憧れのスタートアップ転職、でも私ボロボロでした…27歳の「シゴデキと思われたい」が招いた失敗
誰しも「やっちまった!」と後悔する経験はあるもの。仕事、転職、恋愛、結婚、お金など、30代の先輩女性たちの失敗談から得られる教訓を紹介!

27歳の時、「幅広い業務で活躍したい!」と創業2年目のスタートアップに飛び込んだ七瀬さん。
彼女を待ち受けていたのは、理想とはかけ離れた、できない自分に落ち込む日々でした。

七瀬 桃華さん(32歳/仮名)
23歳 人材サービス企業に新卒入社
カスタマーサクセスとして働く
27歳 創業2年目のスタートアップに転職
幅広い業務に携わるものの……
29歳 産休を取得し、第一子を出産
30歳 職場復帰し、時短勤務中
憧れだった創業初期のスタートアップで直面した現実
──七瀬さんの失敗について教えてください。
27歳で創業2年目のスタートアップに転職してからの3年間ですね。仕事と冷静に向き合えず、もう、心身ともにボロボロでした……。
──当時はどのような状況だったのでしょう?
頑張っても頑張っても、貢献できなかったんです。業務の幅が広くて、それをさばけるほどの器用さもなくて……。
カスタマーサクセスやセールス、マーケティング、広報など、いろいろな仕事に携わっていたけど、ほとんど未経験。どうすればいいか分からず、ずっとパニック状態でした。
しかも社長や業務委託のメンバーは年上のベテランばかりで、私の経験やスキル、仕事に取り組む姿勢は話にならなかったというか……。
前職ではお客さまに対する姿勢や仕事の丁寧さを褒められていたし、自分としてもそれなりに仕事ができるつもりでいたから、「考えが足りない」と指摘されるつらさもありました。
元々転職した理由は、みんなで会社を大きくしたり、職種や役割にとらわれず幅広い仕事をしたり、そういった創業初期のスタートアップならではの仕事がしたかったから。
でも今思えば、その適性はなかったんですよね。そこまでのバイタリティーはないし、体力もスキルも足りなかったと思います。
──その結果、「心身ともにボロボロ」になってしまった?
休むのがとにかく怖くて……。
当時は9時に出社して、22〜23時まで仕事をして、帰宅後も常にインプットかアウトプットをしていないと不安でした。
シャワーを浴びている間もスキルアップ系のYouTubeを流したり、湯船に浸かりながらSlackや仕事の資料をチェックしたり。その後も仕事をして、寝るのは2時過ぎ。
土日は夕方まで寝て、起きてから仕事をすることもありました。
「コンビニに歩いて行く時間で仕事ができるから」とUberEatsばかり頼んでいたから食事もめちゃくちゃ。
今考えれば仕事に関係なく、そんな生活をしていたらおかしくなるよなと思います。
ずっと同じ姿勢でいるから、だんだん腕も上がらなくなってきて。何回かお年寄りに混ざって整形外科でリハビリを受けたりもしたけど、その前に寝なよっていう(笑)
長期休みに友達とスキーに行っても、「滑りに行こうよ」とみんなが楽しんでいる中、私は「目をつぶってじっとしていたいから行かない……」って断って……。
当時はそのくらい余裕がなく、疲れ切っていました。

休んだら、周りからの評価が上がった
──なぜそういう状況になってしまったのだと思いますか?
「かっこいいと思われたい」という気持ちが強かったんです。それは裏を返せば「かっこ悪いと思われたくない」ってことで、要は自分の保身のためだけに仕事をしていた。
それだとうまくいかない時期にモチベーションが続かないんですよ。当時の私の価値観で言えば「うまくいっていない=かっこ悪い」わけで、その状態が続くことが耐えられなかった。
社長に「採用したこと後悔してますよね」って泣きながら言ったことがあるくらい、あの頃は感情的にもなっていましたね。
睡眠不足だから攻撃的にもなるし、そうすると職場の人間関係も悪くなる。頑張れば頑張るほど状況が悪化する、悪循環におちいっていたなと思います。
自分もつらかったけど、周りの人たちもずいぶん振り回してしまいました。

