チャレンジに伴う“成長痛”はどう乗り越える? 未経験転職、独立……20代で新しい環境に飛び込んだ女性たちの座談会

「やりたい仕事に挑戦したい」と一念発起して転職や異動にチャレンジしたものの、大変な日々につい弱音を吐いてしまうこともある。

しかし、新しいことを始めた当初は、何かとストレスや苦労が伴うもの。

その“成長痛”を乗り越えられるかどうかが、なりたい自分をかなえるための分岐点になる。

そこで、20代で新しいことにチャレンジして成長痛を乗り越えた結果、「なりたい自分」に近づいた女性たち3人に話を聞いた。

【3人がチャレンジしたこと】

だむはさん

彼女たちはどのように成長痛を乗り越えたのか? そして痛みを経て得たものとは?

「このままではダメだ」焦りが挑戦につながった

——今回は「新しいことにチャレンジして、それに伴う苦労を乗り越えてきた」お三方に集まっていただきました。まずは新しいことにチャレンジしようと思ったきっかけを教えてください。

だむはさん

私は社会人2社目に社員数が2000人くらいの大手SIerに入ったのですが、「このままでは、この会社以外では通用しない人材になる」と思ったのがきっかけでしたね。

当時はシステムの保守チームにいて、比較的平和なチームかつ定常作業が主なため、午前中で仕事が終わってしまう日もありました……。

そんな日々で成長実感もやりがいも感じられず、「20代をこの会社で過ごしたら、30歳でどんなスキルが身に付いているんだろう?」と、徐々に疑問を感じるようになったんです。

だむはさん

――「エンジニア=手に職」というイメージがありますが、当時はその実感はなかったのですか?

だむはさん

手に職が付いているかと言われると、疑問がありましたね。

エンジニアと言ってもいろいろあるのですが、当時の私はプロジェクト管理や設計、テストなどが主な担当業務。

プログラムを書いてシステム開発を行うことはほとんどできず、「プログラムは書けないけど上流工程やテストだけできる」といった状況でした。

だむはさん

職場環境はホワイトだったし、ワークライフバランスも良かった。

けれど、当時25歳の私はもっとワークに比重を置いて、この先のキャリアの可能性を広げたかったんです。

有馬さん

私は新卒で地方銀行に入行したのですが、働き方が多様化する世の中で「手に職を付けたい」という気持ちがキャリアチェンジのきっかけでした。

だむはさん

ーー銀行職は一生使える金融知識が身に付けられたり、資格を取得できたりしますよね。それでも新しい業界にチャレンジしようと思ったのはなぜだったんでしょうか?

有馬さん

たしかに勉強の機会は多くありましたし、たくさん資格も取得しました。

ですが、本当に自分のやりたいことは何なのかと考えた時、「世の中にあるサービスや商品を広めていく仕事がしたい」と気付いたんです。

その時に、おしゃれなデザインのWebサイトを見て「私もこんなサイトを作ってみたい」と興味が湧き、Webデザイナーの仕事にチャレンジしようと決意しました。

そこで、まずはスキルを身に付けるために『デジタルハリウッドSTUDIO』というスクールに入学。仕事をしながら通いました。

ーー新海さんはいかがですか?

新海さん

私は新卒で大手事務用品メーカーに入社し、海外事業に従事していました。

保守的な社風だったので、海外での新しい挑戦もほぼなく、さらにコロナ禍で仕事が激減してしまったのです。

私もだむはさんと同じように、成長実感を得られないどころか仕事がほぼない日々に焦りを感じていました。

今の会社以外のどこでも生きていける人材になりたかったので、20代のうちに「手に職」と言えるようなスキルを身に付けたかったんです。

ーー具体的にどんなスキルを身に付けようと思ったのですか?

新海さん

編集やライティングのスキルです。

モヤモヤや焦りを感じていた頃、文章に救われることが多く、私も文章で誰かの心に寄り添う仕事がしたいなと思ったんです。

だむはさん

※イメージ

チャレンジに付き物の苦しさ。その先にあったものとは?

