一度は専業主婦になった女性が、在宅エンジニアで復職した理由「働く大人の背中、子どもに見せたい」【在宅deプログラマー 相澤さん&齋藤さん】
相澤友佳さんは、エンジニア経験者に対して在宅ワークでのプログラミング・開発業務の提供を行う『在宅deプログラマー』で活躍しているエンジニアの一人。はつらつとした笑顔が印象的だが、順風満帆でキャリアを築いてきたわけではないという。
実は相澤さん、第二子の出産を機に、前職を退職して専業主婦になった経歴を持つ。「一人目の出産後、育児と仕事の両立の大変さを実感した」と語る相澤さんだが、なぜ『在宅エンジニア』として復職するに至ったのだろうか。
在宅エンジニアのやりがいや働き方について、相澤さんと、彼女を日ごろからサポートしている『在宅deプログラマー』のコーディネーター・齋藤枝里さんに聞いた。
【エンジニア・相澤友佳さん】
想像以上に苦労した、育休からの復職
――相澤さんは、どうしてエンジニアになろうと思ったのですか?
父がエンジニアで、物心ついた時から父が働く姿を近くで見ていたことが一番の理由ですね。
トラブルが起こった時、現場に駆けつけて解決してみせる父の姿がとても格好よく見えたんです。私もエンジニアになりたい、と言ったら、肝心の父には「大変だからやめておけ」なんて言われましたが(笑)
それでも、大学は希望通り情報システム系の学部に進学しましたし、卒業と同時にSIerに就職しました。
――当時から女性エンジニアは少なかったのでは、と思うのですが、そんな中でも相澤さんは産休・育休を経験されているとか。
はい。金融機関に転職後、一人目の妊娠が分かり、産休に入りました。
産休・育休や時短勤務といった制度はありましたが、活用して働き続けている女性はほとんどいませんでした。当時は、結婚や出産を機に会社を辞めていく女性の方が多かったですね。
――復帰後はいかがでしたか?
育児をしながら働くのは、想像以上に大変でした。子どもが体の強い方ではなかったので、体調を崩すことも多くて。
上司や同僚は「休んでいいよ」「大丈夫だよ」と言ってくれるのですが、どうしても「迷惑を掛けている」という後ろめたさが拭えませんでした。
夫婦で協力しようにも、「今日はどうしても仕事に行かないと」「私だってもう休めないよ」というやりとりになってしまうことも少なくない。こんな状態で働けない、と思って、一度離職しました。
――ですが、一度離職した後で外資系企業に転職されていますよね。どういった背景があったのでしょうか?
一番は、子どもが背中を押してくれたからです。どうやら、「ママが仕事を辞めたのは自分のせいだ」と感じていたようでした。
なので、体調が落ち着いてくると「ママ、お仕事しなくていの?」と聞いてくるようになったんです。
ずっと一緒じゃなくてもいいの?と聞くと、「ママがお仕事を頑張るなら、僕も頑張れる」と言ってくれて。そこで、子どもがいても問題ない、と言ってくださった外資系企業に転職して、もう一度働くことにしました。
外資系ならではのカルチャーもあり、とても柔軟で働きやすかったのですが、ある時、私が所属していた部署が無くなることに。同じタイミングで二人目の妊娠が分かったこともあり、退職して育児に専念することにしました。
「〇〇ちゃんのママ」だけではない自分の価値を求め“在宅エンジニア”へ
――二度目の専業主婦期間を経て、今は『在宅deプログラマー』で在宅ワークをされていますよね。二人のお子さんを育てながら、もう一度働こうと奮い立った理由はなんだったのでしょうか?
育児や家事も、家族のためになることであるのは確かです。ですが、心のどこかで「〇〇ちゃんのママ」「〇〇さんの妻」としてではなく、社会の一員として仕事で貢献したい、という気持ちがありました。
なので、住まいの近くで在宅ワーカー向けの講習会が開催されることを知って、参加してみることにしたんです。大半がライターや文字起こしといった自分の経歴とはかけ離れた仕事だったのですが、その中に『在宅deプログラマー』のエンジニア求人がありました。
在宅でもエンジニアの仕事を続けることができるのか、とうれしくなったことを今でも覚えています。
――とはいえ、在宅で働くのは初めてですよね。不安はありませんでしたか?
最初はたくさんありました。ちゃんと自分で仕事の管理ができるのか、とか、そもそもブランクがあるけれど大丈夫だろうか、とか。家にあるパソコンのスペックで問題ないだろうか、なんて細かいことも含めると、本当にいろいろ不安でした。
ですが、コーディネーターの方が親身に相談に乗ってくださって、一つ一つ不安を解消してくれたおかげで、「ここでもう一度やってみよう」という決心がつきました。
再び社会貢献ができた喜び。子どもに働く母の背中を見せたい
――実際に始めてみて、在宅ワークという働き方はいかがですか?
子どもたちと過ごす時間がしっかり持てて、とても充実していますね。
学校から帰ってきたら「おかえり」と言って出迎えられるし、おやつも用意してあげられる。こういった些細な触れ合いが、子どもにとってもうれしいようですね。
特に上の子は、私が外勤で働いていた頃のことを覚えているので、「実はあの時、ちょっと寂しかったんだよ」なんて照れ臭そうに言うんです。なので、こうして一緒に過ごせる働き方を選択してよかったな、と思います。
今はコロナ禍なので、ちょっとした体調不良でも子どもを気兼ねなく休ませることができるのもありがたいですね。
メリハリをつけて働くためにも、一日のスケジュールは毎日度決まった通りに進めるようにしています。在宅だと、どうしても「もう少し」と仕事をしたくなってしまうので、「〇時には終業する」と決めて取り組むようになりました。
――在宅ワークでエンジニアに復帰して、改めて感じている仕事のやりがいなどはありますか?
