子育てをきっかけに東京から大分に移住した女性が「毎日が幸せでたまらない」と語る理由【小笠原 順子さん】
満員電車に揺られて何とか会社に辿り着く――。遅くまで働いて、帰ってきても何もする気力が湧かないままベッドに倒れ込む……。そんな、家と会社を行き返りするだけの代わり映えしない毎日――。東京暮らしは刺激もあって楽しいけれど、ずっとこのままでいいのかな、と不安を感じている女性も多いのでは? そんな中、「移住をして働く」という選択をする女性たちが今、注目されています。実際に、東京を飛び出し、地方や海外移住をした女性たちに、移住ノウハウや移住後の働き方、人生観の変化について聞いてみました!
File.01 移住パターン【東京→大分県竹田市】
自然豊かな環境で子どもを育てたい!

【Profile】小笠原 順子さん
1981年生まれ。16年4月、東京から大分県竹田市に移住。移住前は、都内で大手食品メーカーに勤務し、CSV活動でのブランド戦略、スポンサー業務におけるイベントの企画運営、デジタルWeb・SNS担当をしていた。夫、子供2人の4人家族。現在は、『竹ノhaco(タケノハコ)』という名前で、地域の活性化事業や子育て中家族のサポート事業を行う。
私は以前、都内の食品メーカーで、CSV活動によるブランド戦略や、スポンサー業務におけるイベントの企画運営などを担当していました。
東京での仕事はやりがいも大きく、自分の人生にも満足して暮らしていました。
そんな中で地方移住を考えるようになったきっかけは、子育てでした。
もともと、自然豊かな場所で伸び伸びと子どもに成長してほしいという想いがあったので、子どもが小学校へ入学する前に、どのような環境で過ごすことが子どもにとって最もいいことなのかを考えるようになったのです。
また、ライフステージが変わり、夫と私自身も夫婦として、改めて人生で目指すベクトルを合せていく時期に来ていました。
この先、家族がどのように生きていくことが幸せなのか。この課題を話し合った結果、地方へ移住するという選択肢が現実味を帯びていきました。
【移住までの流れ】
市の移住担当者との相談で住まいを見つける
いざ、移住する意思が固まったら、どこに移住するかを決め、そこでの住まいと仕事を探さなければいけません。
大分県竹田市を移住先として選んだのは、自然が溢れ、湧水や温泉がいたるところで湧き出ている恵み多き場所だから。歴史を感じられる城下町もあり、そして一番は魅力的な人たちが暮らしている、という理由からでした。

自然が溢れる竹田市の様子 【左】久住連山 【右】長湯温泉
竹田市では移住者の促進事業に力を入れているため、市役所にも「農村回帰推進室」という移住者のサポートを行う部署が存在します。なので、家探しについては市役所の担当者の方から住まいに適した場所を紹介していただいたり、自分で何度か足を運んで実際に現地を見ながら慎重に検討を重ねました。
また、竹田市に何度か足を運ぶ中で、自分がやりたい仕事についても考え直すようになっていきました。というのも、竹田市には、一般市民レベルで地域の活性化のために考え行動している方々が大勢いて、その様子を見ていたら、ここでなら自分も“地域”や“家族”のためになる仕事が現実的にできるかもしれないと感じられたのです。
移住から2カ月が経った今、竹田市における「子育て環境の充実」を目的に、古民家を活用したスペースの利活用事業を行うようになりました。
地域の子育て世代に向けてイベントを企画・運営したり、親子が集まれるスペース作りを行うのが主な仕事です。まだ立ち上げたばかりですが、『竹ノhaco(タケノハコ)』という名前で地域活性化や子育て支援に関わる活動を行っています。

