18 AUG/2023

元フジテレビアナ・内田恭子が20代女性に送るエール「将来も個性も分からなくて当たり前。気長に見つけていきましょう」

人生100年時代はチャレンジの連続!
『教えて、先輩。』

人生100年時代。年齢や常識に縛られず、チャレンジを続ける先輩女性たちの姿から、自分らしく働き続ける秘訣を学ぼう

30歳でフジテレビを辞めてフリーアナウンサーに転身し、40歳を過ぎてからマインドフルネストレーナーになり、47歳で保育・幼児教育サービスを運営する東証グロース市場に上場の株式会社Kids Smile Holdingsの社外取締役に就任。

年齢を重ねる中で活躍の幅を広げている内田恭子さんは、「年齢は数字にすぎないけれど、年齢に自信と誇りは持っていたい」と明るい笑顔で話す。

そんな内田さんが20代の女性たちに送る、温かなエールを紹介しよう。

内田恭子さん

内田恭子さん

1999年に株式会社フジテレビジョンへ入社し、編成局アナウンス室に所属。2006年よりフリーアナウンサー。23年よりKids Smile Holdingsの社外取締役。現在、マインドフルネストレーナーとしても活躍中 InstagramTwitter

「内田さんは楽しそうに育児をしている」

2023年6月、私は『キッズガーデン』という保育園をはじめとする保育・幼児教育サービスを運営するKids Smile Holdingsの社外取締役に就任しました。

代表の中西よりお話を頂きましたが、実は中西との面識はなかったんです。フジテレビ時代の同期経由で連絡があり、本当にびっくりして。

「どうして私なんですか?」と率直に聞いたところ、私自身が育児中の母親であること、プロの伝え手であることなど理由を挙げていただきましたが、決め手になったのは「内田さんは楽しそうに育児をしている」という一言を頂いたことです。

少子化が深刻な問題になっている今、一人でも多くの人に「育児は楽しいものだ」というメッセージを届けたい、と。素直にうれしかったですし、中西の思いにも共感しました。

また、キッズガーデンのことは以前から知っていて、教育理念に賛同するところも大きかったんです。

だから微力ながらお手伝いできればと思い、お受けしました。

内田恭子さん

実は、教育は関心がある分野でもありました。

育児って悩み続けることの連続だと思います。一つのステージが終われば新しい悩みが生まれ、常にたくさんのことを考えさせられる。

二人の育児をする中で、「本当に子どもにとって良い教育とは何だろう」と強く考えるようになっていたんです。

ですから、今後はできるだけ多くの園に足を運び、プログラムを見学し、現場の先生のお話を直接聞きながら、今の時代に求められている教育の在り方を考えていきたいと思っています。

実際に現場を回ってみたら、男性の先生が多いことに驚きましたね。例えば南青山のキッズガーデンは先生の4割が男性です。

自分たちの面倒を見てくれる先生に女性も男性もいれば、「子どもの面倒を見る人=女性」ではないことが子どもたちにとっても明らかです。

当社は経営陣の約4割が女性ですが、現場と経営の双方にダイバーシティがある重要性を早速実感していますね。

最短距離ではなく、寄り道するから新たな扉が開ける

アナウンサーにマインドフルネストレーナー、Kids Smile Holdingsの社外取締役と、「活動の幅が広い」と言われるのですが、実は私の中では全てがつながっています

アナウンサーは人の話を聞き、それを伝える仕事であり、マインドフルネスもまた人の話に耳を傾けることが大切。

そして、マインドフルネスに関心を持った背景には「教育」があります。

内田恭子さん

私は小学5年生からアメリカで育ったのですが、小学校にはスクールカウンセラーが常駐して、生徒全員に定期面談の機会がありました。言葉の違いに苦労をしていた当時の私にとって、カウンセラーの先生との面談は癒やしの時間で。

