PLAZAの雑貨オタクが仕掛ける“ときめき”のマジック「好きを仕事にすれば、自分に嘘をつかなくていい」
好き、好き、大好き、夢中、愛している――自分の仕事を。そんな生き方をしている“○○オタク”な女性にフォーカスを当てるこの連載。「好き」を追及し、突き抜けてきた彼女たちの仕事は、社会に、そして彼女たち自身にどのような変化をもたらしたのか。彼女たちの言葉から、豊かな人生を送るためのヒントをもらいましょう。

株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニー
商品一部 商品第二課
藤岡知里さん
東洋大学在学中にロンドン留学を経験し、ポップなデザインの生活雑貨にときめく。自分が「かわいい」と思うものを紹介し、共有したい思いから株式会社スタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニーに入社。店舗にての販売や店頭販促を経験後、ライセンス部にてスージー・ズーの商品監修を担当。2014年より商品部でステーショナリーのアシスタントバイヤーを担当、15年よりメインバイヤーを任される。商品の買い付けに加え、企画開発も手掛ける
ロンドンの雑貨店で体験した興奮が忘れられない!
週に3~4日はお気に入りの輸入雑貨店をハシゴし続けた20代。人が使っている雑貨を見ても、輸入ものの雑貨であれば、どこのものなのかすぐ分かってしまう「輸入雑貨オタク」。そんな藤岡知里さんは、バイヤーとして輸入生活雑貨ブランド『PLAZA』におけるステーショナリー(文具)商品の全てを任されている。

「最近特にはまっているのは“ペン”ですね。アメリカやヨーロッパのものは、デザインもインクも軸も特徴がいろいろあって、それぞれのこだわりを発見するとテンションが上がってしまいます(笑)。
個人的には“ガリガリとした書き味”のペンが大好きで、見つけるとすぐに買ってしまう。だから、職場や自宅には何百本ものペンが溜まっていますね。その日のファッションや気分に合わせて、使うペンも変えるのが私流。シックな服装の時は、ペンもシックに。文房具までトータルでコーディネートしたいんです」

藤岡さんのデスクにあるペン立て。色とりどりのペンがずらり
輸入雑貨オタクになったきっかけは、学生時代に経験したロンドン留学。当時、日本ではあまり目にすることがなかったカラフルでポップな雑貨たちに出会ったことだった。
「私が大学生だった頃の日本の雑貨は、サンリオやディズニーのキャラクターがあしらわれたファンシーなものが主流でした。でも、ロンドンの雑貨屋さんに足を運んでびっくり! カルチャーショックを受けたんです。スーパーに売っている大人用の雑貨ですら、どれもポップでかわいくて、全てが新鮮でした。日本の雑貨の品揃えももっとバラエティー豊かになればいいのに。そうしたら、もっと毎日テンションが上がるのに! って、すごく興奮しました」
就職活動では、生活雑貨の品揃えではナンバーワンだと感じていた『PLAZA』を運営するスタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイル カンパニーの面接へ。自らロンドンで買い込んできた雑貨を持ち込み、「こんな商品を扱いたい。この会社でそれができるだろうか」と熱い思いをぶつけたという。
「今でいうところの『シェアしたい』という気持ちが当時から強くあったんですよね。私がかわいいと思ったものを『これ、かわいいでしょう?』と伝えたい、というような」
入社後は、『PLAZA』店頭での販売や販促などを経験した後、商品部へ。ステーショナリー商品のアシスタントバイヤーを1年務めた後、2015年、遂に夢だったメインバイヤーを任されることになった。
雑貨を愛してやまないからこそ生み出せる企画がある
現在、『PLAZA』では常時2000~3000点のステーショナリー商品を扱っているが、シーズンごとに入れ替わるものも多くあり、その全てが藤岡さんに任されている。
「一回のプロモーション企画で80種くらいの商品を買い付けることもありますし、イメージに合うものがなければ、こちらで商品を企画してメーカーさんに作ってもらうこともあります。この春は、最近人気のあるモンスター関連の商品展開に注力し、ポップな色のiPhoneケースやクリア素材のペンケースなどの商品を企画しました」

モンスターをモチーフにした『PLAZA』オリジナルのiPhoneケース。10代~20代の女性たちに大人気
また、「PLAZAのみでしか買えないオリジナル商品」の企画にも力を入れてきた。
ビジネス手帳の老舗『クオバディス』や、ニューヨークのアパレル出身デザイナーが手がけるステーショナリーブランド『ハートランドブルックリン』とコラボレーションし、ファッション性と実用性を兼ね備えた手帳を企画もその1つだ。