ーー皆さん、当時の仕事にモヤモヤを感じて挑戦へと踏み出したのですね。新たなチャレンジには苦労が付き物だと思いますが、いかがでしたか?

だむはさん

実は転職活動が、全然うまくいかなくて……。

書類選考も含めると100社以上落ちましたし、「エンジニアとして成長の見込みがない」みたいな厳しいフィードバックをもらったこともありました。

その時に初めて「会社の外に出たら、自分って市場価値がないんだ」と気付いたので、ショックでしたね。

ーー初めて自分の客観的な評価を知ったのですね。

だむはさん

そこからスキルを高めるために、毎日コードを書くようになりましたし、エンジニア同士の勉強会などにも積極的に参加するようにしました。

その結果、念願のWeb企業への転職ができただけでなく、入社した年に社内表彰もしていただけたんです。

以前は成長を感じられない日々を送っていましたが、転職後に今までの努力が認められたことで「やればできる」という自信が付きましたね。

だむはさん

ーー努力の積み重ねが結果につながったのですね。有馬さんはWebデザイナーに転身するために仕事をしながらスクールに通ったとのことでしたが、当時はどのような生活でしたか?

有馬さん

平日は18時半に退社した後2~3時間動画講座を受けて、土日はほぼ終日缶詰め状態で猛勉強していましたね。

私が受講した『超実践コース』は、働きながら通う方はほとんどいなかったので、周りの学習ペースについていくのに必死で……。

ーー勉強に充てられる時間が限られる分、焦りも感じてしまいますよね。

有馬さん

はい。でもそんな時、スクールのスタッフさんに「自分のペースでいいんだよ、目的を見失わないで」と言われたことがターニングポイントになりました。

いつの間にか「卒業すること」だけが目的になってしまって、何のためにスクールに入学したのかを見失っていることに気付いたんです。

――忙しい毎日の中で、「スキルを身に付ける」という目的が見えなくなっていたんですね。

有馬さん

Webディレクターとして転職することができたのは、あの時に一度目的を思い出して、着実に目の前の壁を乗り越えられたからこそ。

転職後は慣れない業務に苦労することもありましたが、スクールで過ごした時間が今の自分の励みになっています。

入社して半年がたった現在では、希望していた大手小売業の重要な案件を任せてもらえるようにもなりました。

うれしかったし、少しは自信が持てるようになってきたかなと思います。

だむはさん
新海さん

私も有馬さんと同じく、全くの未経験業界・職種に転職したので、初めは右も左も分からない状態でした。

企画を上長に提案しても採用されず、取材した内容をまとめた原稿もダメ出しばかり……。

さらに、編集職は記事を作る以外にアクセスを分析したりSNSを運用したりと、業務の幅が広いんです。

苦労の日々でしたが、徐々に「これは私に与えられた試練なんだ」と思うようになりました。

――試練……! なぜそう思ったのでしょうか?

新海さん

どれも一人前の編集者になるには必要なスキルだし、私が目指す「どこでも生きていける人」になるためには膨大な仕事量に対応できるバイタリティーも欠かせない。

そのためには、必ず乗り越えないといけないハードルだと思ったんです。

――皆さんは、ハードルを乗り越えたと実感したエピソードはありますか?

だむはさん

「周りがどう言おうと、やってみないと成功するか失敗するかなんて分からない」と学びましたね。

転職時には「エンジニアとして成長の見込みがない」なんて言われましたけど、Web系企業では早々に表彰してもらうなど実績を出せましたし、転職して間もない頃に『sister』を一人で立ち上げることもできました。

――『sister』は、女性エンジニア向けの相談支援プラットホームですよね。以前もWoman typeで取材させてもらいました。

だむはさん

当時はフリーランスとして活動していたのですが、今年8月についに会社を立ち上げたんです。

Web系エンジニアに転身しようと勉強したこと、そして『sister』を立ち上げた頃に立てた「30歳までに自分のサービスで食べていける人材になる」と目標に向かって努力したことが今につながっているのは、間違いありません。

だむはさん

――すごい! 今まさに新しいステージにいる段階でしょうか?

