売り手市場の転職で「待遇」より「やりたいこと」を優先すべき理由【キャリアアドバイザー藤井佐和子】
「どうやったら転職はうまくいく?」「私に向いている仕事って何?」はじめての転職には悩みや迷いがつきもの。長く自分らしく働き続けるための転職のコツを、キャリアアドバイザーが伝授!
コロナ禍で伸び悩んでいた転職市場が再び動き出し、今はかつてない売り手市場と言われています。
この市況感を追い風に、「転職で年収アップや希望のワークスタイルを実現したい」「未経験の仕事にチャレンジしたい」など、理想の転職をかなえたいと考えている人は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、キャリアアドバイザーの藤井佐和子さんに「売り手市場で転職する際のポイント」を聞いてみました。

<プロフィール> 株式会社キャリエーラ 代表取締役
藤井佐和子(ふじい・さわこ)さん
大学卒業後、カメラメーカー海外営業部にて3年半従事、その後、前職インテリジェンス(現:パーソルキャリア)では、創業期の1994年から8年間派遣事業部と紹介事業部の立ち上げに携わる。2002年株式会社キャリエーラを立ち上げ、キャリアアドバイザーとして1万7000人以上のカウンセリングを行う
今回の相談:売り手市場を生かして転職活動を有利に進めるには?
(20代/営業職)
かつてないほどの売り手市場と言われている今のタイミングで、転職したいと思っています。
この市況感をうまく生かして、有利に転職活動を進める方法があれば教えてください。
・営業や技術職、介護職は「売り手市場」の今がチャンス
・売り手市場だからこそ、目先の条件に踊らされないように注意
・売り手市場をうまく利用して「面白そう」「やってみたい」と思える仕事にチャレンジしよう
「売り手市場じゃない」職種もある
コロナ禍で一時落ち込んだ転職市場ですが、状況が回復した現在は、リーマンショックに見舞われた2009年以降最大級の売り手市場と言われています。
ただ、全ての職種が当てはまるかと言うと、実はそうではありません。
事務職や工場のライン作業員などの製造職といった、AI化が進んでいる職種は今後人材過剰になることが予想されており、採用が将来的に活発ではなくなっていくことが予測されます。非正規雇用で募集をしている企業も少なくありません。
一方で、今特に追い風が吹いているのがIT系職種です。
経済産業省によると、2030年には最大約79万人ものIT人材が不足すると予測されており、未経験者も積極的に採用し、育成する企業が増えています。
国や自治体をあげたIT人材・デジタル人材の育成支援も加速しており、前述した「人材過剰になっていくことが予想される職種」からのキャリアチェンジを後押ししています。

その他にも、営業職や介護職は、売り手市場の今狙い目と言える職種です。
営業職の業務も、事務職同様デジタルシフトしている部分もありますが、最終的には人でないとできない業務も多いです。
また、営業スキルを身に付けておくと、売るモノや相手、やり方を変えて応用することができます。どの業界でも重宝されるスキルであり、汎用性の高さが魅力です。
Aさんはもともと営業職に就いていらっしゃいますが、将来を見据えてより営業スキルを高められる転職をするのも一つの手だと思います。
なお、常に人材不足の悩みを抱える介護業界は、年齢や経験に関係なくチャレンジしやすい職種です。
「介護職」と一口に言っても、介護士から介護福祉士、ケアマネージャー、施設長までキャリアパスも豊富ですので、介護業界への転職も視野に入れてみるといいかもしれません。
強気は禁物。売り手市場だからこそ冷静に判断を
Aさんのように、「売り手市場だからこそ、有利な条件で転職したい」と考える人は少なくないと思います。
ただ、「出来る限り好条件で転職しよう」という気持ちが先行してしまうと、年収や働きやすさなど目先の希望をかなえることを優先してしまいがちです。
転職活動において大切なのは、「長い目で自分のキャリアを考える」こと。
目先の条件に引っ張られてミスマッチな転職になってしまわないよう、あせらずにしっかりキャリアの棚卸を行いましょう。
たとえば、「今の会社が嫌だから転職したい」と思うのならば、「今の会社の何が嫌なのか」「それは解決できないのか」「社内異動などの選択肢はないか」など、あらゆる要素を整理したうえで、本当に「転職」が最適解かどうかを検討してみるといいと思います。
売り手市場だからといって「転職に失敗しても次がある」とあまり深く考えず転職をしてしまうと、気づいたら軸のないジョブホッパー(企業に定着せず転職を繰り返す人)になっていた……という事態に陥りかねません。実際、後々後悔している人は少なくないですから。

つい勢いづいてしまう売り手市場だからこそ、冷静に自分の状況や実現したいことを分析した上で、判断することを心掛けましょう。
売り手市場は「やってみたい」の直感に従うチャンス
ここまで、「目先の条件に引っ張られた衝動的な転職は危険」という話をしましたが、一方で、「やってみたい」「面白そう」といった直感に従ってみるのはいいと思います。これこそまさに、売り手市場だからこそできること。
特に、これまでつい頭で考えすぎてしまい、なかなか一歩を踏み出せなかった人や、「やりたい仕事じゃないけれど、安定しているから」といった理由で大手企業を選んでいた人などは、今が「やりたい」を転職で実現するチャンスです。
なぜなら、「もし失敗したとしても次がある」と売り手市場を自分の背中を押すために利用できるから。
というのも、次の職場でうまくいくかどうかは、実際のところやってみないと分かりません。どんなに冷静に考えて決めた転職であっても「思っていたのと違った」という状況に陥るケースは往々にしてあるものです。
「ベンチャー企業で自分の力を試してみたいけど、うまくいかないかも」
「昔から憧れていた仕事にチャレンジしたいけど、本当に向いているかわからない」
そんなふうにしり込みしてしまいがちな人は、「もし失敗だったとしても次がある」と自分の背中を押すために売り手市場を都合よく利用しちゃいましょう。

目先の条件に引っ張られた転職を重ねることと、勇気を出したチャレンジによる転職を重ねることは、企業に与える印象も大きく異なります。仮に失敗したとしてもそのチャレンジ精神を評価する職場はあるはずです。
また、一見失敗したと思ってもその経験が種となり、将来花開くこともあるでしょう。そういう意味では、今の選択が失敗かどうかを決めるのは将来のあなたと言えます。
「やってみなければ正解がわからない」要素によって転職をしり込みしている人は、「転職に失敗しても次がある」という言葉で自分の背中を押してあげてもいいと思います。
やりたいことにチャレンジする勇気を出すために市況感を利用する。これが「売り手市場」をあなたのキャリアにプラスに働かせる一番の方法になるのではないでしょうか。
取材・文/赤池沙希 編集/光谷麻里(編集部)
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