一方、日本では「カウンセリング=問題がある時に受けるもの」という考え方が主流で、問題を自分の中で抱え込み、精神状態が悪化してしまうことも少なくありません。

そんな自身の体験もあって、以前から心理学に興味があり、コロナ禍で臨床心理士を目指して大学院に行く準備を進める中で出会ったのがマインドフルネスだったのです。

私は直感で動く人間なので、「これだ!」と。

これまでも計画を積み上げるというよりは、直感やイメージ先行で行動してきたように思います。

臨床心理士になろうと思ったのも、将来の自分をイメージした時に、大きな椅子に座って「今日はどうしたの?」と患者さんの話を聞く、海外のドラマに出てくるようなおばあさんがパッと頭に浮かび、「こういうおばあさんになりたい!」と思ったから(笑)

結果として今は全く違う道を歩んでいますけど、取りあえず動いてみると新たな扉がどんどん開いていくんですよ。

内田恭子さん

だから点と点をつないで最短距離を行こうとするのではなく、寄り道しながら進むくらいの感覚でいた方が可能性は広がるように思います。

新たな扉をのぞいてみたら、横道にそれた方が面白くなっちゃうことだってありますからね。

当初思い描いていた目的地にたどり着かなかったとしても、それは失敗ではなく、新たな出会いがあったということなのだと思います。

20代は人生の初期。まだまだ余白はいっぱいある

臨床心理士になろうと思い、意を決して大学の先生に話を聞きに行ったのは40歳を過ぎた頃。

先生の中には、「今から臨床心理士になっても、年齢がね」と言う方もいらっしゃいました。

私は年齢を全く気にしていなかったのでびっくりしてしまいましたが、「こんな考え方もあるのか、新鮮だな~」くらいに思っていましたね。

内田恭子さん

年齢などの属性ではなく、その人自身を見る文化のアメリカで育ったとこもあり、私には年齢によって制限されるという感覚がなくて。

だから30歳でフジテレビを辞めてフリーランスになった時も、「まぁなんとかなるでしょ」と楽観的に考えていました。

会社を辞めたらキャリアが終わるとは思わなかったし、何歳になろうとやりたいことはできる

年齢ではなく自分自身の問題だと思っていたので、先が決まっていないまま30代を迎えることへの心配はなかったんです。

この年齢になったから言えますけど、人生は長いですよ。30歳なんてピヨピヨちゃんです。

人生100年時代と言われますが、100歳まで生きるとしたら、20代なんてまだ人生の初期。

先を見てため息をつくよりも、「まだ自分はこれしか生きていない」「まだまだ余白はいっぱいある」と考えた方がいい。

そう考えれば、20代で将来がどうなるか分からないのも当たり前です。

将来が見えないことを嘆くよりも、目の前にある「いいな」「やってみたいな」と思えることに取り組んでみてください。

今の自分が面白いと思えることをがむしゃらにやっているうちに、きっと見えてくることがありますから。

20代はそれができる年代ですし、自分が一生懸命歩んだ道筋はあとから絶対についてくるはずです。

内田恭子さん

自分らしさの第一歩もまた、「自分はこれが好き」というものを見つけることだと思います。

「友達がやっているから」「将来役に立ちそうだから」ではなく、マニアックでも、人に言えないことでもいいから、「これが好きなんだ」という何かを見つける。

それを大切にしてあげたら、その瞬間だけでも自分らしくいられるんじゃないかな……と言いつつ、自分の20代を振り返ると、当時の私にはそういうものがなかったんですよね。興味があることをやってみる時間も、心の余裕もなかった。

だから会社を辞めた理由の一つは、「このまま30代を迎えたら、私は中身のない人間になってしまうのではないか」という不安でした。

当時は働き方改革が始まる前だったこともあり、身を粉にして必死で働いていて。

楽しかったし、若くて体力もあったからできたけど、「あと10年この生活を続けられるか」を自分に問うた時、「できない」と思った。

体力的にも、自分自身の人間としての豊かさを考えても、このままではダメだと思ったんです。

20代で何もかも分かろうとしなくていい

あれから約20年がたち、今の私は日々バタバタと、時にミスをしながら働いています。

周囲の皆さんにはご迷惑をお掛けして申し訳ない気持ちがありつつも、完璧にできない自分を責めるのではなく、受け入れながら仕事をしているのは、自分らしいなと思いますね。

