20〜30代女性の半数以上が利用する『@cosme』ヒットを支えるPR担当者の“協力者を生む”コミュニケーション術

話題の“あの商品・サービス”を生み出したのはどんな人?
今をときめく!ヒットgirlの頭の中

働く女性たちに愛されているヒット商品やサービスを生み出した女性たちの頭の中を大解剖! ヒット誕生の背景にはどんなチームワークがあるのだろう?明日から仕事に生かせるヒントを学ぼう

コスメや美容グッズを買う前のリサーチにおいて圧倒的な支持を集める『@cosme』。

現在のWebサイトの月間ユニークユーザーは1,600万人を超える。

コスメや美容プロダクトのクチコミのほか、美容トレンドに関するコンテンツやランキングなども充実。

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その人気はメディアだけに留まらず、国内最大級の正規品の取り扱いブランド数を誇るECサイト『@cosme SHOPPING』や、プチプラからデパコスまで幅広いコスメを取り扱う実店舗『@cosme STORE』も24店舗展開。2020年にオープンした原宿の旗艦店『@cosme TOKYO』は、ひと月で4億円を売り上げることもあるという(※23年1月現在)。

そこで、約7年間に亘り『@cosme』のPRを担当してきた野田智子さんと坂井綾子さんにインタビュー。

社内外を巻き込みながらヒットを生み出すPRチームには、きっと驚きのテクニックがあるはず……?

そんな取材班の期待に対して、お二人からは少し意外な回答が返ってきた。

【プロフィール】

プロフィール

株式会社アイスタイル
コーポレートコミュニケーション本部 エクスターナルコミュニケーション室
室長 野田智子さん

美術品のオークションハウスやオーディオ機器メーカーで広報として経験を積み、2015年に株式会社アイスタイルに入社

プロフィール

株式会社アイスタイル
コーポレートコミュニケーション本部 エクスターナルコミュニケーション室
坂井綾子さん

飲食業界やブライダル業界で接客業を経験後、2017年に株式会社アイスタイルに入社 ※今回はテキストのみ登場

Webメディア・EC・店舗のPRをたった4人でカバー

ーーお二人は社外広報として『@cosme』のPRを担当しているとのことですが、具体的にどんな仕事をしているのでしょうか。

野田:メディアやSNSを通じて社外に情報を発信することで、『@cosme』の認知を拡大し、サービスのファンを増やすのが私たちの役割です。

もともと『@cosme』は、いわゆるクチコミサイトでしたが、現在はメディア・EC・実店舗が一体になったプラットホームサービスになっています。

われわれも、実店舗とECも含めた『@cosme』のプラットホーム全体のPRを担っています。

また、当社は『@cosme』を活用した化粧品・美容ブランド向けのマーケティングや販促サービスも提供しているので、一般消費者に向けたPRに限らず、美容ブランド向けのPR活動も行っています。

坂井:具体的には、プレスリリースやニュースレターの配信、記者発表会の企画運営、TVや雑誌・Webメディアなどの取材誘致や対応、そしてインフルエンサーを活用したPRなどが主な業務です。

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ーー何名のチームで担当しているのでしょう?

野田:21年から私と坂井の二人三脚の期間が続きましたが、22年の夏から新しいメンバーが加わって現在は4人が所属しています。

坂井:主に私がユーザー向けのPRを、別のメンバーが化粧品メーカーなどの企業向けのPRを担当するというように、それぞれメインの領域はあるのですが、業務量が時期によって変動するため、普段からお互いに状況を見てフォローしています。

ーー少数精鋭のチームで協力しあっているのですね。それぞれの担当領域では、どのようなことを目標にしているのですか?

野田:事業全体としては、 『@cosme』の何かしらのサービスを使ってくれる方、特に 『@cosme』の会員登録をした上で何らかのアクションをしてくださる方を増やすことが重要な目標です。

『@cosme』に多くのユーザーが集まれば集まるほど、より多くの美容ブランドの方が自社の商品のマーケティングに 『@cosme』を活用してくださるようになりますから。

『@cosme』は、日本の20代〜30代女性の半数以上が毎月使ってくださっていて、幅広い認知を獲得しています。

その一方で、未だにクチコミやランキングのイメージが強いのはPRの課題。

ECや店舗を含めたプラットフォームとしての『@cosme』をより多くの方に知っていただいて、さらに使っていただくのが私たちの中長期的な目標の一つです。

社内外の「協力者」との密なコミュニケーションが『@cosme』の成長に

ーー1年間を通して、どのような仕事が主になるのでしょう?

野田:ルーティン業務はあまりないのですが、PR活動の大きな柱の一つが『@cosmeベストコスメアワード』です。

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『@cosmeベストコスメアワード』は毎年6月と12月に実施しており、『@cosme』で支持されたコスメの表彰と、次の半年のトレンド予測を発表します。

クチコミや受賞データ情報を分析しているチームと連携しながら、アワードを受賞した商品の裏に「どのような世相や消費者心理があるか」を分析し、その年の美容トレンドの総括や次のトレンド情報としてまとめる。

それをメディアを通して世の中に伝えるのが私たちの役割です。

ーー具体的に、どのような動きをするのでしょうか?

