13年連続で移住者増加? 女性就業率全国3位の富山が「働きやすく、育てやすい」ワケ
コロナ禍をきっかけに、地方移住への関心は一気に高まった。
「地方でのびのび子育てがしたい」「自然豊かな地域でゆったり暮らしたい」など地方移住に心引かれる一方で、いざ本格的に検討しようとなると、生活していくイメージが湧かず、不安に駆られる人も少なくないだろう。
「地方移住するならどこが良いんだろう……」と悩める働く女性に、移住先候補の一つとして紹介したいのが、富山県だ。
実は女性の就業率が75.9%で全国3位である富山県。
2022年より、女性が活躍する企業を県が認定・公表することで、女性が活躍しやすい職場づくりを後押しする「とやま女性活躍企業」認定制度もスタートするなど、女性が生き生きと働ける環境づくりに力を入れている。
また、保育所入所率も全国トップレベルで、放課後児童クラブも充実。
住環境が良く、育児施設も充実しているなど、子育て環境の良さにも定評があることから、子育てをしている世代からも熱い視線が注がれており、移住者は13年連続で増加を続けている。(「子どもとくらしたい国、富山」より)
そこで今回、富山にUIターンして暮らしている3名の働く女性たちによる座談会を実施。富山の住みやすさや働きやすさについて、生の声を聞いた。
「地域皆で子育てしてくれる」東京、アメリカをへて富山に行きついた
<アンソニー 早伎さん>
「富山に引っ越してから、生活においても、職場においても、周りの人たちに支えてもらえることで心穏やかに過ごせていると思います」
そう話すのは、東京・アメリカで暮らした経験を持つアンソニー早伎さん。
アンソニーさんは現在、国際会議や学会、地域活性化のためのイベント企画・運営サポートなどを行う株式会社PCOでバックオフィス業務を担っている。
「とやま女性活躍企業」の認定を受けていることもあり、会社も育児中の女性への理解が深い職場だという。
「当社は代表も女性ですし、社員の9割が女性です。子育てをしながら働く経験をしてきた人が多いので、育児と仕事を両立する女性の事情を理解し、気持ちに寄り添ってもらえて、すごく心強いです」
そんなアンソニーさんが、富山への移住を決意したのは、アメリカ在住中。
特に生活環境面からもともと地元だった富山の住み良さを改めて痛感し、アメリカでの生活を切り上げて富山に移住した。
「治安が良いこと、自然が豊かなこと、静かに暮らせること、混雑しないこと……。最終的に富山に腰を落ち着けたいと思う理由はいろいろありました。
富山なら夜に一人で歩いていて怖いと思うこともありませんし、小児科や公園が混雑して困ることもないなと。
東京やアメリカに住んでいた頃は、街中の人たちがみんなせかせかしていて、落ち着かなかったんですよね。ずっと住み続けると考えた時に、一番心穏やかに過ごせるイメージが湧いたのが富山でした」
実際に引っ越しをして、ゆったり穏やかに過ごせるようになったというアンソニーさん。
Uターン後に実感した富山の一番の魅力は「育児をしていて孤独を感じることがない」ことだそう。
「東京だと見知らぬ人と話すことはほぼありませんでしたが、富山の人って、顔見知りではなくてもフランクに話しかけてくれる人が多いんです。子どもを連れていると子どもにも笑顔で話しかけてくれますし。
お母さんたち同士のコミュニケーションも活発で、地域の人たち皆で子育てをしているような感覚になるんですよね。
子どもの夜泣きやはしゃぐ声なども、都内だとご近所迷惑かな……なんて気になるかもしれませんが、富山の人たちは『それが当たり前』のスタンスで受け入れてくれるんです。この温かさが、育児の大変さを和らげてくれているように思います」
【アンソニーさんに聞いた!富山のイチオシポイント】
子どもをのびのびと遊ばせられる広い公園をはじめ、子どもが遊べる施設が充実しています。
プラネタリウムのある科学博物館や遊園地と動物園が併設している大型施設など、何十もの施設を対象にした年間パスポートがあって、1500円で全施設行き放題です。
私もこのパスポートを所持していて、週末は使い倒しています(笑)富山はこういった子育てをしている家庭にうれしいサービスが多いですね。
「働きやすいし、子育てもしやすい」住んでみて不安が解消された
<青木麻以さん>
富山に移住するまでは、関東圏にしか住んだことがなかった青木麻以さん。
都内で社長秘書として働いていたが、子どもが1歳になる頃、富山出身だった夫の「富山で子どもを育てたい」という希望をかなえるべく、家族で移住を決意した。
「夫が富山出身だと聞いた時は、『富山ってどこだっけ?』というレベルでした(笑)日本海側かぁ……ということは雪がいっぱい降るのでは? 寒さは苦手だし、雪道の運転も自信ないし、大丈夫かな?生活の便はどうなんだろう……と不安でいっぱいでしたね」
不安を抱きつつ引っ越しをした青木さんだったが、移住して間もなく、夫が富山で子育てをしたいと思った理由が分かったという。
「富山は子どもをのびのびと育てられるなと感じましたね。
例えば、遊ぶ場所一つとっても、東京に住んでいた時は、危ない道路を渡らないと公園に行けなかったり、どこかに出掛けても待ち時間が長かったり、子どもに我慢させなければいけないことがよくありました。
富山は広々とした公園がたくさんありますし、大きな公園には子どもたちが大好きな『ふわふわドーム』というトランポリンがあって、うちの子どもたちも飛び回って遊んでいます。
休日はこういった公園で遊んだり、アンソニーさんも紹介していたプラネタリウムに行ったり、今の季節は庭でプール遊びもしていますね」
青木さんは現在、アンソニーさんと同じ株式会社PCOで学会運営の企画や調整業務を行うコーディネーターとして働いている。アンソニーさん同様、育児をしている女性への理解が深く、非常に働きやすいと話す。