だむはさん

その意味ではまだ“成長痛”の真っただ中かもしれないですね(笑)

けれど、徐々に運営を手伝ってくれる仲間が増えて、現在はチームでつらいことを一緒に楽しんでいる感覚だから、乗り越えられる自信があるんです。

それに、「このままじゃヤバい」と思って必死に勉強して得たスキルがあるから「エンジニアとしての私」は絶対死なない

これからも、やりたいことがあれば恐れずに挑戦しようと思えるようになりました。

ーー成功体験があるからこそ、「やってみたい」に素直になる自信が付いたんですね。

新海さん

チャレンジすることで確かに大変なことはあると思います。

ですが私も、つらかったことはその分、後に必ず成果として現れることを学びました。

最初はダメ出しばかりだった取材や原稿も、入社して半年たった今は褒められることも増えましたし、記事を読んだ方からポジティブな反応を頂くこともありました。

前職を辞める時、周りから「大手企業を辞めるなんてもったいない」と言われましたが、挑戦して良かったと思います。

有馬さん

私も銀行員からのキャリアチャレンジは、大きな決断でした。

ただ、「一度きりの人生だから、自分のやりたい仕事に挑戦したい」と強く思ったんです。

時間はかかりましたが、勇気をもってチャレンジすることで、大きく成長できることを実感しましたね。

だむはさん

成長するためには、“沈みこむ”ことも必要

ーー皆さんに率直に聞きます! 今、仕事は楽しいですか?

だむはさん

はい! もはや呼吸するのと同じ感じで、仕事が生活の一部になりつつあるくらいです(笑)

いわゆる“ワークアズライフ”(※)な毎日ですね。『sister』の事業をさらに成長させていきたいです。

(※)ワークアズライフ:仕事とプライベートを分けず、全てが仕事であり趣味だとする考え方のこと

有馬さん

私も仕事が楽しいです。なぜなら、今は自分がやりたいことに向けて、必要なスキルや経験を一つ一つ着実に手に入れている感覚があるから。

今は、夢に向かって忙しいながらも充実した日々を送っています。大変な毎日でも楽しさを見つけながら、スキルアップしていきたいですね。

新海さん

私の大好きなサンリオキャラクターの言葉で、「高くジャンプするためには、一度深く沈む必要がある」というのがあります。

新海さん

転職したての頃はつらさや苦しさばかり感じていたのですが、最近はまだまだ“成長痛”を感じつつも、少しずつ楽しいと思えるようにもなってきました。ようやくジャンプし始めた感じでしょうか(笑)

今は「これからもっと高く高くジャンプしてやる!」という前向きな気持ちです。

もし今深く沈んでしまっている人は、きっとこれからがジャンプするチャンス。一緒に頑張りましょう!

プロフィール

だむは(本名・咸多栄)さん

2016年に独立系SIerへ新卒入社し、VB.NETやC#での開発に携わる。その後、18年に社員数2000人規模のSIerへ転職。20年8月にWeb業界に転職し、正社員として働く傍ら、女性エンジニア向け相談支援プラットフォーム『sister』を開発、21年5月にサービスを開始。同年11月に独立し、22年7月にbgrass株式会社を立ち上げる ■Twitter

プロフィール

有馬彩香さん

15年に地方銀行に入社し、営業職として働く。2021年2月にデジタルハリウッドSTUDIO渋谷「Webデザイナー専攻 超実践型就職・転職プラン」に入学し、仕事と両立しながら実践的なWebデザインを学ぶ。22年3月末で銀行の営業職を退職し、22年4月より大手ITアウトソーシングサービス会社に勤務。現在は大手企業のサイト運用を担当し、ディレクター兼コーダーとして勤務

プロフィール

新海公美さん(仮名)

19年大手事務用品メーカーに入社し、海外事業に従事。OEMを中心とした商品企画・生産管理を行うかたわらSNS等を用いた海外マーケティングも担当。22年4月より、メディア事業会社に勤務。現在はオウンドメディアの編集を担当

取材・文/柴田捺美(編集部)