【恐怖体験】不当にハラスメントを主張する「ハラハラ社員」が働く女性を脅かす

ハラスメントハラスメント、通称「ハラハラ」という言葉をご存じだろうか。

ハラハラは、他者からの指示や注意に対して不快感を抱いた人が、「それはハラスメントだ」と過剰に主張するいやがらせ行為のこと。

ハラハラ 被害

セクハラやパワハラなど、職場で各種ハラスメントに対する感度が高まっていく一方で、不当にハラスメント被害を訴える人も目立つようになってきた。

いま、働く女性たちを悩ませるハラハラの実態とはーー。もしもハラハラ被害にあってしまったら、どう対処することが重要なのだろうか。

「それ、ハラスメントですよね?」

「上司・先輩相手なら、何をやってもいいと思っている人が多すぎるんです」

そう不満をこぼすのは、小川さん(仮名/34歳、事務)。

小川さんは以前、後輩のスキルアップを支援するため、読むべき本や役立つ研修を紹介した。

すると、その後輩が「業務外で仕事をさせられそうになった」「研修を受講するよう無理強いされた」と小川さんをハラスメントで社内通報したというのだ。

「まさかこんなことで、後輩から訴えられるなんて……」と小川さん。今もその時のショックを引きずっている。

ハラハラ 被害

佐藤さん(仮名/26歳、事務)の職場には、「仕事のミスを指摘されるたびに、ハラスメントだと騒ぐ女性社員がいる」という。

「その子は業務上のミスを注意すると、『いつも私にだけ厳しい。ひどい』と反論してくるんです。

それで、彼女に黙ってミスを修正したことがあったんですけど……。それを知った彼女が、『勝手に人の仕事に手を入れるなんて当てつけだ。それ、パワハラですよね?』と騒ぎ始めて……」

佐藤さんと後輩の関係はさらに悪化。それを見ていた佐藤さんの上司が仲裁に入ってくれたものの、後輩社員は話を聞き入れず。いまや“職場の腫れ物”状態だという。

「彼女の件は正直、どうにもなりませんでしたが……。上司から『君の注意は間違っていないよ、大丈夫だよ』と認めてもらえて、少しは気持ちが楽になりました」と佐藤さんは残念そうに言う。

ハラハラ 被害

銀行員として働く鈴木さん(仮名/33歳)も、ハラハラ被害にあった一人だ。

鈴木さんがリーダーを務めるチームには、上司、先輩からの指摘を受け入れず、同じミスを何度も繰り返す部下がいた。

「指摘をするとすぐすねるので、あまり強く出てしまうと『ハラスメントだ』と騒ぎそうな子だなという予感はあった。だから、日頃から接し方にはすごく気を付けていたんです」と打ち明ける。

ある日、「同じミスが出ないように」と業務についてじっくり説明をしていたところ、就業時間を少しだけ過ぎてしまった。

翌日出社すると、同僚がそそくさと駆け寄ってくる。そこで、「鈴木さんの部下が、『パワハラを受けた』と言って回っている」ことを聞かされた。

その後、鈴木さんは自身の上司に呼ばれ、聴き取り調査を受けることになってしまったという。

ハラハラ 被害

また、ハラハラ被害にあうのは、何も上司・先輩の立場にいる人だけではない。正社員とパート・アルバイトなど、雇用形態が違う人同士の間でもハラハラは起きやすい。

「パート勤務の方に、『マニュアルはここにあるから、わからないことがあったら確認してね』と伝えたら、相手の怒りをかってしまって……」

そう話すのは、営業部門で正社員として働く田中さん(仮名/30歳)。

「正社員だからって、なめた口をきいてくる」
「聞かなくてもわかるようなことをいちいち言ってきて、私のことを下に見ている」

そう糾弾されたり、「あなたを訴えたら、私が勝ちますよ?」と脅しまがいのことを言われたりしたことも。

自分は悪くないと思いつつ、その場をなんとかおさめるために「不快にさせてごめんなさい」と謝ってしまったこともあったという。

ハラハラは「被害者のせい」にもされがち

ハラハラ 被害

Woman typeが実施したWebアンケート調査では、ほかにもさまざまなハラハラ被害の実態が浮かびあがった。

・シフト管理をしていたときに、後輩に「次の休みいつにする?」と聞いたら「休みの日のことまで管理してくるなんてパワハラですよね?」と言われた(37歳・保育士)

