IT・金融業界は採用が活発化。コロナ禍の“未経験転職”に女の転職type編集長がアドバイス【2021年版】
新型コロナウイルス感染拡大が続く中、企業の採用中止・延期やリストラなどのニュースを目にする機会が増えています。実際、総務省の調査によれば、完全失業率は増加。非正規、女性雇用の減少が目立つのが現状です(※)。
しかし、コロナ禍でも引き続き女性採用に力を入れている成長業界・企業があることをご存じでしょうか。
今回は、『女の転職type』編集長の小林佳代子が、昨今の女性採用の動向をもとに、コロナ禍に未経験業界に転職する際の注意点などを解説します。
(※)参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)12月分結果」より
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.html
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf
コロナ禍で大打撃のアパレル業界
一方、金融業界&IT業界は求人数も右肩上がり
2020年を振り返って、『女の転職type』に掲載されている求人数にはどのような動きがありましたか?
業界別に見たときに、求人数が大きく落ち込んだのは、アパレル、化粧品・ヘアケア関連、飲食業界です。
特にアパレル業界に関しては、20年4月以降の求人数は、前年(19年)比で見ても半数以下の状況が続きました。
大手アパレルメーカーのワールドによる希望退職者の募集や、若い女性に人気だったブランド『セシルマクビー』の全店舗閉店など、厳しいニュースを目にすることも多かったですよね。
ただ、その中でも単価の高いハイクラスのファッションブランドや香水・下着などのファッション関連企業では、継続的な採用が行われていたのが印象的でした。
『女の転職type』でも、プラダ ジャパンやルイ・ヴィトン ジャパンの求人が掲載されていて、たくさんの応募が集まりましたよ。
なるほど。でも、この先も販売・サービス系の仕事を続けられるのか、不安を感じた女性は多そうですよね。
はい。転職サイトのユーザーの動きを見ていると、異業種・異職種への転職を目指す方が増加傾向です。
例年であれば、販売・サービス職の経験を持つ女性の場合、同業界・同職種で転職するケースが最多数でした。ところが、最近は事務や営業、エンジニアを志望する女性が増えてきています。
ただ、業界未経験の人材を採用している企業は少ないのでは……?
経験者採用に振り切る企業もありますが、コロナ禍でもこれまで通り、あるいは、これまで以上に女性採用を行っている企業も実際にはありますよ。
中には、ポテンシャル重視の未経験者採用を続けている場合もあります。
どのような業界でしょうか?
例えば、生命保険会社などを含む金融業界です。20年は年間を通して前年比を上回る数の求人が掲載されていました。直近では、前年比の1.5倍に迫る勢いです。
未経験含めて活発に採用活動を続けています。
視野を広げれば、未経験転職のチャンスはあるということですね。
その通りです。なので転職活動をしている方々にお伝えしたいのは、「業界に対する先入観で転職先を選ばないで」ということ。
例えば金融業界であれば「忙しそう」「ノルマが厳しそう」といったイメージから敬遠してしまいがちですが、各社さまざまな職種で採用しています。
営業という職業一つとって見ても、店舗での窓口対応のみのケースや、既存顧客のフォローを専門とするケースなど、営業スタイルは多岐にわたります。
最近ではオンライン契約を強化するなど、営業スタイルの変化がたびたびニュースになっていますよね。
他にも、女性採用が活発な業界はありますか?
もともと女性の就業が多い介護・福祉業界ですね。最近では介護スタッフだけでなく、児童福祉や学童保育といった教育関連事業での募集も増加傾向です。
その他、IT・通信・インターネット関連業界に関しても、20年3月の緊急事態宣言発令後は一時的に求人数が落ち込んだものの、他の業界と比べるとあまり影響を受けていません。年末には、前年以上の求人掲載がありました。
未経験での転職を目指している方は、こういった業界の求人情報にも目を向けてみてほしいです。自分の強みや興味関心を生かせる場があるかもしれませんよ。
未経験の業界へ転職を成功させるために、意識すべきことはありますか?
「自分自身の強み」であるスキルセットを整理しておくことが大切です。
例えば、航空・観光系などでキャリアを積んできた方であれば、もしかしたら「ハイレイヤーの顧客向けの接客スキル」や「語学力」が強みになるかもしれません。その場合、富裕層向け商品、高額商品を扱う企業などで活躍の場がありそうですよね。
ご自身の経験業務を整理する際、「業界を変えても役立つスキルは何だろう」といった視点で考えてみてください。
女性に人気の職種・事務は求人数ダウン
マーケティング関連職の人気が上昇中
コロナ禍、採用ニーズが高まった職種・下がった職種はありますか?
採用が増えている職種でいうと、営業とエンジニアです。これは金融業界やIT・Web業界の求人数の増加と比例していると言えるでしょう。
エンジニアの中でも、RPAエンジニアの募集が増えた時期もありました。RPAとは事務処理などの業務自動化を可能とする技術のこと。
コロナ禍で従来通りの働き方が困難になる中、RPAツールの導入を検討する企業が増えたことも要因の一つではないかと思います。
逆に、事務職の求人数は前年比で見ても減少しています。
RPAのような技術の進歩に加え、無期雇用派遣での人材確保を積極的に行っている企業の増加も影響しているかもしれません。
事務職以外で転職者から人気の高い職種はありますか?
コロナショック以前から、マーケティング関連の職種は、求職者からの人気が高くなってきています。
最近では、SNSマーケティングに関する求人が増えていて、中でも「インフルエンサーマーケティング」は小さなトレンドとなっている印象です。
インフルエンサーマーケティングとは、SNS上で影響力を持つインフルエンサーの協力のもと、商品やサービスをPRする手法。年々需要が増え続け、2020年の市場規模は317億円とも言われています(※)。
若者への訴求力が高いことから、新たなマーケティング手法として活用する企業が増えているようです。
具体的にはどのような仕事なのでしょうか?
SNSを用いたプロモーションの企画や、広告の運用などに加えて、インフルエンサーのスカウトやマネジメントなどが主な業務内容です。
応募資格は、未経験でも可としている企業も多いようですね。代わりに、日ごろからSNSを活用していることが欠かせない条件となっています。
中には「フォロワーが●人以上の方」などの応募資格を設けているケースも。
自分自身のSNS運用経験を生かして活躍してほしい、ということですね。
その通りです。
趣味として取り組んでいたこと、好きでやっていたことが、キャリアに生きることが今後ますます増えていきそうですね。
また、最近はリモート勤務の職場も増えましたが、リモート環境で自律的に働けることも立派なスキル。
無意識に継続できていることは「得意なこと」だと思いますので、改めて自分の強みに目を向けてみてほしいと思います。
(※)株式会社サイバー・バズ、株式会社デジタルインファクトによる国内ソーシャルメディアマーケティングの市場動向調査より(2020年10月)
取材・文/秋元 祐香里(編集部)