女性の転職におすすめの資格とは? 採用担当が明かす意外な本音
表立って聞きにくい「これってどうなの?」という転職にまつわる女性たちの疑問を中途採用担当者に直撃!人事のリアルな見解とは……?

未経験からキャリアチェンジをしたい、スキル不足をカバーしたい、強みをつくりたい……。
転職にまつわる不安の解決策として、一つの選択肢となるのが資格の取得。転職活動をするにあたり、資格を取ろうと考える人は少なくない。
ところが採用人事3名の本音は「資格は重視していない」という意外なもの。その理由とは……?
●大手アパレル企業の採用担当者・中野さん(仮名)
●スタートアップの採用担当者・石田さん(仮名)
人事は転職者の資格を見ていない?
30〜40代女性へのアンケート企画で「キャリアに関して20代のうちにやっておけばよかったこと」を聞いたら、「資格を取っておけばよかった」という声が多く集まりました。
総じて、選考時に転職者の資格はどのくらい重視していますか?
全く見ないです。
同じく見ないですね。
私も見ないです。
しいて言えば、語学系の資格は一応見るかな。販売の現場で使うことがあるので。
全然見てない……!
では、営業、販売、事務、エンジニアの四つの職種で、「この資格があるといいな」というものはありますか?
事務だと士業系の資格でしょうか。取得が難しいものも多いし、人事労務であれば社労士資格というように、職種に関連していればプラスになると思います。
資格がなければ仕事ができない独占業務もありますしね。
営業と販売だと、語学力に関する資格くらいかな。
ただ、語学力が求められるポジションだったとしても、TOEICの点数より「語学力を生かして実務で何をしていたのか」を重視しますね。
エンジニアだと、スクラムマスターなどプロジェクトマネジメント系の資格があれば加点にはなるけど、合否に影響はないですね。
「資格の有無が合否に影響しない」っていうのは、独占業務以外の全ての仕事に言えることですね。
他はどうだろうな……。
うーん……。
これだけ出てこないってことは、それだけ普段から見ていないってことなんでしょうね(笑)
転職者側の「資格は大事」っていうイメージと、ものすごいギャップがありますね……。
経験不足なときは、資格よりもまず実務!
未経験だったり経験が浅かったり、自分のスキルや経験に自信がないときに資格を取ろうとする人は多いと思います。
でも、これだけ選考時に資格を見ていないということは、あまり意味がないのでしょうか……?
例えば「IT業界未経験なのでITパスポートを取った」というのは、転職への本気度が伝わる点でプラスにはなります。
ただし、それがあれば有利なわけでも、ないとダメなわけでもない。あくまで「その人が何に努力したのか」を見る上で参考にするくらいです。
そうなると、資格取得の代わりに何をしたらいいのでしょう?
希望の仕事に近づく努力をして、実務経験を積むことを最優先に動いた方がいいと思います。
勉強は付加価値というか、あくまでプラスアルファでしかない。入社後に仕事と両立してできることでもあるので、まず実務経験を積むためにできることを考えるのが得策ですね。
今は副業もできますし、やりようはいくらでもありますから。
同感です。現職でできることもありますよね。
例えば広報に転職したいのであれば、プレスリリースを書く練習として、今の会社でライティングの仕事をやらせてもらうとか。
社内異動を希望して、実務経験を積んでから転職する方法もありますよね。
エンジニアやIT業界への転身を考えているのであれば、資格を取ったりスクールに行ったりする前に、サービスに触れてほしいですね。
IT系の資格の勉強をしているのにチャットGPTを使ったことがない人って、意外と多い気がします。
今は無料で使える開発ツールもたくさんありますし、まずは手を動かすことを考えた方がいいんじゃないかな。
あとは、今の自分の経験やスキルの中で、希望の仕事に生かせることは何か、考えてみるのもいいと思います。
別職種へのチャレンジであっても、例えばマネジメント経験は生かせますよね。今の仕事で希望とは異なる仕事をしていたとしても、アピールポイントは生み出せると思いますよ。
勉強したり専門性を磨いたりする以外に、汎用的なスキルを武器に勝負する方法もあるわけですね。
その場合は会社選びも重要ですね。新卒を積極採用していて、育成に力を入れている会社であれば、スキル不足や未経験の人でも採用する可能性は高いと思います。
ただ、今の新卒ってめちゃくちゃ優秀なんですよ。学生時代からインターンで経験を積んでいて、入社当初から未経験という感じではない。
おそらく今30代以上の方が就職した頃とはかなりのギャップがあるので、そこは知っておいた方がいいと思いますね。
そういう意味でも、実務が重要なわけですね。
実務で評価されるのは、資格取得よりも難しい
30〜40代で「資格を取っておけばよかった」と思う人は、お子さんがいて、働き方変えたいけれど思うようにいかない人が多い印象があります。
「資格を取っていれば、リモートワークができたかも」「資格があれば、柔軟な働き方ができる職種にキャリアチェンジができたのかな」
そんな後悔のような気持ちがあるのではないでしょうか。
年齢を重ねるほど勉強がつらくなることも影響している気がしますね。
私は社労士資格の勉強をしているんですけど、しんどいですよ。難易度の高い資格は体力と気力の勝負でもあるから、そこは若い頃より劣るなと正直思う。
要するに「今から勉強するのはきつい」と分かっているからこそ、若いうちに資格を取っておけばよかったって考えになるんじゃないかな。
20代なら頭も若いし、自分のために使える時間もありますしね。
私はアラフォーですけど、20代のうちに勉強しておけばよかったってめっちゃ思いましたもん……。
「資格を取っておいた方がいい」という30〜40代のアドバイスには、そんな背景もあると考えられるんですね。
ただ、繰り返しになりますけど、やっぱり実務が重要なんですよ。
資格を取る大変さは承知の上ですが、一人で勉強して完結する分、楽なところもあると思うんです。
一方、実務は絶対に誰かと関わるし、大なり小なり仕事に対する責任も負う。特に未経験だったり経験が浅かったりする場合、実務に飛び込むのは怖いじゃないですか。
できるか分からないし、周りに迷惑をかけちゃうかもしれないもんなぁ……。
そう。その怖さや不安を乗り越えて、実際にやってみたことに意味があるんですよ。
だからこそ、自分一人で完結させないで、実務経験を積む行動をしてほしいなと思います。
未経験ながら副業なり社内なりで一歩行動を起こすことに、本気度が表れるわけですね。
そうですよ。
それに資格を取るより、人から評価されることの方がずっと難しいですから。
中途採用市場は実務経験が全てですからね。基本的には資格があるから転職できるわけではありません。
資格という安心材料を求める前に、実務で新たな分野に挑戦するためのスキルと自信の土台を作ることを考えた方が近道だと思います。
つまり、まずはトライするのが一番。勇気を出して一歩踏み出した先に、新しい道があると思いますよ。
企画・取材・文・編集/天野夏海
『採用担当者の覆面ガチトーク』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/gachitalk/をクリック