結婚は「仕事を辞めるきっかけ」ではない。離婚女性たちが痛感した“自分で稼ぐ”重要性
最近は寿退社という言葉はあまり聞かなくなったが、それでも結婚したら専業主婦になる人が約3割を占めている。
しかし、女性が夫の経済力に頼りきることにはリスクもある。
養われることで対等な関係を築きにくくなり、モラルハラスメントの被害に遭いやすかったり、パートナーと別の道を歩みたいと思っても自身に収入がないことから離婚を選択しにくかったり……。
「いやいや、私には無関係の話だし」
「私は離婚なんてしないから大丈夫!」
そう思った“恋は盲目”な女性たちにお届けしたいのが、「かつて自分もそう思っていた……」と話す離婚経験者の体験談。
仕事をしている・していない、子どもがいる・いないなど、さまざまな立場の離婚経験者たちが、「結婚後、自分に仕事があることの意味」を語る。
●デザイナー(正社員・二児の母) 小林さん(仮名)
●専業主婦(一児の母) 川上さん(仮名)
※離婚当時
「毎日節約することで頭がいっぱい」養われる生活の息苦しさ
皆さんは、結婚を機に仕事や働き方は変えましたか?
もともと会社員として働いていて、仕事も働き方も変えませんでした。
結婚を機に仕事をセーブしようとは考えなかったんですね。
私は母子家庭で育ったのですが、母はバリバリ働いていたわけではなかった上にきょうだいも多かったので、生活にそんなにゆとりがなかったんですよね。
なので私は手に職を付けて、自分で稼いで生きられるようになろうという意識が強かったんです。
私も会社員でしたが、仕事を辞めたりセーブしたりする選択肢はなかったです。
そもそも「仕事を趣味にできるくらい楽しめる職に就く」という軸で就職活動をして選んだ仕事だったので、すごく楽しくて。辞める理由がなかったな。
私は結婚前から仕事をしていなくて、「仕事か結婚か」の二択で結婚を選んだのと、元夫も私に家にいてほしいと考えていたので、お互い意見一致でそのまま専業主婦になりました。
皆さん、結婚しても仕事面の変化はなかったんですね。
そうですね。ただ、気持ちの面では結婚後に大きな変化があって。収入がゼロなことに、日に日に息苦しさが強くなっていったんです……。
彼からクレジットカードを渡されていたのですが、決められた金額以上を使うと「これは何に使ったの?」と確認されるため、節約に必死で。
ヨーグルトも菌から手作りしていましたし、ドレッシングも買ったことがありません(笑)
すごい!!
尊敬……!
お金を稼いでない分、貢献しなきゃ存在価値がないと思ってしまっていて。
価値を生み出さないと「専業主婦をクビになる……!」と常に切迫感があったんです。
アルバイトなど、何かしら収入があったら、もう少し気が楽だったかもしれませんね。
彼は自分が家にいる時は、私も家にいてお世話をしてもらうことを望んでいたので、彼がいない時に短時間だけアルバイトをしたことはありました。
ただ彼のお休みが不定期だったため、彼にスケジュールを合わせてシフトを組むのが難しくて。結局専業主婦をすることにしたんです。
川上さんは、離婚を考えるようになる前から「仕事をしていれば良かった」と感じていたのでしょうか?
うっすらと感じてはいましたが、本格的に後悔し始めたのは「この人と一緒に暮らすのは嫌だな」と思い始めた時ですね。
前回の記事でもお話ししたのですが、日に日に彼がちょっとしたことで怒鳴るようになり、求められる節約もエスカレートしていき、育児のストレスと重なってだんだん耐えられなくなっていったんです。
頭の中を何度も離婚がよぎるんですが、無職の期間が長かったし子どももまだ小さいし、就職は難しいだろうなと結局我慢するしかなくて。
あの頃は、何かしら仕事をしておけば良かったと心底思っていました。
離婚したい気持ちに「待った」をかけた、お金の不安
皆さんが離婚するときにネックになったポイントはありましたか?
