隣の芝が青過ぎる時代、会社員が「自分らしく働く」を叶えるには?『食べチョク』秋元里奈×『POSIWILL CAREER』金井芽衣 対談

私と仕事のいい関係

副業解禁、リモートワーク……。ここ数年で会社員の働く環境は大きく変化した。

会社員でも柔軟な働き方を実現できる社会が歓迎される一方で、多様化する選択肢の中から自分は何を選び取るのか、悩みを深めてしまった人も多いかもしれない。

そこで今回は、前回に引き続き、食べチョク秋元さんとポジウィル金井さんの対談をお届けしよう。

将来のキャリアに対する不安を少しでも無くし、自分らしく働き続けるヒントを探っていきたい。

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写真左:ポジウィル株式会社 代表取締役の金井芽衣さん 写真右:株式会社ビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈さん

写真左:ポジウィル株式会社 代表取締役の金井芽衣さん 写真右:株式会社ビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈さん

私たちは「隣の芝が青過ぎる」時代を生きている

ーーここ数年で、会社員を取り巻く環境は変化したと感じますか?

秋元さん

変わったと思います。

終身雇用が前提ではなくなったため、会社が副業を認めたり出戻りを歓迎したりするようになったのはポジティブな変化ですね。

ただ自由度が高まった分、キャリアに迷う人も増えたと感じます。

秋元さん

今までは社内だけに目が向きがちだったところから、見える世界や選択肢が一気に広がったために、「もっとこういう生き方ができないか」「自分はどうしたいのか」と考えるようになったのではないでしょうか。

金井さん

その通りですね。キャリアに迷う背景には、働き方や生き方の選択肢が増えたことに加えて、SNSを見て他者の状況をより詳しく知ることができるようになった影響があると思います。

知人でも、見ず知らずの人でも、自分と同世代の人がスタートアップに転職したり、フリーランスになったり、起業したりして活躍しているのが目に入ると、「自分もそうしなければ」という気持ちと「でも、今の自分には何もできない」という負のループに陥ってしまう。

金井さん

あとは、十分な待遇だけでは満足できない人も増えていますね。

弊社サービスのユーザーさんの中には、GAFAのような一流企業で働いている方もいます。

同世代と比較しても高待遇を受けているし、福利厚生も充実している。

にもかかわらず、「自分の実力じゃない」「いつまでこの給料もらえるか分からないし」と現状を不安に思っている。

金井さん

自分にとって必要なものは何か。何が自分を安心させてくれるのか。

そういうものが分からず、雇用の安定している会社員であっても、キャリア不安は加速していると感じます。

秋元さん

人と自分を比べやすくなったことで、劣等感を抱きやすい状況になっているのかもしれないですね。


SNSにはいい部分しか発表していない人は多いはずですけど、それが全てのように思えてしまいますし。

金井さん

起業についても「華やかなものだ」と思われることがありますが、実態は苦しいこともつらいこともいっぱいあって、“キラキラした生活”とはかけ離れています(笑)

秋元さん

同感です(笑)

「働き続けること」はあくまで手段。「働く」目的を考えてみる

ーー先ほどのお話にもあった通り、ここ数年で会社員の働き方もかなり柔軟になりました。今後も会社員として長く働き続けたい女性は、どんなスキルやマインドを身に付けておくとよいと思いますか?

