営業・販売経験者が転職で有利に? 事務職女性220名調査で判明した「令和の事務」の意外過ぎる実態
販売や営業の仕事は、体力のある若いうちしかできない……。そんなイメージを持っている人は、まだ多いかもしれません。
今まさにキャリアチェンジを模索している女性の中にも、「長期的に働き続けるためには、オフィスワークで安定して働ける事務職がいい」と考えている人も少なくないのでは?

株式会社リクルートスタッフィングによる「未経験からの事務職へのチャレンジ」を応援する無期雇用派遣『キャリアウィンク』で採用・育成を担当する萩谷さんによれば、コロナ禍以降、同社事務職求人への応募者は増加。その多くが、アパレル販売・飲食・サービス業からのキャリアチェンジを目指す女性だと言います。
しかし、中にはせっかく事務職デビューをしても「長続きしない人もいる」のだとか。「事務職」に対する転職前のイメージと、転職後の現実にズレが生じることが早期離職の原因になっていると萩谷さんは言います。
そこでWoman typeでは、事務職経験者の女性220名にアンケート調査を実施。事務職になって感じたギャップについて、実際の仕事内容や必要とされるスキルなど、さまざまな角度から聞いてみました。
事務職経験者の4割以上がギャップを痛感
まずは、事務職になる前に、事務に対してどんなイメージを持っていたかを質問。
【Q.1】事務職になる前、「事務職」に対してどのようなイメージを持っていましたか?

※複数選択可
「PC作業が多そう」(35.1%)と回答した人が最も多く、「残業が少なそう」(17.1%)、「専門性が低そう」(13.2%)、「仕事が簡単そう」(13.1%)という回答が僅差で続く結果となりました。
事務職に対して、「特別なスキルは必要なく比較的簡単にできる仕事」という印象を持っていた女性が多いようです。
しかし、実際に事務職として働き始めると、そのイメージが覆される人が多数。
【Q.2】当初抱いていたイメージは、事務職になってから変わりましたか?

4割以上の人が、事務職に対するイメージが変わったと回答しています。
「変わった」と回答した人に具体的にどのような点でギャップを感じたのか聞くと、以下のようなコメントが寄せられました。
・一人で黙々とPCに向かって作業するイメージだったが、作業内容の確認や期限の調整など、他の人とコミュニケーションを小まめに取れる人でないと難しい仕事だった
・どうすれば見やすい資料になるか、グラフはどのタイプがいいかなど、依頼者のことを考えて作業を進めるうちにおのずとコミュニケーションが必要になってきて、相手に合わせて臨機応変に対応しなければならない仕事だと実感した
・常に周りに気を配り、気が付いたことは自分からどんどん発信していく必要があった
・総務事務のため、常にフットワーク軽く、社内の問題を見つけて主体的に働きかける必要があった
・専門性が低いイメージだったが、基本的なビジネスの知識はもちろん、その会社特有のシステムや仕組みを熟知していないと仕事にならないと知った
・いろいろな部門からの問い合わせに対応することがあり、多方面のビジネス知識が必要と感じた
また、「思っていたより仕事が大変だった」と回答した人も4割以上という結果が出ています。
【Q.3】事務職は大変な仕事だと思いますか?

「とても大変」「やや大変」を選んだ女性たちからは、「限られた時間の中で突発的に業務が差し込まれることが多く気が休まらない」、「周囲の人に合わせて働く必要があるので、自分のペースで仕事が進められない」などのコメントが集まりました。
事務職で使える&伸びるスキルNo.1は対人スキル
また、先の質問から「事務といえばPC作業が多そう」というイメージを持っている人が多いことが分かりましたが、実際のところ最も大事なのは「コミュニケーション力、対人スキル」という結果に。
【Q.4】事務職として活躍するために必要なスキル・事務職になってから伸びたスキルは?

