退職する場合とでは、何か違いはありますか?
損得で比較するのは正直難しいですね。もらえるかどうかも決まっていない失業手当をもらうために、残る選択をするのも苦しいと思いますし。
ただ、自主退職するか、リストラで受け身で会社を辞めるかによって、気持ちの面では大きな違いは出ると思いますよ。
——というと?
リストラされたり会社が倒産するのを待ってから転職するということになると、どうしても「イヤイヤ会社を辞めることになった」、「業界が悪かったから出ざるを得なかった」といった、他責の気持ちが残る場合が多いんです。
——もしも「まだしばらくは残りたい」と思っている会社からリストラされたらどうすれば……?
それは潔く諦めて、外に出るしかないですね。リストラを拒否するのは難しいと思います。
会社都合の退職なら、同じ業界の競合他社に移るのは一つの手。今の会社の経験をそのまま生かせれば、採用されやすく、転職後も活躍しやすいでしょう。
あるいは、他の業界に一度出て、新しいスキルを身に着けた上で、また元の業界へ戻るのもあり。外の世界を見てきた自分だからこそできることが増えているはずです。
もちろん、相性が良ければそのまま他の業界での仕事を続けてもいいですしね。
不安・焦りから転職を決める前に、第三者に相談を

——コロナ禍の転職で、特に気をつけるべきポイントはありますか?
不安や焦りから転職に飛びつく人が多いからこそ、一度冷静になること。自分のやりたいことは何なのか、じっくり考えてから転職先を決めましょう。
自分が働く上で本当に大事にしたいことが転職先で叶わなければ、短期離職することになり、次の転職がさらに厳しくなってしまいます。
——急に転職しないといけなくなった人からすると、やりたいことをいきなり見つけるのは難しい気もしてしまうのですが、そんな場合はどうすれば?
第三者と話をしてみるといいですよ。プロのキャリアアドバイザーでもいいし、会社の同僚や友人でもいい。何人かに客観的な意見を聞くのがオススメです。
「やりたいこと」は人が教えてくれるものではありませんが、自分一人で考えたるよりも、他人に話をして深堀りをしてもらった方が自分の適性や本心に気付ける場合があります。
例えば、転職して接客・販売職から事務職になりたいと思っている女性がいるとしましょう。
なぜ事務職になりたいと思っているのか、その理由を紐解いていくと、実際は事務作業が好きなのではなく、土日休みが良くて、ハードな責任のある仕事をしたくないという気持ちの裏返しであることがあります。
そこに気づかなかった場合、実際に事務になれたとしても、仕事にやりがいを感じられなかったり、年収がぐっと下がってしまったり、結果的に短期で転職を繰り返すことにつながってしまいます。
——転職を考えるきっかけは不況や会社の業績悪化だったとしても、最終的には自分が大事にしたいことを叶えられる転職をすることが大事ですね。
そうですね。そして、希望が全て叶う転職をすることは誰であれ難しいので、「これさえ叶えばこの転職は成功」と言える条件は1~3つくらいまでに絞ってください。
目的意識を持って会社選びができると、入社後に後悔するリスクを限りなく減らせるはずですよ。
取材・文/高橋 有梨沙 編集/栗原千明(編集部)