藤岡さんが企画した、『ハートランドブルックリン』とのコラボレーション手帳
トレンドを抑えたデザインが女性たちの間で話題となり、既存のクオバディス商品よりも大きく販売数を伸ばした。
さらに、2016年のバレンタインデーには、人気イラストレーター・関根正悟氏とコラボレーションしたギフト用の小分け袋を企画。

イラストレーター・関根正悟氏とコラボしたギフトバッグ
結果的に、これまで、『PLAZA』とあまり接点を持ってこなかった30代女性から大きな反響があり、新たなファン層を獲得した。
自分が好きなものを選ぶだけではモノは売れない
バイヤーになって早々、数々のヒットを飛ばしてきた藤岡さんだが、そこには当然「自分の好きなものが売れるとは限らない難しさもある」と語る。
「自分が『これはかわいい!』と思ったものとか、『一歩先をいってるな』と思うものを買い付けても、店頭に並べてみたら『全然反応がない』なんてことも時にはあります。実際は、目新し過ぎるものよりも“半歩先”くらいの提案がちょうどいいこともある。
そういう意味では、バイヤーは感性だけではやっていけない。市場をちゃんと観察して、ターゲットを明確にし、アプローチ方法を戦略的に考えることが重要です。人の心が動くきっかけとなるモノやコトを知り、購買に結び付ける方法を常に考えなければ、と思っていますね」
とは言え、雑貨が好きだからこそ、どうしても自分の好みに流されそうになってしまうこともある。
「自分の好みに頼り過ぎないようにするためにいつもやっているのが、トレンド情報をとにかく頭に入れ込むこと。雑貨の世界は、アパレルの影響を大きく受けるので、アパレルで流行したものが翌年に“来る”傾向があります。だから、アパレルのトレンドをチェックしたり、流行の発信地であるニューヨークオフィスと情報交換したり、インスタグラムでトレンドセッターとなっている人や企業のアカウントを何万件もフォローをして毎日片っ端から投稿をチェックしたり。とにかく、隙間時間を見つけては雑貨に関わるさまざまな情報を頭に入れるようにしています」
こうした努力も、雑貨を愛してやまないからこそ続けられる。
感性を磨く努力と、「好き」を伝えたい情熱
「自分の感性に共感してもらえる」。藤岡さんは今の仕事を通じ、そんな喜びを日々味わっていると話す。

「自分が“かわいい”と思うものに共感し、支持してくれる方が多ければ多いほど、売り上げという結果につながる。これは、好きなことを仕事にしたからこそ感じられる喜びだと思うんです。そして、この喜びは何ものにも代えられない」
現在子育て中の藤岡さん。頭の中はいつも雑貨でいっぱいだが、そこに育児も加わり、時には疲れを感じることもあるそうだ。だが、それに負けずに向き合っていけるのは、やはり雑貨が与えてくれる興奮。
「これだけ長い間、雑貨と付き合い続けてきたけれど、今もかわいい雑貨を見つけたときには『キャー!』って叫んじゃうんですよ。お取引先の方がいるところで、私だけ声をあげちゃうこともよくあって、周りの人に笑われちゃうことも……(笑)。今は育児もしているので体力的にきつい日もありますが、職場でかわいい雑貨を見て興奮したりときめいたりすると『やっぱり楽しい!大好き!』という気持ちに戻ります」
そんな藤岡さんが、これからバイヤーとして目指すのは、より多くの人に雑貨にしかないときめきを届けること。
「生きていく上では必ずしも必要ではない雑貨。でも、そこに皆さんがお金を払ってくれるのは、“ときめき”があるからなんだと思います。入社から13年経った今も、『私がかわいいと思ったものを皆に伝えたい』という、その気持ちに変わりはありません。パッと見ただけでテンションが上がり、ワーッとみんなで盛り上がれる。雑貨にはそんな力があります。なくても困らないものだけど、生活を豊かにし、みんなで笑顔になれる。雑貨の魅力は、コミュニケーションツールにもなってくれるところですね。
だから私はこれからも、自分も含め、皆さんがつい『キャー!』って声をあげちゃうようなステーショナリーを届けていきたいんです」
取材・文/上野真理子 撮影/シンラクリエイション
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