「自分らしさ」は絵に描いたようなすてきな自分ではなく、自分が無理をしないでいられることだと思うんですよ。

そして無理をしないというのは、「自分のことを分かってあげる」ことなんでしょうね。

みんな自分に厳しいけれど、もっと優しくしてあげていいと思うんです。ミスをした後輩に「あなた本当にダメね」なんてフィードバックはしないでしょう?(笑)

自分に対しても同じこと。自分を甘やかすわけではなく、「できなかったけど、ここまでは頑張った」と認めてあげることで、自分らしい状態に近づける気がします。

内田恭子さん

ただし、「無理をしない=頑張らない」ではありません。頑張るところと、頑張らないところのバランスの問題です。

そういう意味では、無理をしないって、めちゃくちゃ勇気がいります。周りの目に耐える強さも必要ですからね。

だから、もしかすると20代のうちにバランスを取るのは厳しいかもしれません。

むしろ20代は「自分のキャパを知る時期」と考えた方がいいのでしょうね。頑張っている若い子に「無理しないでね」って言っても、絶対無理しますもん(笑)

頑張り過ぎて疲れちゃうことがあっても、それによって自分の得手不得手を知るきっかけになりますから、人生を通して気長につかんでいけばいい。

「自分らしく生きよう」「あなたの個性は何?」といったことを若いうちから問われますけど、そんなの分からなくていですよ。20代で何もかも分かろうとしなくていい

私だって、いまだに「一生懸命」がよく分かりません。20代の頃は常にフルスロットルで仕事をしていたのに、上司からの評価は「一生懸命さが見えない」で。「一生懸命」って、いったい何なんですかね?(笑)

20代の決断が一生を決めるわけではない

若い頃は仕事に恋愛、結婚など、いろいろなことに不安や悩みを抱えていると思います。

自分を振り返っても、20代後半に差し掛かるにつれて「結婚はどうするの?」なんて言われることが増えました。当時はそれがハラスメントだという認識が社会になく、私はそういうのがすごく嫌で。

いっそのこと早く30歳になりたいと思い、いざ30代を迎えたら、今度は誕生日ケーキに年齢が描かれなくなったり、年齢を聞かれる時に「失礼ですが」という枕ことばがついたりするようになりました。

年齢は数字にすぎないけれど、その人が頑張って生きてきた年数が年齢ですから、そこに対する自信と誇りは持ち続けていたいと思います。

内田恭子さん

私は年齢を重ねるにつれて広い視野で物事を見られるようになり、「自分がこれをしたい」だけでなく、「もっと世の中に対してできることがあるのではないか」と自然に考えるようになりました。

そうなれたのは、これまで自分がやってきたこと、考えてきたことの積み重ねがあるから。そう考えれば、年齢を重ねるのもなかなか良いものですよ。

若い女性に対して、いろいろな人がいろいろなことを言うと思いますが、「その意見に合わせる必要があるんだっけ?」というのは考えてもいいと私は思います。

むしろ相手が考え方をアップデートしなければならないことも多いでしょうから、年齢や属性についてとやかく言ってくる人のことは気にしないのが一番。

繰り返しになりますが、いくつになっても何だってできます。

何をやりたくて、何を求めているのか。自分の意見を持って、選択肢の中から自分で選ぶ力こそが生きる力であり、好きなものを持っている人ほど強い。それは、これまでの人生で私自身が実感していることでもあります。

だからこそ、自分の興味に素直になって、20代の皆さんにはいろいろなことにチャレンジしてみてほしいですね。

20代の決断が一生を決めるわけではありませんから、気楽に、気長にやっていきましょう。

取材・文・編集/天野夏海 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)