「育児と両立して働いている女性社員が多いので、働く母の事情や気持ちを理解した上で柔軟に対応してもらえるのはありがたいです。
現在は、リモートワークと出社を織り交ぜていますが、小学校の夏休み期間など、子どもが普段より早く学童から帰ってくる時は、家で子どもを迎え入れて宿題をしているのを横目で見ながら働く、なんていうことも認めてもらっています。
天候が悪い時も『リモートワークでいいよ』と言ってもらえますし、すごく働きやすいです」
【青木さんに聞いた!富山のイチオシポイント】
富山は、水や食べ物が本当においしいです。
東京に住んでいた頃は、飲み水はミネラルウオーターを購入していましたが、富山では街中でも湧き水が出ているので、それをくみに行って飲むことも多いです。お水にお金をかけることはないですね。
またスーパーには朝採れたばかりのお魚がお刺し身になって並んでいますし、野菜もお米も地元で採れたもので、どれもとてもおいしいんです。
お米は農協で新鮮なものを買っています。私の子どもが通う学校では給食もこういった地元で穫れた旬の食材を使って園内・校内で調理しているので、子どもの食育にも良いと思います。
富山はもっと「女性が生き生き働ける」地域になる
<飯田 理恵子さん>
北陸コンピュータ・サービスで働く飯田さんは、大学まで富山で育ったUターン組。名古屋・東京に住んだ後、コロナ禍をきっかけに富山に帰ってきた。
最初は東京の転職エージェントに登録して転職活動をしていたが、面接のために富山に足を運ばなければいけないケースも多く、最終的には移住後に富山のハローワークで転職先を紹介してもらったという。
「富山のハローワークの担当者がすごく丁寧に対応してくれて。私にマッチングしそうな求人情報があったら逐一連絡してくださいました。
東京のエージェントも地方の求人情報をカバーしているものの、やはり情報のスピードは現地のハローワークの方が断然速いと思いましたね。
あと、東京のエージェントの担当者より、富山のハローワークの職員の方が話しやすかった印象もあります」
飯田さんは現在、北陸コンピュータ・サービス株式会社の人事部において、働き方改革グループのリーダー業務に従事している。
社内における女性活躍推進プロジェクトの旗振り役として、「とやま女性活躍企業」認定に関わる手続き業務のほか、女性活躍をより推進していくための企画も任されている。
「当社は『とやま女性活躍企業認定制度』の認定を受けており、年々女性社員が増え続けています。法律だと時短勤務は3歳までになりますが、当社では小学校3年生まで適用されていて、大半の子育て中の女性社員が時短勤務制度を利用しています。
私のように責任ある立場を任されている女性もたくさんいますし、女性が活躍しやすい環境は整っている方だと思いますが、まだまだできることはあると感じています。それをイチから考えていく仕事はとてもやりがいがありますね。
『とやま女性活躍企業認定制度』は2022年に始まったばかりの取り組みなので、きっとこれから認定企業はどんどん増えていくはず。
富山が今よりももっと女性が生き生きと働き続けられる地域へと変わっていくのが楽しみです」
【飯田さんに聞いた!富山のイチオシポイント】
月並みではありますが、やはり自然の豊かさですね。
虫の鳴き声や川の音を日常的に感じられるのは、本当に癒やされます。もう都会に住めないです(笑)
「自分にとって大切なこと」を明確にして、後悔のない移住を
富山に移住し、自分らしい暮らし、働き方を実現している3名の女性たちが今感じている、後悔のない移住をするために心掛けておくべきこととは何だろうか。
「同じ都道府県の中でも、地域によって環境は大きく異なるので、自分が住みたい地域の環境は調査しておいた方がいいと思います。
例えば、富山は都会に比べて待機児童が少ないことで有名ですが、住む場所によって、近隣の保育園や学童保育が何時まで預かってもらえるかも異なります。
長期休みも預けられるのか、融通は利くのか……。そういったことも踏まえた上で、子どもを通わせたい保育園に空きはあるのか、確認した上で移住先を決められるといいと思います」(青木さん)
その回答に、アンソニーさんもうなずく。
「富山の中でも生活の便が良い街中、自然を満喫できる田舎など、いろいろな地域があります。自分に合ったスタイルを選ぶために、まずは一度足を運んでみるといいかもしれません。街の人の雰囲気などもつかめると思いますよ」(アンソニーさん)
もし、自分がどんな地域に住みたいのか分からない人は、自分が実現したいこと、自分にとって大切なものが何かを把握しておくといいと飯田さんも続ける。
「私はコロナ禍で家族の近くに住むことが自分にとって一番大切なことだと気付きました。そのため、一番の目的を実現できて満足しています。
まずは、自分が一番大切にしていることが何なのかを把握した上で優先順位をつけ、マッチした土地を選択できるといいですね」(飯田さん)
富山県への移住に興味がある方へ
富山県では、さまざまな移住支援制度をご用意しています。
◎首都圏からの移住で最大100万円支給! 移住金支援制度
◎移住準備の交通費・宿泊費をサポート! 富山の魅力体験助成制度
◎各市町村の移住支援制度
◎移住前・後に役立つ割引サービス、特典を提供! とやま移住応援団
など
富山くらし・しごと支援センター 大手町オフィス
TEL(フリーダイヤル): 0120-108-250
E-Mail: info@uturn.pref.toyama.lg.jp
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取材・文・編集/光谷麻里(編集部)