離婚女性たちが語る、離婚後の“意外な”生活「今が一番楽しいかも」

離婚妻座談会

離婚と聞くと、何となく不幸せな姿を連想する人も多いかもしれない。

パートナーと離れて自分らしく生きたいけれど、離婚後に大変な思いをしている女性の話を聞くと、怖くて一歩を踏み出せない……なんてこともあるのではないだろうか。

そこで、離婚妻座談会のラストは、「離婚後のリアル」について聞いてみた。すると、世間のイメージとは少し異なる離婚後の生活が見えてきた。

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<座談会の参加者>
●ライター(フリーランス) 山口さん(仮名)

●デザイナー(正社員・二児の母) 小林さん(仮名)

●専業主婦(一児の母) 川上さん(仮名)

※離婚当時

体力的にも精神的にも追い込まれた、離婚前後

編集部

離婚直後の生活は大変なことも多いと思いますが、皆さんはどうでしたか?

ライター
山口さん

私は生活できるだけの稼ぎもあったし、子どももいなかったので、そこまで大きい苦労はなかったかな。

専業主婦
川上さん

安定した職に就いて落ち着くまでは大変でしたね。前回の記事でもお話したんですが、専業主婦歴が長いと仕事をするメンタルへ持っていくのが難しいし、漠然とした不安からついネガティブになっちゃうんですよね。

ネットにある専業主婦の就職についての情報は「大した仕事はできない」などネガティブなものが多いので、ポジティブな情報にしか触れないように情報規制をしていました(笑)

離婚後の生活について考える女性
デザイナー
小林さん

私は離婚前後が、今までの人生で一番忙しかったように思います。

離婚の手続きって、とにかく役所に足を運ばなければいけないことが多いんです。

戸籍の変更や住んでいる家の売却手続き、財産分与を決めるために必要な書類など、いろいろな役所をハシゴしなきゃいけないんですが、役所って平日の9時~17時しか開いてないんですよね。

会社員が働く時間と重なるので、子どもを1時間早く保育園に連れていって役所に行ってから出社して、昼休みはまた違う役所に行って1時間で戻ってきて、帰宅後は家事・育児、子どもが寝た後は持ち帰った仕事や引っ越しの荷造りをして……という生活が数カ月続きました。

専業主婦
川上さん

ひー!大変!

デザイナー
小林さん

気持ちはスッキリして元気だったので食欲はあるんですが、物理的に食事の時間があまり取れず4キロくらい痩せました(笑)

睡眠時間も削っていましたし、体力的に一番ハードな時期でしたね。

編集部

それは大変でしたね……。ワンオペで全てこなしていたのでしょうか?

デザイナー
小林さん

元夫は離婚の半年前くらいから別居状態でしたし、実家も手伝いに来てもらえる距離ではなかったので、基本はワンオペです。

ただ会社の上司には全て話していて、「少し休んでもいいよ」と気遣ってもらえていたので、精神的にはすごく救われていました。

忙しい職場だったのでプライベートなことで周囲に負担をかけるのは気が引けてしまい、休むことはしませんでしたが、職場の人たちの温かさは心の支えでした。

ライター
山口さん

小林さんが仕事を通して信頼関係を築いていたからこそ、周囲がサポートしてくれたのかもしれませんね。

周囲の温かさやサポートのイメージ
編集部

気持ちは元気だったとのことですが、精神的に大変な部分はありませんでしたか?

デザイナー
小林さん

離婚直後は、子どもが新しい環境に馴染めなくて。

「学校に行きたくない」と布団の中で泣いている姿を見ると、「自分の選択は間違っていたのかも……」と思うこともあり、私のメンタルにもダメージはありました。

専業主婦
川上さん

私も離婚をする時、子どもが幸せになる選択なのかどうか分からず、決断するまでとても悩みました。

小林さんが「これでいいんだ」と思えた理由は何だったのでしょうか?

デザイナー
小林さん

元夫が「妻は夫のサポートと育児だけをしていればいい」「妻は夫に口答えをしてはいけない」といった発言を繰り返すようになっていたことが大きかったですね。

感受性豊かな年頃の子どもたちをこの価値観に触れさせたくないという思いが強くありました。

専業主婦
川上さん

なるほど……。

デザイナー
小林さん

目の前の状況だけを見ると、確かに子どもたちにとって正しい選択ではないようにも見えるかもしれません。

でも長い目で見ると、父親の差別的な発言に触れ続けたり、まともに会話もしない両親の姿を見続けたりする方がずっと不幸だと思ったんです。

あとは、私自身が幸せになる未来が見えなかったから。自分も幸せになる権利はありますからね。

「結婚していた時よりも充実している」離婚から数年たった今の生活

離婚届
編集部

皆さん、離婚から数年たっていると思いますが、生活はどのように変化しましたか?