※複数選択可
いわゆる事務作業能力よりも、うまくコミュニケーション能力や、気配り、察する力が欠かせず、これらの力が事務経験の中で磨かれていくことも分かりました。
それによって、営業や接客販売などの職種から事務職にキャリアチェンジした女性たちからは、「前職時代の経験・スキルが生かせた」という声も多数あがっています。
・販売で培った相手の課題や求めていることを自然と聞き出すスキルが事務でも役立った
・サービス業で磨いた誰とでもうまく付き合う対人能力は今も生かされている
・今の仕事は営業事務なので、営業の仕事内容を理解した上で資料を作成したり、お客さまへの対応をしたりできる
・営業をやっていたおかげで、人見知りせず働ける。事務はいろいろな立場の人と仕事をするので人見知りは厳禁
さらに、事務の仕事に対して「やりがいがありそう」というイメージを持っていた人はたったの3.8%でしたが(Q1)、実際は次のような結果となりました。
【Q.5】事務職のやりがい・面白みを感じるのはどんな時・どんなところ?

※複数選択可
やりがいを感じる瞬間の第一位は「タスクを予定通りにこなせた時」(28.5%)という結果に。続く第二位は「人から『ありがとう』と言われた時」(21.8%)。
仕事をやり遂げる達成感や、人の役に立つことにやりがいを感じる女性が多いようです。
「仕事から逃げたい」ネガティブ動機の転職には要注意
上記までの結果から、事務職の仕事は次のような特徴があると分かりました。
・チームとの協業が基本
・コミュニケーション、対人スキルが最も重要
・主体性が欠かせない
・業務範囲が多岐にわたり、マルチタスク
・幅広いビジネス知識が求められる
・仕事をやり切る達成感が得られる
もちろん職場ごとに違いはあるものの、事務作業の自動化などが進む昨今は特に、「事務の仕事のマルチタスク化が進んでいます」と『キャリアウィンク』採用担当の萩谷さんは明かします。
「事務と一言に言ってもさまざまですが、単純な事務作業はAI技術の発達で今後ますます自動化されていきます。そこで事務職にとって大事になるのが、物事を円滑に進めるためのコミュニケーション能力です。
日ごろから周りの方とコミュニケーションを取り、どこに課題があるのかを察知できることが大事になります。物事を円滑に進めるためのコミュニケーション能力や進行管理能力。そして、ただ仕事が来るのを受け身で待つのではなく、自分で課題を見つけ、それに対して改善策と改善のためのプロセスを考え、実行していく力です」(萩谷さん)

事務作業自体は、自動化によって“人がやる必要がないもの”になっていくため、次世代の事務職に求められる資質は、対人、コミュニケーションスキルに傾いていくはずだと萩谷さんは話します。
「こういったスキルは、接客販売や営業職などの仕事をしていた方はすでにお持ちのことが多いですね。もし、事務職へのキャリアチェンジを考えているのであれば、これまでの経験で培ったスキルをしっかり採用担当に伝えてほしいと思います」(萩谷さん)
一方で、営業、販売系職種から事務職に転身する人に「ぜひ気をつけてほしいことがある」と萩谷さんは続けます。
「対人関係に疲れた、ノルマに追われる生活に疲れた、だからそういうものがない事務職になりたいという方もいらっしゃいます。しかし、事務になれば今の仕事の『嫌な部分』がなくなるとは限りません。事務には事務の大変さがあり、それが自分に合わない場合は早期離職につながります」(萩谷さん)
事務になりたい理由が「今の仕事から逃げたい」「楽したい」などの動機からである場合は要注意。転職後も“別の問題”にぶつかる可能性があります。
「自分が事務職として、会社、周囲の人、社会にどんなふうに貢献したいのか。そのために過去の経験をどう生かそうと考えているのか。そういったことをクリアにして、ポジティブな選択ができた人が、結果的に事務として長く働いていると思います」(萩谷さん)
どんな職種であろうと、「いい転職」を叶える秘訣は、「やってみたい」「学びたい」「成長したい」というポジティブな動機があること。“何となく事務”と考えていた人は、一度自分の心に手をあてて転職動機と向き合ってみるとよいのではないでしょうか。後悔しない転職を、ぜひ叶えてくださいね。
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文/秋元祐香里 編集/栗原千明
■アンケート概要
アンケート実施期間/2021年7月28日~7月31日
有効回答数/220名
調査方法/女の転職type会員対象およびクラウドワークスでのWebアンケート
※調査データ(グラフ)は、小数点第2位以下は四捨五入しているため、合計しても100にならない場合があります。