経済面の心配がなかったので、これといって大きな障壁はなかったかな。
知人から、「離婚したいけど、お金の面が不安だからしない」という話を聞いたりもしていたので、そこを心配せずに自分にとって最良の選択をできたのは良かったと思います。
私は子どもが二人いたので、引っ越し先や学校、保育園探し、離婚関連のもろもろ手続きと育児・家事を一人でやりながら仕事量も変わらず……と体力的に大変でした。
でもパートナーとの間のストレスがなくなったのと、お金の心配がなかったので、結婚していた時より気持ちは楽でしたね。
私はやっぱり一番はお金です。
働き口はあるのか。働きながら子育てなんてできるのか。子どもはまだ0歳だし、働くことの想像ができなくて、不安で胸がいっぱいでした。
このまま結婚していたら子どもを大学まで入れられるでしょうし、習い事だってさせてあげられる。
離婚を選択することで、いわゆる“普通のこと”もかなえてあげられないんじゃないかと思うと、迷ってしまって……。
その不安はどうやって乗り越えたのでしょう?
もう精神的に限界だったので、不安でもやるしかなかったんですよね。
取りあえず家にいながらお金を稼ぐ方法を考えなきゃと最初にやってみたのが、ブログサイトの立ち上げ。
更新していれば、小銭レベルでもお金は入ってくるかなと思って。
Googleアドセンスに合格して初めてお金が入ってきた時は、「私でも稼げる!」とちょっとした感動がありました。
まだ小さい子どもを育てながら、勉強するのも大変でしたよね。川上さんは、今は企業に就職して働いているんですよね?
やっぱり手堅い仕事をしないと生活は安定しないなと思い、今は友人が紹介してくれた企業に就職して、バックオフィス業務を担っています。
仕事と育児の両立生活はどうですか?
働いてお金を稼ぐって楽しいなと感じています! 仕事と育児の両立ってしんどいよ~って聞いてたんですが、やってみたら楽しかった。
離婚前よりもイキイキと過ごせていそうですね!
一方、仕事に慣れるまでは大変なこともあったのではと思います。何に一番苦労しましたか?
働くマインドに切り替えることです。
ずっとお母さん業しかしていなかったので、子どもを保育園に預けることにも後ろめたさを感じてしまうし、自分を仕事モードに持っていくことが想像以上に大変で。
ビジネス界のカリスマたちによる自己啓発系のYouTube動画を片っ端から見ながら、自分をビジネスモードへと誘導していました(笑)
お金がないと「選択」ができない
山口さんと小林さんは、結婚時に働き続ける選択をしたことを、今振り返ってどう思いますか?
先々で離婚するかどうかは別として、自分が経済力を持つことで人生の選択肢は増やせると思います。
やりたいことができた時に、お金がないと一歩を踏み出せないですから。
私も子どもを二人連れての離婚でしたが、大した苦労もせず、穏やかに暮らせているのは、安定した収入があってこそかなと思います。
子どもたちは好きな習い事をしていますし、旅行を我慢したりもしません。ごく普通の生活ができているのは本当に幸せなことだなと。
もし仕事をしていなかったら、川上さんも言っていたように、子どもの生活水準を下げてしまうことが怖くて、自分が我慢する選択をしていたかもしれません。
離婚が幸せになるための手段というケースもあると思うんです。
だから、その選択ができずに何十年も我慢するのは、一度きりの人生なのにもったいないですよね。
また、離婚しなくてもパートナーが病気や事故に見舞われる可能性だってあります。
そう考えれば、自分の人生を誰かに委ねるのはやっぱりリスクが大きいように思います。
専業主婦だった川上さんは、大変なことも多かったと思います。
結婚時に仕事をしない選択をしたご自身にアドバイスをするとしたら、どんな声を掛けますか?
「何でもいいから仕事をしなさい」ですね。
いざ離婚となった時に経済力がないしんどさは尋常じゃありません。山口さんも言っていましたが、お金って何かを選択するための手段として必要なんですよね。
無職が長いと就職もしづらいですし、子どもがいたらなおさら。
どうしても仕事がつらくなったら、その時に休職するなり、転職するなり身の振り方を考えればいいので、結婚のタイミングで仕事を辞める必要はないと思うんです。
安易に、結婚を仕事から離れるきっかけにしてしまうのは危険だなと思います。
【1】離婚女性3人に学ぶ、結婚後も自分らしく働くためのパートナー選び「違和感を無視してはいけない」
【2】結婚は「仕事を辞めるきっかけ」ではない。離婚女性たちが痛感した“自分で稼ぐ”重要性
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取材・文/光谷麻里