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JUL/2021

「妊娠はキャリアの壁」と感じた私が二度の育休で学んだ、ネガティブを転機に変える超シンプルな方法【MIRAIS 栗林真由美さんのベストバランス】

仕事・収入・幸福度の相関関係は?
私のベストバランス

仕事が楽しければ、収入が低くても幸せ? 収入が高ければ、忙しくても幸せ? 幸せに働く「ベストバランス」は、意外と分からないもの。そこで、さまざまなキャリアの転機を経験してきた女性たちにインタビュー。仕事・収入・幸福度の相関関係について調べてみました!

出産後も働き続けることは、女性にとって当たり前の選択肢になった。

しかし、実際に出産を経験するまでは、産休・育休の取得が自分の収入やキャリアににどう影響するのか、具体的なイメージが湧かない人も多いだろう。

「かつては、妊娠はキャリアの壁だと感じていました」

そう明かすのは、現在、IT企業に勤めながら育休コミュニティ『MIRAIS(ミライズ)』を運営する栗林真由美さん。

栗林真由美さん

栗林真由美さん

1982年生まれ。2005年、IT企業に入社。2014年第一子出産、2018年第二子出産。2018年育休中に、自身の経験から産育休者向けのコミュニティ『MIRAIS(ミライズ)』を立ち上げ。「なんとなく過ごす育休をなくす」をヴィジョンに掲げ、有意義な育休を過ごすことのできるよう産休・育休中の人々がつながり、あらゆることに挑戦し合う場を提供している。そのほかにも、2021年4月からはワーママ向けアカデミーを開講し講師を務めるなど、「子どもを持ちながらキャリアをあきらめない女性」を増やすべく、精力的に活動している。
Instagram ◆ブログ

現在は二児の母である彼女だが、第一子を妊娠した時には、育休でブランクができることで、今まで仕事で積み上げてきたことがまっさらになってしまうような不安に襲われたという。

二度の出産、育休を経て、栗林さんが考えるベストバランスはどのように変化してきたのだろうか?

収入、キャリア…育休で何もかも無くすのが怖かった

栗林真由美さん

ーー育休コミュニティ『MIRAIS』の運営と、IT企業での仕事、ワーママ向けのアカデミー、さらに子育てもされていますが、毎日かなり多忙では?

確かに忙しいかもしれません(笑)。ただ、私は働くことが大好きなので、全く辛くはないですね。むしろ自身のビジョンでもある「子どもを持ちながらキャリアをあきらめない女性を増やす」ことに自身の活動がつながっているので、本業も『MIRAIS』もアカデミーも子育ても全てやりがいがあります。

今勤めているIT企業には新卒で入社したのですが、就職活動では業界問わず100社以上を見て回って選びました。

それくらい学生の頃から「働く」ということに情熱を持っているんです。

ーー100社も! グラフを見てみると、入社時にすで幸福度が100点ですね。会社選びでは何を重視されていたのでしょうか?

新卒当時、会社選びの軸としていたことは大きく2つあります。

1つ目は女性がイキイキと働き続けられるか? 2つ目は自分がおもしろい・興味がある事業内容か?

これらを軸に、業界、業種問わずいろんな会社に足を運び、自分自身でその軸に合うかどうかを確かめていました。

ーー当時は収入についても重視していましたか?

収入はさほど重視していませんでした。それよりも、先ほどお答えした自分の中の会社選びの軸を最優先にしていたので、納得して入社できたと思います。

入社後は、個人や法人向けサービスのディレクターとして、企画段階からリリース後の効果測定まで、現場で取りまとめていました。スピード感がある仕事で、大変ではありましたがやりがいも大きかったですね。

ーーその後、2012年にどん底まで幸福度が落ちているようですが、一体何が?

チームを異動したタイミングですね。それまでは第一線で働いていたのに、異動先ではサポートに近いポジションになってしまって……。

ですが、悩みながらも仕事を続けた結果、翌年には新規事業部門への異動の機会に恵まれたんです。

社内で最も勢いのある新事業に関わる部門で、まるでベンチャー企業のようでした。当時の私は入社9年目。

それまでの経験を生かしながらも「よし、またここで新しいことに挑戦するぞ」と意気込んでいました。これまでのキャリアの中で、最も仕事に熱を注いでいた時期かもしれません。

そんな時、妊娠が発覚したんです。

ーー妊娠が分かった時の心境は?

正直なところ、ものすごく落ち込んでしまいました。

もちろん子どもを授かったことは喜ばしいこと。でも、うれしかったのは妊娠検査薬で陽性を確認したその瞬間だけでした。当時の私は、出産のために産休・育休を取るということを、キャリアを阻む壁だと思っていたんです。

育休から復帰して第一線で働いている女性が周囲に少なかったので、子どもを産んでもこれまで通りに働ける、自分が描く理想のキャリアを積んでいけるなんて、到底思えませんでした。

ーー幸福度が下がり切ったまま、産休を迎えたんですね。

はい。それまでは会社から役割を与えられて、必要とされている実感がありましたが、休みに入った途端にそれが一気になくなって、社会から疎外されたような感覚に陥ったことを覚えています。

ーー産休育休期間は必然的に収入も下がりますが、当時は年収ダウンすることをどう感じていましたか?