専業主婦
川上さん

今は生活も安定して、ようやく穏やかに過ごせるようになりました。

今働いてるのはベンチャー企業で、人事業務や社内ソフトを使った事務や管理業務など幅広い仕事を任せてもらっています。

できることの幅が広がっている実感もあるし、働くのが楽しいです。

離婚する前は、一人で子育てをしながら仕事をすることにすごく高いハードルを感じていたのですが、「自分でもできるんだ」と自信が付きました。

自分が強くなった実感を得られたのは、離婚で得られたメリットかもしれません。

ライター
山口さん

私も今の生活はとても充実しています。

結婚していた時は、自分の人生をあきらめていたようなところがありました。「こんなことにチャレンジしてみたい」「こんなことを学んでみたい」など元夫に相談を持ちかけても、いい顔をされないことが多くて。

好きにやってはいましたが、中には諦めたこともありました。

今は行きたいところがあればいつでも行けるし、やりたいこともすぐにできる。何かに挑戦しようと思った時にいつも彼が足かせになってしまっていたので、それがなくなった今、ライター業以外にもいろいろなことにチャレンジできています。

世界がパーッと広がり、友人たちからは「今の方がいい顔してるね」とよく言われます。離婚して自由になった感じ。

離婚して自由になった女性
デザイナー
小林さん

二人とも素敵ですね! 私も生活が落ち着き、平穏に過ごしています。

子どもたちもすっかり学校や保育園に馴染み、「こっちの生活の方が楽しい!」と言うようになりました。

離婚前の1年くらいは家の中もギスギスしていて、ストレスからぐずる子どもにイライラして……ということも多かったのですが、今は精神的なストレスがなくなったので、子どもたちと毎日くだらない話をしながら皆でゲラゲラ笑えています。家の中がすごく明るくなりました

編集部

離婚の原因の一つが仕事観のズレだったと言っていましたが、仕事の方はどうですか?

デザイナー
小林さん

やりたい仕事に挑戦できましたし、昇進もしました。

仕事を辞めろと言われていた生活から解放されて、何のしがらみもなく全力で仕事にアクセルを踏めるようになったからかな。

離婚していなかったら、この昇進もなかったと思います。

離婚って案外大したことじゃない

編集部

離婚直後は大変そうでしたが、皆さん今はすごく充実した毎日を送っていそうですね!

とはいえ離婚ってかなりエネルギーを使うと聞くんですが、実際どうですか?

デザイナー
小林さん

エネルギーはものすごく使いますね。離婚後もワンオペで育児をするのはやっぱり大変。

でも人間って慣れる生き物なので、自分なりにうまく手を抜きながらやっていくスタイルを見つけられるものだと実感しています。

最近は、地域で子育ての相互援助活動を行う「ファミリーサポート」やシングルマザーの支援など、行政のサポート体制も充実していますしね。

専業主婦
川上さん

調べてみると、意外に知らない支援体制が見つかったりしますよね。

デザイナー
小林さん

そういうのをうまく使えると、ワンオペ育児の不安も少し軽減できるはず。

私は今の方が育児が楽になった感覚すらあります。多少手を抜いても誰にも干渉されないので、解放的な気持ちで毎日過ごせるからかな(笑)

安定した仕事・収入があるのなら、離婚に対してそんなに気負うことはないような気がします。

コーヒーを飲んでリラックスする女性
ライター
山口さん

離婚に対してネガティブな印象が強い人は多いですし、怖くて踏み出せない気持ちは分かりますが、私もいざ離婚してみると、案外大したことではないなと感じています。

私の場合は子どもがいなかったのと、お金の心配もなかったので、自分さえ覚悟を決めれば決断しやすかったかな。

今のパートナーとの幸せな未来が見えない人は、収入さえちゃんとあるなら離婚も一つの選択肢。私は離婚して本当に良かった!

専業主婦
川上さん

離婚に対する世の中のネガティブな先入観はよく感じますね。

特に専業主婦の子連れ離婚というと、「不幸な人」「苦労している人」という先入観を持たれやすいんですよ。

興味本位でコンタクトを取ってくる人もいて、モヤモヤすることもあります。

ライター
山口さん

いるいる! でも自分の生活が充実していればそういう雑音も気にならなくなるよね。

デザイナー
小林さん

そうですね。心配して声を掛けてくれる人もいますけど、「なんだ、元気そうじゃん」って言われることも多いです(笑)

専業主婦
川上さん

私はずっと専業主婦でアルバイトもしていなかったので、確かに世の中のイメージ通り大変な思いもしました。

でも今は、幸運なことに友人から就職先を紹介してもらえたので、穏やかに過ごせています。

よく「離婚してもどうにでもなる」とは聞いていたけれど、どうにでもなるイメージが湧かないから怖いんですよね。

私がどうにかなったのは、安定した仕事と出会えたからかな。

編集部

最近はリモートワークやフレックス制を取り入れる会社も多く、育児と両立しやすい仕事が増えています。

世の中全体が人材不足でもありますし、川上さんのような境遇の人が就職先を探すハードルは、以前より下がっているかもしれませんね。

デザイナー
小林さん

私は離婚を考え始める前の頃を含めても、今の生活の方が楽しいです。

子どものためにとか、生活水準を保ちたいとか、離婚を踏みとどまる理由はたくさんあるけれど、「どちらの方が自分と家族が幸せになれるか」という視点で決断できるといいですよね。

離婚の決断には複雑な要素が絡むけれど、自分が幸せになる権利を大事にしていいと思います。

取材・文/光谷麻里