将来のビジョンがないってダメ? キャリアプランが定まらない20代女性の悩みにキャリアコンサルタントが回答
5年後、10年後の目標を持ちながら働くことが大切……とは聞くものの、明確なキャリアビジョンを描けている人はどれくらいいるでしょうか? 特に女性の場合、結婚や出産といったライフイベントによって状況が変わることも少なくありません。
先が見通しづらい中で、どうのようにキャリアプランを立てたら良いか。前回に引き続き、キャリアコンサルタントの宮地夕紀子さんに相談しました。
【相談】キャリアプランの立て方が分からない!
よく「キャリアプラン」を立てることが重要だと言いますが、社会も会社も今後どのように変わっていくのか先が読めないため、1年後のことすらキャリアのプランをイメージするのが難しいと感じます。
将来のビジョンがないまま目の前のことをこなしていくうちに毎日が淡々と過ぎてしまい、このままでいいのかと悩んでいます。
【回答】「小さな達成感」に目を向けることがキャリアプランを立てるヒントに
相談者さんは現在25歳でいらっしゃるとのことで、学部卒と仮定すると、社会人生活も3年目といったところでしょうか。
新卒の時に感じていたような緊張感が少しずつ薄れ、通常業務を無理なくこなせるようになってきたからこそのお悩みではないかと推察します。
たしかにこの時代、定年までのキャリアプランが一直線に決まっている方はまれでしょう。どれだけ必死に業務に打ち込んでいても、ある日突然、会社が「この事業からは撤退します」と決めたら従業員はなすすべがありません。
しかも、こうした出来事がめずらしいものではなくなっている。このような時代にあっては、「3年後、5年後のことなんて考えられないよ」と感じるのも無理はありません。
しかし、そんな時代だからこそ、本質的なところからキャリアプランを考えることが重要になってきたとも言えます。
がむしゃらに頑張れば社内で出世できて、経験の蓄積で一生涯の仕事が保障される時代ではなくなった。だからこそ、変化にもしなやかに対応できる、普遍的なスキルを磨くことが大切なのです。
さて、その上で、新卒のころを振り返ってみてください。右も左も分からなくて、言われたことを言われるがままにやるだけで精一杯だったのではありませんか?
それと比較して、現在はどうでしょう。少し視野が広がって、できることの範囲が広がってきたのでは?
「毎日が淡々と過ぎている」ように見えるかもしれません。しかし、同じ仕事でも対応へのスピード感、顧客に先んじての対応力、交渉力や提案力の深み等、売上げのようなわかりやすい数値化はできませんが、実際には少しずつ成長しているのです。
時間はとめどなく流れていきますから、「まったく変化がない」なんてあり得ません。それを自覚できたら、次は変化(ゴール)をわかりやすく見える化していきましょう。
3年後、5年後という大きな単位では難しくても、3カ月先、半年先ならどうでしょう? それも無理なら、1カ月では? そのくらい短いスパンなら、小さな一歩でもいいので自分の課題を改善する、比較的小ぶりな目標も立てやすいのではないでしょうか。
大きな変化は、小さな変化の積み重ねです。毎日の業務をガラッと変えることはできなくても、ちょっとした工夫を積み重ねていくうちに職場の見え方が変わり、おのずとマインドセットも変わっていくはずです。
そうして数年を過ごすうちに、いつの間にか広い範囲を見渡せるようになったり、誰かのサポートも任される人材になっているかもしれません。
新しい役割を広げることは、会社がどのような状況になっても適応していける力をあなたに与えてくれます。場合によっては新しい活躍の場を考えることも可能でしょう。
このような見通しが立つと、不安な気持ちも少し和らぐのではと思います。
「そう言われても、目標なんてどう立てればいいか分からない」という場合は、より具体的に、普段の業務で「もっとこうすれば効率がよいのにな」と思うポイントを探してみるのはどうでしょう。
どんな単純作業にも、改善できるポイントは意外にたくさん眠っているものです。
もしくは同じ職場に「この人のキャリアストーリーを聞いてみたいな」と感じる人はいませんか? そうした話を聞いているうちに、「自分もこうなりたい」という姿が見えてくるかもしれません。
ひと昔前と違い、今の時代は「これがゴール」と決まっていない分、大きな目標は立てづらくなっています。しかし、だからこそ、小さな達成感を得ながら柔軟に方向転換していける良さもあります。
日々のちょっとしたきっかけをキャッチできるようにアンテナを張り、短いスパンで目標を立てて、変化を実感してみる。こうした小さな取り組みがやがて大きな成長につながりますので、ぜひチャレンジしてみてください。
取材・文/夏野かおる