妊娠・出産…ライフプランの希望は面接で伝えるべき? 「子どもも欲しいし転職もしたい」30代女性の葛藤
「どうやったら転職はうまくいく?」「私に向いている仕事って何?」はじめての転職には悩みや迷いがつきもの。長く自分らしく働き続けるための転職のコツを、キャリアアドバイザーが伝授!

「いつか子どもが欲しい」と考えている女性であれば、転職先が子育てと仕事を両立しやすい環境なのかは気になるポイント。
でも、転職活動の面接で自分のライフプランについて採用担当に希望を話すべきかどうか、悩ましく思う人もいますよね。
そこで今回は、キャリアアドバイザーの藤井佐和子さんが「転職活動の面接で、今後のライフプランイメージを伝えるべきか」というお悩みに回答します!

<プロフィール> 株式会社キャリエーラ 代表取締役
藤井佐和子(ふじい・さわこ)さん
大学卒業後、カメラメーカー海外営業部にて3年半従事、その後、前職インテリジェンス(現:パーソルキャリア)では、創業期の1994年から8年間派遣事業部と紹介事業部の立ち上げに携わる。2002年株式会社キャリエーラを立ち上げ、キャリアアドバイザーとして1万7000人以上のカウンセリングを行う
今回の相談:近いうちに子どもが欲しいけど、転職もしたい…
(30代/エンジニア)
まだ妊娠しているわけではないものの、近いうちに子どもを持ちたいと思っており、今の職場では産休・育休が取りづらいため転職を考えています。
ただ、転職活動のときに採用担当に正直にそう伝えてしまうと「すぐ産休でいなくなってしまう人」として敬遠されそうで不安です。
自分のライフプランは正直に採用担当者に伝えるべきですか?
・「出産適齢期の女性は採用されない」は勘違い
・選考過程で自分のライフプランを伝える必要はなし
・今の会社でも産育休をとれる道がないかも模索して
キャリア中断の可能性は、採用担当も織り込み済み
理想のライフプラン、キャリアプランの実現は難しいものですよね。出産・転職のタイミングは特に、多くの女性を悩ませる問題です。
Hさんの相談に関して、そもそも妊娠適齢期の女性を企業は採用したがらないのか……という点からお答えしたいと思うのですが、これに関しては、「そうとは限らない」というのが私の所感です。
というのも、妊娠や出産に限らず親の介護や本人のケガ・病気などで予期せずキャリアを中断することは、男性にも起こりうること。
仮に、将来的に妊娠を希望している女性が採用の候補者だったとしても、具体的にいつ妊娠・出産するのかは誰にも分かりませんし、いま結婚していない人であっても急に妊娠が発覚することがあります。
ですから、「一人でも欠けたら事業を維持できない」というような、よほど経営に余力のない企業を除けば、結婚適齢期の女性に限定して「採用したくない」企業は少ない印象です。
また、これだけ人手不足が深刻化していますから、「近い将来、キャリアの中断があるかもしれない」ということは織り込み済みで採用してくれる企業も増えていると感じます。
ライフプランより「やりたいこと」を必ず伝えて

また、面接の場で自分のライフプランについて伝えるべきかという点については、「その必要はない」というのが回答です。
先ほどお伝えした通り、妊娠・出産に関しては、希望通りにいかないことがあって当然。
願わくば1年後に……と思っていても、こればかりは誰にもコントロールできません。
さらに、「産休が取りたい、すぐ子どもを持ちたい、だから転職したい」ということだけが目立って伝わってしまうと、採用担当からすると転職後の活躍イメージが湧かなくなってしまいます。
当たり前ですが、企業が人を採用するのは、事業の成長に貢献してくれる人を仲間として迎えるためです。社員のライフプランの希望をかなえるためではありません。
ですから、面接の場でまず意識すべきは、「転職して何がしたいのか」「そこで自分の強みをどう生かせるのか」という点。
それがあって、じゃあどうやって長く組織に貢献していくか……という話になります。
Hさんが転職を考え始めたきっかけは、「ライフステージが変わっても働き続けられる職場を探したい」ということだったかもしれませんが、この機会に、これからやりたいことは何なのか、転職先で挑戦したいことは何かということもセットで考えてみてください。

また、Hさんが面接の場で「ライフプランを伝えておくべきか」と相談してくださった背景には、もしも転職後すぐに産休に入ることになってしまったら、同僚・上司からどう思われるだろう……という心配もきっとあるのだと思います。
ただ、その時はその時。「気にするな」というのは無理かもしれませんが、産休に入るまでの間にしっかり職場に貢献する意識を持っておけば、問題ないと思いますよ。
そのためにも、新しい職場で一体何がしたいのか、どうやって組織に貢献できるのかを転職前から考えておくことが大切。
それがあってこそ、いいスタートダッシュが切れるはずですからね。
今の職場で声をあげれば、希望がかなうケースも
ただ、もし改めて考えてみた結果、Hさんが新しい職場でやりたいこと、挑戦したいことがないまま「産休取得や育児との両立のためだけに転職したい」ということであれば、今いる環境で希望をかなえることができないのかを確認しておく必要もあると思います。
本来、産休・育休は要件を満たす限り法律上で認められた制度です。
私の元にキャリアカウンセリングにいらっしゃる方の中にも、Hさんのように「今の会社では産休・育休が取りづらいので転職したい」と相談される方が多くいます。
ですが、詳しく話を聞いてみると、「今後のライフプランについて上司に相談したことがない」という人や、「育児と仕事の両立不安について、今の職場で声を上げたことがない」という人が少なくないのです。

実際、「これまで産休・育休を取得する人がいなかった」から自分も今の職場ではきっと子どもを育てながら働くことはできないだろうと思っていただけで、上司に相談してみたら意外とすんなり産休・育休を取得できたというケースや、より家庭と仕事を両立しやすい部署に配属してもらえたケース、個別の事情に応じてリモートワークを取り入れるなど、働き方を柔軟に変えてくれたケースもめずらしくありません。
もしHさんが今の職場で実績を出し、組織に貢献してきた人なのであればなおさら、会社は「出産後も働き続けてほしい」と思っているはず。
ダイバーシティー経営や、人手不足解消を考えれば、「長く働き続けてくれる女性を増やしたい」と考えている企業は多いはずですから、Hさんが声を上げさえすれば、柔軟に対応してくれる可能性もあると思います。
仮に、産育休取得の実績が豊富な企業に転職できたとしても、仕事がつまらなかったり、カルチャーが合わなかったりすれば、新しい問題が発生して「また転職」なんてことにもなりかねません。それこそ、ライフプランに支障が出る可能性もあります。
これからの妊娠・出産など、ライフプランについて考え始めたこの機会に、キャリアの棚卸しもセットで行うことで、転職についても後悔しない選択ができると思いますよ。
取材・文/赤池沙希
『働く女の「はじめての転職」お悩み相談室』の過去記事一覧はこちら
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