金井さん

会社で働き続ける上で大切なのは、自分が人生で成し遂げたいことと、会社の方向性が一致していることです。

「何のためにやってるんだろう?」と思った瞬間、やる気はなくなってしまいます。

モチベーションを保てなければ力もつかないので、本人のためにもなりません。

会社と自分の方向性がずれていないかを確認するために、弊社では定期的に「WILL・CAN・MUST」の自己分析をメンバーにしてもらっています。

秋元さん

定期的に振り返りを行うのはいいですね。時期や周囲の人が変わると、同じ人でも考え方が変わっていきますから。

ーー自分自身の内面と向き合う時間をつくるのが大切なのですね。

金井さん

そうですね。情報収集はもちろん大切ですが、他人に憧れたところで、自分は自分にしかなれません

誰かとの差分を意識して落ち込む時間があったら、自分の良さを伸ばす行動を取った方がずっと意味があります。

自分自身を深く知るためには、他者から自分を客観的に評価してもらう機会を持つのがお勧めです。

秋元さん

確かに、自分一人で分析しても客観的になるのには限界がありますよね。

自分の当たり前と人の当たり前は違うので、自分の良い点にも気付きにくいものです。

人からフィードバックをもらうためには、自分の考えを積極的に発信することが大切だと思います。

何も発言していないのに、周囲の人が助言したり導いてくれたりすることってないと思うので。

ーー確かにそうですね。

秋元さん

それから「会社員として長く働きたい」と思っている方が一度考えてみた方がいいかなと思うのが、「働き続けること」自体はあくまで手段であって、目的にはならないということ。

つまり、働くことで何を成したいのかを明確にすることが大事なんじゃないかな、と。

働く目的を考えた結果、「会社員として長く働き続けること」が手段として正解であればそれで良いですし、もし違和感があるのであれば、別の手段を模索してみたら良いと思います。

秋元さん

目的を達成する最善の手段を知るためには、まずは視野を広げる行動をとることが大切です。

私自身は、自分の周りに起業家があまりいなかったので、最初から「起業」は選択肢にすらありませんでした。

でも、人との出会いをきっかけに起業という選択肢を知ることができたおかげで、今は最適な選択ができたと思っています。

ーー手段と目的を見誤らないことが大切ですね。

秋元さん

はい。ただ、20代で目的が明確な人は少ないと思うので、まずは経験や出会いといった「手段の手札」を豊富に揃える動きをしておくといいと思います。

いつかやるべきことが見つかったときや、自分の価値観が変わったときに役立つはずですから。

完璧は目指さない。「まずやってみる」ことで自信をつけて

ーー変化の兆しはあるものの、日本の会社は役職が上がれば上がるほど“男性社会”という組織も少なくありません。そこで働き続けていく中で「キャリアの壁」を感じる女性も多いと思いますがいかがでしょうか。

金井さん

そういう景色が広がる中で、会社組織の中でキャリアアップしていくことをためらう人や、管理職になることを諦めてしまう女性もいますよね。

また、女性の場合、能力があって優秀なのに自信がない人も多いです。ものすごく努力しているのに、「私なんて」と思ってしまう。
自分をあまり評価しない思考の癖がついている人もいます。

金井さん

でも、それは本当にもったいない。

最初から完璧である必要はないので、チャンスが与えられたら「ダメでもともとやってみようかな」くらいの感じでチャレンジしてみるといいですよ。

やってみて「案外できた」って思えると、次の自信につながりますから。

一度思い切ってチャレンジしない限りは、成功も失敗もできないまま、ずっと同じ場所で悩み続けることになってしまうと思うんです。

秋元さん

あとは「管理職女性ってかっこいいじゃん」とか「仕事で評価されると幸せな生活を送れる」といった認識が社会全体に広がっていくといいなと思いますね。

やっぱり、管理職になったり、組織の中核にいくということが女性たちにとって魅力的なことでなければ、なろうとは思えないはずなので。

ーーそうですね。最近は女性管理職の登用に前向きな会社も多いですしね。

秋元さん

はい。

ただ、私は『食べチョク』の仕事で地方に行くことも多いのですが、女性が経営者になったり管理職になったりすることのイメージって、地域によって全然違うと感じるんですよ。

ーーというと?

秋元さん

生産者さんの場合、女性が実質的に経営を行っているところもあるのですが、ある女性経営者は「地域の目があるので女性は表に出にくい」と言っていました。

その地域ではリーダーシップというのは本来男性がとるべきもので、女が代わりにそれをやるのは恥ずかしいこととして見られてしまうのだそうです。

秋元さん

本人にやる気や能力があっても、その人が働いている環境にそういったステレオタイプな価値観が根強くある場合、周囲の人の考えをいきなり大きく変えることは難しいですし、意欲も削がれてしまうと思います。

なので、女性が変わるだけでなく、時間も労力もかかるかもしれないけれど環境、価値観の方も根気強く変えていく必要を感じますね。

ーー地方の事例でお話しいただきましたが、「女性経営者に対する世間の眼差し」については、お二人も感じるところがあるのでは?