【左】『竹ノhaco』活動中の様子 【右】実施している企画のチラシ
今年7月には、総務省が実施した「地域おこし協力隊ビジネスアワード」にも『竹ノhaco』の活動が選ばれました。このユニット名には、「子どもたちが竹のように強くしなやかに、真っ直ぐ育って欲しい。母子(ハハコ)の助けとなる活動をしていきたい」そんな想いを込めています。
【「移住」に欠かせない3つのこと】
自分1人が住む場所や職場を変えるというだけでも、大きな決断ですが、家族がいればなおさらです。後悔しない移住をするのに私が必要だと感じたことは、次の3つ。
【1】 家族と意思疎通をすること
何かを我慢したり、不満を持っている状態では、移住生活はうまくいきません。移住を決める前に、夫婦でこれから先の生き方についてのビジョンや想い、考えをきちんと話し合い、認識のずれがないように統一しておくといいです。
【2】自分たちに合った家を移住前に見つけておくこと
「空き家は沢山あるだろう」と思い込んでいると、案外見つからないというケースが多いようです。なので、住む場所は移住前に余裕を持って決めるようにするといいです。また、家の大小ではなく、自分たち家族が本当にその家がある環境を大切にしたいと思えるか、という視点で家を選ぶといいと思います。愛せる空間、場所に暮らしていると、毎日の幸福感が増します。
【3】移住先の友人、知人
新しい環境での生活は、何かと人の助けが必要になることもあります。私にとって竹田は、縁もゆかりもない土地でしたが、移住をする前に定期的足を運ぶことで知り合いや親しい人を事前につくることができました。移住を検討している場所に全く知人がいないという人も、移住後に孤立しないよう、できる限り事前に足を運び、積極的に知人づくりはした方が安心できると思います。
【変化したこと】
収入は減ったけれど、貯金は増えているかも!?
地方に来てライフスタイルが変わると、お金の収支にも変化がありました。無駄なお金を一切使わなくなったのです。
東京にいた時は、仕事の忙しさと精神的な疲労から、買い物でストレス発散をしていたことが多々ありました。自覚してはいるものの、やめられない……。不要な物でも、ついつい買ってしまうのですよね。燃費の悪いアメ車をハイオクでガンガン走らせていた感じです(笑)。それはそれで楽しかったけれど、さまざまなものを浪費していく感覚は今思えば少しむなしい感じもします。
今は燃費のいい車で、エコ運転。窓から見える美しい景色もちゃんと目に入ってくる、快適ドライブです。
東京にいたころと比べれば収入は減りましたが、もしかしたら貯蓄額は増えているかもしれません!
【移住して良かったこと】
イルミネーションのような蛍、湧き水で作る手料理……。毎日が、幸せな気付きと経験でいっぱい
また、お金のことを差し引いても、移住をして良かったと感じる瞬間は、日々たくさんあります。
朝起きてキッチンから見える朝日を見たとき。
道端に咲いている花を見つけ綺麗だな、と思えたとき。
また、それを子どもと共有できたとき。
湧き水を汲みに行った後に自宅でその湧き水をふんだんに使ってお料理をしているとき。 【左】幼稚園の帰り道 【右】近所の川辺で一休み。利活用している古民家
子どもが「竹田は楽しい」と言ってくれたとき。
イルミネーションのような無数の蛍を見たとき。
感覚的な言葉で地域の仲間と語り合えたとき。
仕事帰りに子どもと木苺を摘みながら帰った帰り道。
平日の夜も温泉に行き、子供たちとポカポカに温まったとき。
夏野菜がすくすく育つ姿を子どもと眺めながら夏を楽しみに待っているとき。
自分自身の毎日が充実していること。
幸せな気付きと、経験に満ちた暮らしがここにはあるのです。
移住前の暮らしだって、不満に感じていたわけではなかったけれど、改めて「これからどう生きたいか」、「どう生きることが幸せなのか」を家族と一緒に考え直す時間を持ち、一歩を踏み出したら、より一層自分の人生に納得感が持てるようになりました。
【メッセージ】
「自分が一番好きで大事にしたい価値」を追求することが大切
私の場合は、30代になり、地方で働き、生きていくことを選びました。
ですが、「生き方」や「働き方」にたった正解は無く、そのフィールドが「都会」か「地方」かという選択も、一人ひとりが自分の価値観で決めることだと思います。
なので、皆さんも、まずは自分が幸せに生きるために一番大切なことは何なのかを見極めることから初めてみるのはいかがでしょうか。
そして、自分が大切にしたいと感じる価値観が大切にされている場所を見つけ、そこで働き、暮らしてみてください。きっと、今よりももっと幸せな毎日が待っているはずです。
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取材・文/栗原千明(編集部) 画像提供:小笠原 順子さん