てぃ先生に「保育園にこれを言ったらモンペ?」を相談したら、悩むポイントがズレてることに気付いた
慣らし保育を終えて、本格的に子どもの保育園生活がスタートしたのも束の間。
「保育園の対応が、ちょっと気になるな」
「お願いしたいことがあるけど、モンペ(モンスターペアレント)と思われないかな」
と、悩んだ末にグッと言葉を飲み込んでいる人もいるのではないだろうか。
長いお付き合いになる保育園。関係をこじらせたくないけれど、言うべきことは言いたい。
正当な相談と、クレームの線引きはどこなのだろうか……。
ということで、大人気保育士のてぃ先生に、相談してみた。
てぃ先生
現役保育士18年目。SNS総フォロワー数は200万人を超え、保育士としては日本一の数を誇る。テレビをはじめとする多くのメディアに出演し、「いま一番相談したい保育士」として紹介されることも。著書に『子どもに伝わるスゴ技大全 カリスマ保育士てぃ先生の子育てで困ったら、これやってみ!』(ダイヤモンド社)など ■X
気にすべきは「何をどう言うか」じゃない
新年度が始まりましたが、SNSなどを見ていると、早速保育園に対して気になることや、お願いしたいことが出てきたママ・パパも多そうです。
「これって先生に言ってもいいの?」と悩んでしまう人は、その線引きについてどう考えればいいですか?
皆さん、「これは言ってもいいのか」「どう言ったらカドが立たないんだろう」って悩むんですけど、実は悩むべきはそこじゃないんですよね。
え、どういうことですか?
親御さんがまず気にするべきなのは、「どうやって保育士さんと信頼関係をつくるか」なんです。
というと?
初対面の人に言えることの幅って、かなり狭いじゃないですか。お互い人柄も分からないから。
でも、2年、3年と付き合いが続いて親しくなると、信頼関係が芽生える。そうすると、言えることの幅は広がりますよね。
だからこそ、パパ・ママに大事にしてほしいのは、「何を言うか」よりも、「どうやって信頼関係を築いていくか」。まずはそこから考えてみてほしいですね。
たとえば、最近SNSで「保育園であげているものではなく、普段家で飲んでいるメーカーのミルクに合わせて欲しい」という要望が議論を呼んでいましたが、「うちの子だけミルクを持参させて欲しい」なんていう要望も、信頼関係があれば応じてもらえたりするんでしょうか?
検討の余地がある園なら、可能性はありますよ。
ただ、「これにしてください」と要望としてぶつけられても、園としては動きづらいんですよね。「このミルクじゃないと子どもが不安定になるんです」みたいに、お子さんの事情として共有されて初めて、園の中で相談される話になる。
そして、要望ではなく事情として受け取ってもらえるかどうかは、日頃のやりとりの積み重ねで決まるんです。それが信頼関係ですね。
なるほど。個別対応になっちゃうし、そもそも難しいのかなと思っていました。
そのご家庭の状況やお願いをする背景が見えてくると、「たしかに、この子の場合は仕方ないかもしれないね」と受け止めやすくなります。
結局は、人間と人間の関係なので、お互いのことをよく知って、信頼関係ができれば歩み寄りやすいのかなと思います。
でも、4月に入園したばかりだと、すぐに信頼関係を築くのは難しいですよね。
お互いまだ手探りの状態だと思うのですが……。
そうですね。だからこそ、緊急性が高いことについては、入園前の説明会や見学など最初の段階でしっかり相談しておいた方がいいと思います。
そのタイミングでは気にならなかったけれど、通い始めてから緊急で相談したいことが出てきた場合は、どうしたら良いでしょうか?
本当に緊急なら相談するしかないと思いますが、実際には通い始めてから「今すぐ対応してもらわないと困る」というケースが出てくることは、そこまで多くないんですよね。
本当に大事なことは、親御さんも入園前に相談しますから。
そこで話ができていれば、入園してすぐの時期に大きなズレは起きにくいんです。むしろ、何カ月か通う中でお互いのことが見えてきて、「あれ?ちょっと気になるな」ということが少しずつ出てくる。
でも、そのくらいの時期までに保育士と親御さんの関係ができていれば、相談しやすくなっているはずです。
保育士と距離を早く縮めるコツ
まだ信頼関係ができる前に、「緊急じゃないけど、できれば対応して欲しい」ことが出てきた時は、どうしたら良いのでしょうか。
軽く言って済むような内容ならいいと思いますよ。
そうじゃないなら、ある程度の信頼関係ができるまでは、様子見が賢明だと思います。
でも信頼関係ができるまで、かなり時間がかかりますよね……?
保育士さんたちと早く信頼関係を築くコツがあって。
え、何ですか?
毎日一つ、雑談をするんです。
子どもの好きなアニメとか、好きな食べ物とか?
できれば、子どもとは全く関係ない話をしてみてください。
関係ない話?