・休日に後輩にLINEをしたら、「休日に連絡するのはパワハラですよ」と言われた(37歳・営業)

・会社の飲み会に新人を誘ったら「飲み会を強要された」と訴えられた(29歳・福祉)

・部下に「今後は能動的に仕事をしてほしい」と伝えたら、仕事を教えないなんてハラスメントだと自分の上司に訴えられた(30歳・事務)

・何度も同じミスをする部下に「それ、前も教えたよね?」と尋ねると、目の前で2時間泣き続けたあげく、社内通報していた(28歳・事務)

・期日を守らない後輩に「メールでいいから、ちゃんと報告するように」と伝えたら「それってメルハラですよね?」と言われた(33歳・イラストレーター)

・何度も同じミスをする20代の後輩に注意したら、「〇〇さんからパワハラを受けているので辞めたい」と私のことを名指しで社長に訴えていた(38歳・建築関連)

など、驚くべき回答が寄せられている。ただ、上記に似たケースに遭遇したことがある人はきっと少なくないはずだ。

また、上述の通り、ハラハラ被害はパワーバランスのある間柄に起きやすい。

管理職や現場リーダーの先輩など、立場の強い人がハラハラ被害にあうことが多いため、会社からのセカンドハラスメントにあうケースもある。

ハラハラ被害にあった営業職の木村さん(仮名/37歳)は、上司にその被害を訴えるも、「まともに取り合ってもらえることはなかった」と憤る。

「管理職なのに部下を管理できていない」
「あなたの指導力がないから、部下が育っていない」
「先輩なんだから、ちゃんと後輩を指導しなさい」

など、ハラハラ加害者の問題をも被害者のせいにされたり、人事評価を下げられたりしてしまうことも多い。

そのため、真面目に仕事をしてきた上司・先輩こそが心を病んだり、モチベーションをなくしたり、“潰れてしまう”問題も顕在化している。

「一人で抱え込まない」「無理しない」が鉄則

ハラハラ 被害

とはいえ、もしもハラハラ被害にあってしまいそうなときや、実際にあってしまったときには一人で抱え込まないようにしたい。

その際、相談相手は自分の上司や人事部門の人に限るなど、然るべき人に限定しておくことが大切。職場の同僚や社外の人に話をもらしてしまった結果、ハラハラ加害者が有利になってしまうこともあるからだ。

かつてハラハラ被害にあい上司に相談した森田さん(仮名/45歳・事務)は、「その結果、職場でハラスメントガイドラインを作成してもらえた」と話す。

労力はかかってしまうものの、「一定の効果はあった」と森田さんは振り返る。

「職場ですべきでないことはどうしても主観になりやすいので、基準を設けることで、話し合いがしやすくなりました」(森田さん)

また、相手を無理やり変えようとすればするほど拒絶反応が強くなるため、「距離を置くことも大事」だとエンジニアの高山さんは言う。

「ハラハラ被害を上司に相談して間に入ってもらいましたが、結局、相手がもっと反発して状況が悪化してしまったんです。それで、余計にストレスを抱えることになって……。

何を忠告・指導しても相手が変わらないなら『距離をとるしかない』ということで、思い切って配置換えをしてもらいました。加害者となるべくかかわらずに働けるようになり、今は平和です」

自分を守ることを考えて対処するのも一つの手。相手を無理矢理どうにかしようとせずに、静観する時間をとることも必要だろう。

管理職や職場のリーダーとして働く女性が増えているいま、ハラハラ被害は多くの女性にとって他人事ではない。職場で起きたハラハラは「自分だけの問題」と思わずに、会社全体で対処していけるように働き掛けていくことが大切だ。

上司の指示を無視するのは「逆パワハラ」になる? 若手女性に専門家が送る三つのアドバイス/ハラスメント対策専門家・山藤祐子 https://woman-type.jp/wt/feature/33517/
上司の指示を無視するのは「逆パワハラ」になる? 若手女性に専門家が送る三つのアドバイス/ハラスメント対策専門家・山藤祐子

【調査概要】
●調査方法:20~49歳の女性へのWebアンケート(クラウドワークス)
●調査期間:2024年07月30日~2024年08月05日/2024年10月08日~2024年10月13日
●有効回答者数:43名

文/栗原千明(編集部)イラスト/石山好宏