育休中の年収ダウンについては、正直「やむ無し」と捉えていました。むしろ働いていないのにいただけるだけありがたいと感じていたくらいです。

栗林真由美さん

出産後、時には我が子と一緒に登壇することもあった。

ですが、ネガティブだった気持ちも、子どもが産まれてからは一気に変わっていきました。

子どもは本当にかわいくて、こんなに愛おしい存在が私のことをずっと見ていてくれるんだから、私は私らしく幸せに生きなきゃ、と思えたんです。子どもにやりたいことを諦める背中を見せるなんて格好悪いな、と。

そう思えてからは、育休中でも参加できる勉強会やプロジェクト、セミナーを探して積極的に足を運びました。少しでも有意義な時間を過ごして、復職後に生かしたいと思って。

その結果、復職から1年ほどで昇格することができました。

ーー2017年にまた少し幸福度が下降していますね。これはなぜでしょうか。

勤め先の分社化に伴って、またもや異動となったんです。異動先は経営戦略を策定する部署で、現場主義だった私にとってはピンとこなかったんですよね。それまでは「事件は現場で起こっているんだ!」という精神でやってきたので(笑)

第二子の妊娠が発覚したのも、ちょうどこの頃です。

ーー第二子の妊娠が分かった時にはどんなお気持ちだったのでしょう?

一人目の時とは全く違って、冷静に受け止められたように思います。それも、やはり第一子の育休の時の経験があったおかげ。育休を有意義な時間にできる、という確信があったんです。けれど第一子の時と同じような過ごし方には興味はありませんでした。

「なんとなく過ごす」育休をなんとかしたい、という思いが強まって、育休コミュニティ『MIRAIS』を立ち上げたのも第二子の育休中。復職後は昇格や本社への出向を経て、年収も上がりました。

今年に入ってからは育児をしながら働く女性向けのアカデミーを立ち上げるなど、会社員以外での活動の幅も広げているところです。仕事も育児も楽しめている今の状況を、とても幸せに感じています。

収入アップよりも、挑戦自体に価値がある

ーー改めて栗林さんのグラフを見てみると、幸福度の上下が激しいことが印象的です。

栗林真由美さん

言われてみると、確かに激しいですね(笑)。振り返ってみて気が付きましたが、私は何かにチャレンジしているときに幸せを感じるようです。

例えば、第一子の妊娠発覚時にはとてもネガティブになりましたが、「自分なりに育休に向き合う」というチャレンジを仕掛けてから、年収に関係なく幸せを感じられるようになりました。

栗林真由美さん

育休コミュニティ『MIRAIS(ミライズ)』のメンバーと。

ーー収入と幸福度は比例していないようですね。

そうですね。一度目の復職後に昇格しましたが、時短勤務なので出産前と比べれば年収は低いままでした。

ですが、私にとっては収入が右肩上がりになることよりも、“育休=ブランク”ではない、と証明できたことがうれしかったので、幸福度は最高値です。

昇格して給与が上がるのは、もちろんありがたいこと。でも、収入を増やすために努力するというよりも、「育休を経て、時短でも活躍する」というチャレンジそのものに価値を感じました。

実は、私が第一子の育休から復帰した当時、時短勤務の女性が昇格した前例が社内になかったんです。皆どこかで「フルタイムでなければ昇格はできない」というイメージがありましたが、自ら前例を打ち破ることができた。

長時間働くことが昇格の条件ではないと示せたことの方が、実際にお給料が上がることより、私にとって大きな意味があったんです。

一時的な年収ダウンは、幸せを掴むためのチャレンジ代

ーー新しいことにチャレンジしてみたくても、収入ダウンが怖くて一歩を踏み出せない人も多くいると思います。

それって非常にもったいないことですよね。お金を理由にチャレンジしなかったら、いずれは「あの時どうして挑戦しなかったのだろう」と後悔すると思うんです。

収入ダウンを気にする方は、下がった収入が「ずっとそのまま」と思い込んでしまいがち。実際にはそんなことはありません。

仮に年収が100万円下がったとしても、それがずっと続くわけじゃない。その後の成果や努力によって、収入はいくらでも上げることができます。それなら、一時的な収入低下を恐れるよりも、やってみたいことにチャレンジするための努力をした方がいい

しかも今は副業や兼業など、働く選択肢がたくさんある時代ですよね。もし自分の幸福度と収入が深く関係するのであれば、下がった分の収入を別の方法で補う、ということもできるはずです。

それに、チャレンジというのはお金で買えるものではありません。下がった分の年収をチャレンジ代だと思えれば、その後の人生を豊かに変えていけると思うんです。

実は、私の夫も“チャレンジした人”なんですよ。

ーーというと?

以前の夫は、大手企業勤務で高収入。はたから見ればとても恵まれた環境だったはず。にもかかわらず、全然幸せそうに見えなかったんです。

聞いてみると、仕事にやりがいを見出せていないようで。「幸せを感じられない状態になってまで、あなたにお金を稼いでほしいだなんて思わない」と伝えました。

結果、夫は転職を決意。収入だけを見れば前職の方が良いですが、今の方が楽しそうに働いています。

ーー年収ダウンしてでも転職を勧めるというのは、勇気のいることだったのではないですか?

辛そうに仕事をしている姿を見る方がしんどかったんです。子どもにとっても、「仕事って辛いものなんだ」「つまらないものなんだ」というイメージにつながってしまうのではと思って。

一時的な家計への影響よりも、やりたいことがあるのに我慢し続けることの方が、損失は大きいはず。チャレンジで得られるものは、お金には換えられませんしね。

私自身、これまで目先の収入よりもチャレンジすることを優先して選択してきました。よく「転機」という言葉がありますが、私にとっては自然と転機を迎えた、というよりも、困難な状況にあえて挑戦の要素を足して自ら転機に変えてきた、という感覚です。

その数々の転機のおかげで、幸福度が落ち込むことがあっても、すぐに上向きに立て直すことができているのだと思います。だからこそ、これからもやりたいことには挑戦し続けていきたい。その姿を、子どもたちにも見せていきたいですね。

取材・文/太田 冴

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