たとえば、保育士がピカチュウの靴下を履いていたら、「先生、今日かわいい靴下履いていますね!」って話しかけてみてください。「先生、ピカチュウ好きなんですか?」って。
そうしたら、「好きっていうわけじゃないんですけど、キャラクターの靴下いっぱい持ってるんですよ」なんて、そこから会話が広がったりしますよね。
たしかに。でも、なぜ子どもの話ではない方がいいんでしょうか?
保育士側も誤解していることが多いんですが、子どもの様子や保育の話だけをしていても、信頼ってなかなか深まらないんです。
たとえば、学校で仲良くなった友だちのことを思い出してみてください。どんな話をして仲良くなりましたか?
うーん、取りとめもない話だったような気がします……。
そうですよね。「昨日このテレビ見たんだけどさ……」なんて話をしていたら、「え、それ私も好き!」みたいに盛り上がって、そこから距離が縮まっていく。人との関係って、そういうところから始まるものなんです。
保育士との関係も同じで、お迎えのときに「今日どうでしたか?」「今日はこんな様子でしたよ」といったやりとりだけでは、関係はあまり深まりません。
もう一歩、ちょっとした雑談や人となりが見えるやりとりがあってこそ、信頼関係は育っていくんだと思います。
なるほど、保育士と保護者という関係でも、大事なのは人と人との関係なんですね。
そうなんです。少しずつ信頼関係を築きながら、その中で「どこまでなら伝えられるか」を考えていく。
毎日ひとつずつ距離を縮めていけば、1カ月、2カ月経つ頃には相談できることも増えて、気持ちもずいぶん楽になっていると思いますよ。
「どうしても応じられない」保育園側の事情
信頼関係ができて、保育園に要望を伝えやすくなったとしても、応えてもらえるかどうかは別問題ですよね。
保育園側としては、聞き入れられる要望と難しい要望の線引きはどこなんでしょう?
基本的に、よほど人員に余裕がある園でない限り、「その子のために人員を追加する」ような対応は難しいのが現実です。
では例えば、「夜眠れなくなるので、お昼寝はさせないでほしい」というお願いは難しいのでしょうか。
そうですね。お昼寝はクラスみんなで一斉に行いますので、一人だけ起きている子がいるとしたら、その子だけ別の部屋に移動する必要が出てきます。
2時間も3時間も同じ部屋でじっと静かにしていることなんてできませんから。
そうすると、その子に付き添う保育士が必要になりますよね。こういったケースはなかなか応じるのが難しいと思います。
追加で人手が必要ない内容であれば、検討してもらえる余地はあるのでしょうか?
たとえば、きょうだいのどちらかが体調不良だと「2人ともお休みしてください」と保育園からお願いされるけれど、できれば元気な方の子は預かってほしい……なんていう悩みを聞いたりもします。
園のルールや価値観による部分だと思うのですが、そこを変えさせるのはハードルが高いです。
たとえば、土曜保育の利用についても「親が休みなら預けないでください」という園もあれば、「親御さんのリフレッシュのために預けてもいいですよ」という園もありますよね。
入園前に、その園がどんなルールになっているのかを確認して、不安な点があれば入園前に確認しておくのが一番いいですね。
ただ、新たに人員を割く必要がなくて、納得感のあるものであれば検討の余地はあると思うので、相談してみていいと思いますよ。
何度も相談するのが気が引ける時の攻略法
基本的に、人員を割くようなお願いや園のルールを変えることは難しい。
そのうえで、保育士さんと信頼関係を築きながら、気になることを相談しやすくするのが大事なんですね。
でも、関係ができてきたからといって、あれこれ伝えすぎると「うるさい親」と思われそうで、ためらってしまいます。
そこは大丈夫。ちゃんとアポイントを取ってもらえさえすれば、よほどじゃない限り、ネガティブな印象は抱きません。
アポイント?
普段、保護者が保育士とやりとりするのは、登園時やお迎えのときが多いですよね。
でも、その時間帯って、保育士がいちばん忙しいタイミングなので、頻繁に呼び止めて長話をされると、どうしても負担になってしまいます。
大事なのは、「みんなのための時間を独占しない」こと。そのために、「相談のための時間」を別でつくればいいんです。
たとえば、「少しご相談したいことがあるので、来週の水曜日のお迎えのときに、お時間いただけますか?」と一言伝えてみる。
そうすれば、その時間は「みんなの時間」ではなく、「あなたのための時間」になります。保育士もちゃんと心構えをした上で相談に応じてくれると思いますよ。
自分のタイミングで話しかけて、ガーっと要望を伝えるから迷惑になってしまうわけで、ちゃんと相談の時間を抑えれば問題ないということですね。
保育園って、なんとなく特別な場所に感じるかもしれませんが、実はやっていることは社会人同士のコミュニケーションと同じです。
相手との関係を少しずつ築いていくこと。相手の立場や忙しさを考えて、話しやすいタイミングを選ぶこと。
その積み重ねがあれば、自然と「相談できる関係」になっていきます。焦らず、一歩ずつで大丈夫ですよ。
取材・文/宮﨑まきこ 編集/光谷麻里(編集部)