──今振り返って、どうすればよかったと思いますか?
もう少し冷静に行動できればよかったですね。無理だと思った時点で、恥を忍んで相談すればよかった。
当時の私には「やれなかったらかっこ悪いんじゃないか」という気持ちに加えて、「せっかく任せてもらっているのに」という申し訳ない気持ちも強くあって。
悔しさもあったし、「まだ頑張れる」と思って、自分一人で何とかすることしか考えられませんでした。
スキル不足だったのは確かだけど、頭を冷やして冷静になれていたら働き方の相談もできていただろうなと思います。一つの業務に集中できればまた違った気もしますし。
あとは、ちゃんと休むこと。
当時は休むのが怖くて仕事のことばかり考えていたけど、そんな状態でインプットしても何も入ってきません。
結果的に私の場合は29歳で妊娠して、出産という大義名分を得たことで仕事から離れることができました。
それによって自分の状況を俯瞰して見られるようになったし、仕事とは違うフィールドの人と出会って視野の狭さにも気付けた。仕事から離れることも大切なんだと実感しています。
──産休・育休からの復帰後、働き方は変わりましたか?
「今の自分にできることをやろう」と自分の役割を冷静に考えられるようになったと思います。
「今の打ち合わせを踏まえて次のアクションを整理したいので、15分ください」と、かつて恥ずかしいと思っていたことも言えるようになりました。
以前は会社しか自分の居場所がなかったし、「せっかく入ったのに」と会社にしがみついてた部分があったけど、今は家庭もある。「いざとなれば別の仕事をすればいい」と思えるようにもなりました。
それによって「かっこ悪いのは嫌だ」っていう自己保身の気持ちがなくなったんでしょうね。「会社だけじゃない」状態をつくるのはめっちゃ大事だと思います。
肩の力が抜けて冷静になれたら、評価も上がったんですよ。今は時短勤務で時間が限られているしんどさこそありますが、気持ちは断然楽です。
創業初期のスタートアップで働く適性はなかったけど、会社規模が少し大きくなって、「このフェーズならいける」と思えていることもプラスに働いていますね。

──自分の経験を踏まえて、後輩女性たちに何を伝えたいですか?
怖いけど、勇気を出して休んだり、仕事のやり方を変えたりするのが意外と近道かもなって思います。
ただ自分を振り返ると、プライドもあるし、自分から仕事と距離を置くことはできなかっただろうなとも思うんです。
そういう人は「私は今こういう状況です」って紙に書いて、「共有だけで申し訳ないんですけど」と上司に見てもらうといいんじゃないかな。
そうすれば強制的に休みを取らされたり、業務を見直してもらえたり、何かしら助けてもらえると思います。
ちょっとずるいけど、そうやって甘えてもいいと思うんですよ。一人でどうにかしようとするよりも素直に状況を伝えた方が、結果として周りも助かりますから。
私の場合は産休が良いきっかけになりましたけど、もしあのまま仕事を続けていたら、いずれにせよドクターストップで休職していたと思います。
あと、意外とみんなかっこ悪いところはあるし、かっこ悪くなっても大丈夫。それは当時の自分に伝えてあげたいですね。
編集後記.「休む=サボる」ではない!
「足を引っ張っているかも」「もっと成長しなくちゃ」と思えば思うほど、立ち止まるのが怖くなり、仕事をするほどに追い詰められていく。
頑張り屋で真面目な人ほど、そうやって無理をしてしまいがちです。
でも、休むのとサボるのは全くの別物。より良い仕事をし、自分が成長するために必要な時間が休息なのです。
仕事と距離を置き、自分の現状を客観視して、どうすればより良く働けるのか考え、周りの人に伝える。
それはできない自分に負けることでも、かっこ悪いことでもなく、「自分が成果が出せる状況」をつくるための交渉です。
罪悪感なくしっかり休息を取るために、そして楽しく仕事をするために、ぜひ「休む」を見直してみてください。
長く仕事を頑張るための「いい休み方」

産業医・精神科医である石井りな先生に、長く仕事を頑張るための「いい休み方」について聞きました。
まずは肉体疲労と心の疲労を日頃からためこまず、休日を使ってうまく解消していきましょう。
家にいて体は休めているようでも、心や頭は休まっていない人は多いですね。
ただ、20~30代は基本的には若くて元気な人たちなので、疲労を甘く見て放置しがちです。すると、気付いた時には心も体もボロボロになっていた……なんてことも。
健康状態に悪影響が及ぶ前に、心と体の疲労をケアしていくことが大切です。
休むことで「本来の自分」を取り戻す

「私らしさって何だろう」「私、本当は何がしたかったんだっけ……?」
ふとそんな考えが頭をよぎる方にご紹介したいのが、キャリアの一時的な中断を肯定的に捉える「キャリアブレイク」という考え方。
パートナーの離職をきっかけに、休職・離職者のための『おかゆホテル』を立ち上げた北野貴大さんは、その効能をこう語ります。
実はキャリアブレイク中の人ってめっちゃ面白いんですよ。
「この会社でいいのかな」「私、今楽しいのかな」と何らかの違和感を抱いてた人が、そこから開放されてちょっとずつ「本来の自分」に戻っていくというか。
それぞれが持っている感性や心が回復していく感じがします。
自分が望む働き方を考えよう

ワークライフバランスや男女平等の先進国ともいわれるフィンランドで、寿司職人として働いていたchikaさん。
仕事をする中で「仕事はパートオブライフ」という考え方と出会います。
フィンランド人の同僚たちは自分で自分の望みをかなえていっていて。
私からすると「それもNOって言っていいことだったの!?」と驚くことも多かったけれど、職場もそれを理由に評価を下げることはなく、実現する方法を一緒に考え、落としどころを見つけていくスタイルでした。
仕事はあくまで人生の一部。あなたはどんな働き方をしたいですか?
企画・取材・文・編集/天野夏海