「会社で働く」が全てじゃない! フリーランスで働くママが会社員を辞めて分かったこと
2015年10月10日、二子玉川ライズにて、ランサーズ株式会社・株式会社Waris・オクシイ株式会社 の3社共催によるイベント『独立して見つけた私らしいベストバランス-やりがいも収入も、そして育児もあきらめない私流-Mothers Workstyle Collection 2015-』が開催された。
『「育休世代」のジレンマ』(光文社新書)の著者である女性活用ジャーナリストの中野円佳さんをファシリテーターに迎え、出産を機に会社員からフリーランスに転身して活躍している3人のワーキングマザーによるパネルディスカッションが行われた。
待機児童、経営不振……仕事を続けていくための方法の1つがフリーランスだった
今は正社員として会社で働いているけれど、将来的に結婚・出産を経験した際に、今の職場で同じように働き続けることができるのか不安に思っている人は多いだろう。フリーランスとして複数の企業の人事業務を請け負う松屋香里さんが働き方を変えたのも、息子が保育園に入れなかったことがきっかけだった。
「息子が生まれて3年間保育園に入れず、幼稚園に通うようになったとき、このまま正社員として働くのは無理だと思ってやむなく退職したんです。会社員時代は死ぬほど働いていて、『自分は会社から離れたらダメになる』、『会社も自分がいなくなったら困る』と思い込んでいましたが、いざ職場を離れると、自分がいなくても会社は通常どおりだったし、自分が会社に追われることもなくなった。私、何にしがみついていたんだろう、と力が抜けましたね。だけどやっぱり専業主婦は肌に合わず、もう一度働きたいという気持ちが強くなったので、会社に入るのではなく働き方を変えて仕事をしようと思いました」
フリーランスの税理士として活躍する鈴木まりこさんも、転身の理由を「息子のアレルギーを理由に保育園に断られたことが契機となった」と話す。
とはいえ、フリーランスという選択に興味があっても、「専門職としてのキャリアがないと活躍はできないのでは?」と、二の足を踏んでしまう人も少なくないだろう。
だが、クラウドソーシングを活用しフリーのライターとして仕事をしている吉見夏実さんは、本業での経験が無い中でフリーランスへの転向を実現している。
「私は大学を中退して第一子を出産後、保険会社に就職しました。その後、役職にも就いて順調に仕事をしていたんですが、会社が経営不振になってしまって……。将来に不安を感じて、副業としてクラウドソーシングを使ってライティングをやってみたんです。その後会社を辞め、副業から本業にシフトした形でフリーのライターになりました」
お小遣い程度の収入しか得られない?
フレキシブルに働けることが魅力である一方、収入が不安定なイメージがあるフリーランス。ファシリテーターを務めた中野さんも「“お小遣い稼ぎ”程度しか収入を得られないイメージが一般的にはありますよね」と疑問を投げ掛けた。
未経験からフリーライターを始めた吉見さんは、「最初はまさにお小遣い稼ぎ程度でした」とスタート当時を振り返る。
「フリーになったばかりのころの収入は月3~4万円程度。ですが、会社員時代に身に付けたクライアントに対する営業・提案力を活かしつつ、経験を積んでいくうちに、リピートで受注が入ったり原稿の単価が上がっていったりするようになりました。今では子どもと自分が生活していくのに十分な収入を得られるようになりましたね」
フリーランスになっても会社員時代と同水準の収入を得ているケースもある。退職した会社から仕事を請け負っているという背景もあり、税理士の鈴木さんの収入は会社員時代の8~9割。ただし、「前にいた会社から仕事がもらえなくなってしまうと収入がなくなるのはリスク」と話す。
片や、「もっと家族との時間を増やしたいと思い、仕事をする時間を減らした」という松屋さんの収入は会社員時代の半分ほど。しかし「希望通り、プライベートの時間が増えたので収入には納得している」という。
「自分には稼ぐ力がある」という自信が生まれた
フリーランスになったことで、ライターの吉見さんは「仕事に自信を持てるようになった」と話す。
「会社員時代は、もし会社にいられなくなってしまったらどうしようと悩み、ライターを始めたばかりのころも、仕事がなくなったらどうしよう、と常に不安に駆られながら働いていました。しかし、フリーでお金が稼げるようになると、自分の価値が収入として直接反映されることが実感できる。だからこそ、自分自身に『稼ぐ力』があることが分かったし、もし何かがダメになったとしてもどうにかなると思えるようになりました」
会社員として働いていると、『会社で働くのが当たり前』と思い込んでしまいがち。だが人事の松屋さんは「思い切って会社を離れたことで理想のバランスで仕事と子育てができるようになった」という。
税理士の鈴木さんの場合も、「私は自宅から近くの託児所付きスペースで仕事をしているので、子どもの近くにいられるし、通勤電車に乗らなくていいことがストレスフリーにつながっています」と、自分の理想とするライフスタイルに合わせて働く場所や時間を調整できることをメリットに挙げていた。
今の日本社会では、ライフステージの変化を機に「働きたくても会社に行けない」状況に陥ってしまう女性は多い。子どもとの時間や仕事のやりがいなど、自分の求めるものを会社員として実現することが難しいのならば、フリーランスも一つの選択肢になりそうだ。
取材・文・撮影/大室倫子(編集部)