坂井:トレンド予測に関しては、部署を横断した「トレンド予測部」というチームを組んで、そこに私たちも参加しています。

美容に関するさまざまな専門性を持ったメンバーが集まっているので、そのメンバーの知見や、店舗で働いているスタッフやユーザーへのアンケートなどをもとに次のトレンドの芽を探し、キーワード化します。

そうしてメディアに対して発表したり、実店舗でもトレンド予測をテーマにした特集コーナーを展開したりしてPRにつなげています。

毎年発表の直前までアンケートを集計をしたり、エビデンスとなるデータを集めたり……社内の関係者を巻き込みながら、短期間で集中して準備していますね。

ーー坂井さんはユーザー向けのPRを主に担当しているとのことですが、具体的にどのようなことをしているのでしょう?

坂井:例えば、パブリシティーに関しては、今はテレビ番組での露出に力を入れています。

まだ取材の内容が決まっていない段階から撮影の相談をいただくことも多いので、コンテンツの企画からお手伝いすることも多いですね。

また、YouTuberの方やタレントさんから『@cosme TOKYO』でのお買い物動画の撮影依頼をいただくことも増えており、多いときには月に10件ほど撮影に立ち会うこともあります。

それらに加えて、最近は先ほどお話しした『@cosmeベストコスメアワード』や、ECのセールイベントにあわせて、いわゆる「美容垢」とよばれるインフルエンサーさんを起用した施策も実施しています。

ーーPRをお願いするインフルエンサーさんは、どのように選ばれているのですか?

坂井:美容やライフスタイルに関する発信をされているアカウントをリサーチして、ぜひ『@cosme』のPRを一緒にしていきたいと思った方を一人ずつリストアップした後、直接DMをお送りしています。

継続してお付き合いしているインフルエンサーさんも増えてきましたが、常にSNS上でのリサーチは欠かせません。

野田:私も常にSNSでのリサーチはしていて、気になった方がいたらすぐに坂井にチャットで共有しています。「このツイート話題になってるね」「このPR企画参考になるね」など、ラフに話しています。

地道な「当たり前」を積み重ねた先にヒットがある

ーー先ほど「常に助け合って仕事を進めている」とのお話がありましたが、お互いの状況はどのように共有しているのですか?

野田:今は新メンバー含め4人で主に動いてますが、朝会で毎日それぞれの業務状況を共有しています。

それから、社内外のチャットやメールにはその案件に直接関係ないメンバーも含めて全員を入れるようにしていますね。

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ーー先ほどの『@cosmeベストコスメアワード』など、部署内に限らず社内のメンバーとコミュニケーションを取ることも多いですよね。

いろいろな人を巻き込んで仕事を進めるのはテクニックが必要かと思いますが、どんなことに気を付けていますか?

野田:皆それぞれが何らかの領域のプロフェッショナルなので、そこに対して敬意を払うことは大切にしています。

正直、小手先のテクニックのようなものはないと思います。

坂井:私も、仕事で関わる相手へ敬意を払うことは大切にしています。

例えば、突発的な仕事の依頼を他部署の人にしなくてはならず、どうしても無理を聞いてもらわなければいけないことがあったとします。

そのときに、こちらの要望を一方的に押し付けるだけでは、快く仕事を引き受けてはもらえませんよね。

そこで大切なのは、相手の状況を理解した上で、「なぜこの仕事をお願いするのか」「それによって、『@cosme』にとってどんなPR効果があるのか」を丁寧に説明すること。

たとえなかなか伝わらなかったとしても、 「どうして理解してもらえないのか」と腹を立てるのではなく、「どうやったら理解してもらえるか?」を考え、お互いがWin-Winな関係になるようなコミュニケーションを心掛けています。

ーーメディアやインフルエンサーの方など、社外の人と仕事をする際に気を付けていることはありますか?

坂井:良好な関係性をつくることです。

一度取材をしていただいたり、PRに協力いただいたりして終わりにするのではなく、「美容に関する企画をつくるときには@cosmeに相談しよう」「@cosmeのPRなら協力したい」と思っていただけるように、相手のニーズを汲み取ったコミュニケーションや、迅速で柔軟な対応を大事にしています。

ーーそうした仕事の基本が、プラットホーム全体としての『@cosme』のヒットにつながっているのですね。

野田:本当にそうだと思います。特に『@cosme』は美容領域で幅広く事業展開しており、関係するメンバーの数も非常に多い。

チームのメンバーだけに限らず、多くの人を巻き込んで円滑に仕事を進めるスキルは欠かせないと思います。

そこに絶対うまくいくコミュニケーションのコツというものはなくて、基本的なことを大切にすることに尽きるのかなと。

坂井:「相手は自分の鏡」だと思って接しています。自分がされて嫌なことはしないとか、嫌な態度を取られたとしても相手の状況を想像する力は大切ですよね。

ーー最後に、今後の展望を教えてください。

野田:より多くのユーザーさんから「美容に関する情報を知ったり、コスメを買うなら、『@cosme』だね」と言ってもらえるサービスにするために、引き続きPRを頑張っていきたいです。

また、美容ブランドを持っている企業の方からは「ビジネスで困ったときには『@cosme』に相談したら解決できる」と思っていただけるような情報発信に努めていきたいですね。

これからはテレビなどのメディアへの露出に限らず、SNSやイベントを活用することも含め、より幅広い手法でユーザーとの交流を深めていけたらと思います。

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取材・文/於ありさ 写真/ご本人提供 編集/柴田捺美(編集部)