【崔真淑】2025年の転職市場の動きをエコノミストが解説!トランプ政権が日本の女性活躍・中途採用に与える影響とは
2025年の転職市場はどうなる? 女性採用が活発化する業界は? 最新の転職市場動向や、後悔しない転職を実現するために知っておきたい会社選びの新しい視点について、採用・ビジネスのプロが解説します!

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— Kamala Harris (@KamalaHarris) November 6, 2024
トランプ前大統領といえば、人工妊娠中絶否定派・反LGBT派としても知られており、「女性差別が助長されるのでは」と懸念する声も目立つ。
では、2025年1月にトランプ政権が再び発足することによって、アメリカ・日本社会には具体的にどのような影響が出るのだろうか。
日本経済に与える影響から、女性活躍や中途採用、働く女性たちの仕事と暮らしに起き得る変化をエコノミストの崔真淑さんに予測してもらった。

【Profile】
エコノミスト
崔 真淑(さい・ますみ)さん
投資銀行で株式アナリストとして携わった後に、2012年に独立。経済学を軸にニュース・資本市場解説をメディアや大学等で行い、上場企業の社外取締役なども務める。若年層の経済・金融リテラシー向上をミッションに掲げる。現在は、一橋大学大学院博士後期課程にも在籍 X
女性活躍推進が逆行することはない
今回の大統領選は、初の女性大統領が誕生するかという点も含め、注目していた人が多かったと思います。
また、選挙戦の主な争点の一つとなったのが、「人工妊娠中絶」に対する考え方でした。
女性が中絶する権利を主張したカマラ氏と、やむを得ない事情を除いて中絶に反対の立場をとったトランプ氏。どちらを支持するか、女性の中でも意見が分かれていました。
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) November 11, 2024
もしかすると、今回のトランプ氏再選によって中絶に関してはこれまで歩んできた道を逆行するような流れができるかもしれません。
ただ、だからといって、ビジネスの文脈で女性差別が助長されたり、女性活躍推進が阻まれたりするようなことは「ない」と言い切れると思います。
それはなぜか。
例えば、欧州連合(EU)やイギリスでは、上場企業に対して女性の取締役を登用することを事実上義務付けています。
ヨーロッパを中心にESG経営(※)に取り組む企業が増えていることに加え、「ESG経営ができていない企業とは取引をしない」という企業が世界各地に増えているのです。
環境(Environment)、社会(Society)、ガバナンス(Governance)の3つの要素を、長期的な企業の成長のために重視するという経営方法
こうした流れを受けて、アメリカでも上場市場の運営企業が上場指針を通して女性取締役を配置するよう呼び掛けており、日本においても上場企業を対象に女性役員登用を登用することを企業統治指針が実質的に義務化しようとしています。
女性支持者を集める点においても、こうした流れを「あえて断ち切る」ようなことはトランプ氏もしないはずです。
また、女性役員を増やそうと思うと、将来的に役員になり得る女性管理職の育成が欠かせません。
上場企業を中心に、リーダークラスの女性や、管理職を目指す意欲の高い女性の採用に乗り出す企業が国内でも増えていくでしょう。
輸出産業、金融業界で女性採用活発化

トランプ氏の政策による効果は、一言でいうと「ドル高・円安」を起こさせるものです。それによって今後、日本の輸出産業が盛り上がる可能性があります。
一方、消費者視点で見ると輸入品の価格が上がり、家計はよりいっそう厳しくなる可能性も。
海外向けにビジネスができている一部の企業は儲かるけれど、そうでない企業に勤めている場合、そこまでインフレの恩恵は得られないかもしれません。
もし、今後も長く成長する会社で働き収入を上げていきたいと思うなら、海外向けに輸出できる商品・サービスを持っている企業に注目して転職先を選んでみるのも一つの手。
例えば、自動車、造船などの製造業は、ますます利益を伸ばしそうな代表的な業界(ただ、日産自動車は除く……)です。
機械、金属・鉄鋼、電子部品・デバイス、化学、食品、医薬品関連など、海外向けにビジネスを展開している企業の多くで中途採用が活発化するでしょう。

また、輸出産業を行う企業では、ESG経営に取り組む海外企業と取引する機会が増えています。となれば、自社でも女性採用をよりいっそう活発化させ、管理職登用なども積極的に行っていくはずです。
もう一つ、トランプ氏は中国に対して関税を引き上げる政策を推進しようとしています。
すると、中国もその応酬としてアメリカへの輸出品を制限するようになるなど、中国国内の不景気がますます加速する恐れも。
投資家にとっては中国に投資するリスクが高まるため、アジアの中でほかの投資先を探す必要が出てきます(すでに、投資マネーが中国から逃げ始める動きが起きています)。
そんな中で、真っ先に注目されるのはシンガポール。でも、それだけだと心もとないと思ったときに、日本が海外投資家から注目される可能性は十分にあります。
日本がアジアの金融ハブとして認識されれば、今後投資マネーがざくざく入ってきて、漁夫の利を得る可能性があります。

そして、世の中は円安・インフレ状態が続けば、政策金利が上昇。そこで儲かるのが、金融業界です。一部の良質なメガバンク、地方銀行などでは女性採用が活発化するでしょう。
物価高騰が続く中でもっと生活にゆとりを持ちたい、数年後も「伸びる」業界で長く仕事を続けたいーー。
そんな働く女性の皆さんには、これまでの経験を生かすかたちで業界をスライドする転職をぜひ視野に入れてみてほしいと思います。
取材・文/栗原千明(編集部)
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