やっぱり、「〇〇ちゃんのママ」としてだけではなく、「相澤さん」という一人の人間として評価してもらえることがやりがいですね。在宅であっても、メンバーの一員として認めてもらえて、成果が出て、「ありがとう」と感謝してもらえる。そんな仕事の喜びをかみしめています。
私が働いている姿をよく見ているからか、最近では下の子が「ママみたいなお仕事がしたい」と言うようになったんですよ。どんな仕事なのかはまだ分かっていないようですが、「システムエンジニア」という言葉はちゃんと知っていて(笑)。背中を見せられているのかな、と思うとうれしいですね。
――かつての相澤さんと同じように、将来の働き方や目の前のブランクに悩んでいる女性エンジニアに、アドバイスはありますか?
エンジニアは技術職なので、一度現場を離れるとスキル面での不安が膨らむかと思います。だからこそ、分からないことがあったら「恥ずかしがらずに聞く」ということが大切です。
今の私にはコーディネーターの方もいますし、クライアントのエンジニアにアドバイスをもらうこともできる。些細なことでもどんどん聞いて不安を減らしていくことが、長く働くコツです。
技術に関しては、これまでに積み重ねてきた経験やスキルがあれば、例えば新しい技術を覚えるにしても、コツをつかむのに意外と時間はかからないと思いますよ。
【『在宅deプログラマー』コーディネーター・齋藤枝里さん】
不安な在宅デビューの支えになりたい
――相澤さんを日ごろからサポートしているコーディネーターの齋藤さんにもお話を伺います。『在宅deプログラマー』では、どのような女性エンジニアが活躍していますか?
相澤さんのように、育児中の女性が多いですね。他には、ご家族の転勤が多い方や、地方在住で通勤できる範囲にエンジニア求人が少ない方、親の介護を見据えて在宅ワークに切り替える方もいらっしゃいます。
――相澤さんのお話にもあった通り、初めての在宅ワークに不安を抱える方も多いのでは?
そうですね。相澤さんもおっしゃっていましたが、さまざまなことに不安を感じる方が多い印象です。ですが、各々の悩みに応じてサポートしていくので、安心して新しい一歩を踏み出してほしいなと思っています。
在宅ワークの場合、どうしても一人で過ごす時間が増えるため、孤独を感じてしまうケースも少なくありません。そうならないためにも、コーディネーターから小まめに連絡をするようにしていますし、定期的にアンケートをとって直接言いづらい要望をキャッチアップしています。
――コーディネーターの方とコミュニケーションがとりやすいのは安心ですね。
今後は、コーディネーターとだけでなく、現在運営している『在宅deプログラマー』のサイト上で、在宅エンジニア同士も交流できる仕組みを提供していきます。
具体的には、登録者同士が気兼ねなくWebでやり取りできる仕組みや、先輩在宅エンジニアによる相談窓口、在宅エンジニアにまつわるちょっとした情報提供などです。また、新しい技術にチャレンジする方、ブランクのある方向けの教育コンテンツも、5月以降に順次公開を予定しています。
これによって、『在宅deプログラマー』を、時間や場所を超えて在宅エンジニア同士が学び合い、助け合えるようなプラットフォームにしていきたいと考えています。
コミュニケーションや、学びの場を提供することで、少しでも「一人で働いている」という寂しさが軽減されればうれしいですね。
エンジニアが理想の働き方を実現するためのパートナーに
――『在宅deプログラマー』の場合、どのような勤務形態になるのでしょうか?
勤務時間や業務量は人それぞれです。相澤さんのように週5日勤務の方もいれば、週〇時間まで、と決めている方もいます。お子さんに合わせて、夏休みなどの長期休暇の時期は業務量をセーブしている方もいますね。
一人一人の希望の働き方に合ったクライアントにアサインできるように、コーディネーターが調整しています。
――自分のライフステージや生活スタイルに合わせて働けるのは魅力的ですね。
そうですね。IT業界の場合、スキルと賃金を条件にしたシンプルなマッチングで仕事が決まるケースが多いですが、『在宅deプログラマー』ではエンジニアの経験や現在の状況を細かく把握した上でアサインするので、エンジニア・クライアント双方からの満足度が高いんです。
「この日は子どもの学校行事で早く終業したい」とか、「来月は業務量を減らしたい」といった要望をクライアントに伝えるのは気が引ける、というエンジニアも多いですが、私たちコーディネーターが間に立つようにしています。なので、どんどん相談してほしいですね。
ライフステージの変化に伴って、働き方を変えていきたい、という希望はごく自然なものです。個々の事情に寄り添いながら、「スキルを生かして働き続けたい」という女性エンジニアの皆さんを全力で支援していきたいと思っています。一緒に最初の一歩が踏み出せたらうれしいです。
■『在宅deプログラマー』について
運営会社:株式会社コネクティル
事業内容:IT事業・女性活躍推進事業・テレワーク事業
住所:東京都千代田区岩本町2-2-4 PMO神田岩本町Ⅱ3階
代表:03-6264-9563
取材・文/太田 冴 撮影/野村雄治
『私たちのエンジニアライフ』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/rolemodel/engineerlife/をクリック