金井さん

ポジウィルを創業した2017年当時、私は27歳だったのですが、先輩たちからは「めいちゃん、女として終わったね」とよく言われました。

起業した女性なんて男性から煙たがられてしまうし、結婚できない。それは“女として終わり”、という意味でしょう。

ただ、その頃に比べると、今は状況が変わったのを感じますね。「そんなこと言っちゃダメなんだ」って、周囲の人が分かるようになってきているというか。

ーー徐々に共通認識はできていますよね。

金井さん

ええ。あと、20代など若い世代の人は会社の代表が女性であろうと男性であろうと、気にしていない人は多いですね。

数年前だと、女性経営者の会社で働くことに抵抗感がある男性もまだまだいらした印象です。

なので、当社の採用面接に来る人も女性が多くて。最近は、私より上の世代の男性の方も面接に来てくださるようになりました。

秋元さん

差別的なこととか、ジェンダーによって相手を決めつけてしまうこととか、そういうことを「言っちゃいけない」と思っている人は増えている印象です。

でも、表に出ていないだけで、「男の方が女より偉くあるべき」とか、「女より男の方が稼がないといけない」とか、「女はわきまえて大人しくしていないといけない」とか、そういうありとあらゆる刷り込みが男女ともに心の奥底にまだまだあるとも思います。

まずは一人一人がそういうステレオタイプを自分が持っているということを自覚して、それを乗り越えないといけない。

ーー先ほど金井さんが仰っていたように、「女として終わったね」とか、そういう心ない言葉を向けられてしまうことや、「女はこうあるべき」というような考え方を押し付けられてしまうことは今も時々あると思います。そういう時はどうしていますか?

秋元さん

こんなことがあって「嫌だった」って感情を口にしますね。嫌だった気持ちをそのまま放置しておかない。

胸の中にただこっそり閉まっておくと、自分がどんどん蝕まれてしまうので。

秋元さん

例えば、誰が言ったかなどは特定されないようにする前提ですが、「以前こんなことを言われましたが、今後こういうことは言われたくありません」という意思表明は公の場でもします。

自分のスタンス表明をしておくことは大事です。一度「こういうことが嫌でした」とはっきり言っておくと、また同じ思いをする可能性が限りなく減るので。

「何を言ってもオッケーな人」と思われないようにしておくのも大切ですね。

金井さん

なるほど、参考になります。女性たちはもっと自分の意志や感情を大事にしてほしいですね。

「こうすべき」じゃなく「こうしたい」「こうありたい」で物事を考える。そして、傷つくことがあったらそれを声に出す。

そうやって自分らしく生きていけるといいのかなと思います。

【前編の記事はこちら】

【金井芽衣×秋元里奈】“女性に優しい会社”って何? 時短ママ活躍、福利厚生充実だけじゃない真実

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<プロフィール>
ポジウィル株式会社 代表取締役
金井芽衣さん

1990年群馬県生まれ。埼玉純真短期大学で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入。13年、リクルートキャリアに入社し、法人営業を経験。17年に国家資格キャリアコンサルタント登録。同年8月にポジウィル株式会社を設立し、同社代表取締役に就任。「どう生きたいか?でキャリアをきめる」キャリアのパーソナル・トレーニング事業『POSIWILL CAREER』(旧『ゲキサポ』)を運営。20代~30代の若手ビジネスパーソンを中心に、絶大な支持を集めるサービスへと成長している Twitter:@meiem326

株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長
秋元里奈さん

慶應義塾大学理工学部を卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーへ入社。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げを経験した後、スマートフォンアプリの宣伝プロデューサーに就任。2016年11月に株式会社ビビッドガーデンを創業。実家は相模原の農家 。品質にこだわる農家・漁師から旬の食材を直接お取り寄せできる産直通販サイト『食べチョク』は、「利用率No.1」の産直通販サイトへと急成長。コロナショックで被害を受けた生産者の支援などにも精力的に取り組む Twitter:@aki_rina

取材・文/一本麻衣

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