「どんなに質にこだわっても、評価されない」タイパ重視の職場における“完璧主義”との付き合い方【十束おとは】
働く女性が抱える仕事やキャリアにおけるメンタルヘルスのお悩みに、キャリア×メンタルヘルスの専門家、十束おとはさんが回答!心身ともにヘルシーに働き続けるためのヒントをお届けします。
丁寧に仕事をしたい。できるだけ質の高いものを届けたい。
そんな思いから一つ一つの仕事にこだわる一方で、スピードや仕事量で評価される職場では、「自分の仕事の価値が正しく評価されていないのでは」とモヤモヤしてしまうこともあるのではないでしょうか。
今回、「キャリア×メンタルヘルス」の専門家・十束おとはさんに寄せられたのは、効率を重視する職場において、完璧主義な自分との付き合い方に悩む女性からの相談。
会社の評価に対してモヤモヤしてしまう気持ちと、どう折り合いをつけたらいいのか。質を追求する姿勢は強みとして活かせないのか。十束さんに回答してもらいました。
十束 おとは(とつか・おとは)さん
アイドルグループ「フィロソフィーのダンス」を2022年11月に卒業。会社員を経て、現在はキャリアコンサルタントとして芸能人のセカンドキャリアや学生・女性のキャリア支援にも取り組む。キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、メンタル心理カウンセラー、メンタルヘルス・マネジメント検定、産業カウンセラーを取得。ゲーム・アニメ・漫画・映画といったサブカルチャーにも精通し、イベントMC・タレント・ライターなどパラレルキャリアを邁進中■X/Instagram
お悩み:仕事の質にこだわっても評価されないことにモヤモヤ…
私は完璧主義なところがあり、一つ一つの仕事にこだわりすぎてしまいます。
営業用の資料を作成する際も、「もっと分かりやすくできないか」「もっと相手の心を動かせる表現にできないか」と何度も見直してしまい、人より時間がかかることが少なくありません。
その分、営業担当から感謝されることも多いのですが、会社では仕事の質よりもスピードや仕事量などの定量的な指標で評価されるため、スピーディーに仕事をこなす同僚の方が高く評価されており、モヤモヤしてしまいます。
完璧を求める姿勢は自分の強みでもあると思うのですが、要領よく割り切れない自分とうまく付き合っていくにはどうしたらいいのでしょうか。
ご相談いただき、ありがとうございます。
資料を作る際に、「もっと分かりやすくできないか」「もっと相手の心を動かせる表現があるのではないか」と何度も見直してしまう。
私もこの連載を書くたびに「もっと分かりやすくできないか」と何度も推敲してしまうので、とても共感しながらお便りを拝見しました。
実際に営業担当の方から感謝されることも多いとのことで、その姿勢や成果は間違いなく相談者さんの強みだと思います。
一方で、スピーディーに仕事量をこなす同僚の方が高く評価されているように見える状況に「頑張っているのになぜ?」とモヤモヤしてしまうのも、自然なことだと思います。
まずお伝えしたいのは、完璧主義そのものは決して悪いものではないということ。
完璧主義な人は責任感が強く、細かなミスにも気づきやすいため、仕事のクオリティーを高める力があります。
その一方で、「もっと良くできるかもしれない」と考え続けることで、自分自身に厳しくなりすぎ、必要以上に疲れてしまうことがあります。
完璧主義は、心理学では大きく「適応的完璧主義」と、「不適応的完璧主義」の二つに分けて考えられることがあります。
高い基準を持ちながらも、届かなかった時に自分を否定せず、失敗を成長の機会と捉えて受け入れるタイプの完璧主義
基準に届かないことを怖れ、できない自分を強く批判してしまうタイプの完璧主義
完璧主義は強みであると同時に、「不適応的完璧主義」の傾向が強い場合は、ストレスや疲労をため込みやすくなる側面があります。
大切なのは、完璧主義をなくすことではなく、うまく付き合っていくことなのではないでしょうか。
「不適応的完璧主義」を手放すためのステップ
【1】「完成度」ではなく「目的」に目を向ける
完璧主義な人は、「もっと良くできる余地」にばかり意識が向き続けてしまいがちです。しかし仕事においては、「どれだけ完成度を高めたか」だけでなく、「その仕事の目的を果たせたか」も同じくらい重要なこと。
例えば、営業資料であれば「営業担当が自信を持って提案できる状態になっているか」「顧客に伝えたい内容が分かりやすく整理されているか」といった目的があるかと思います。
もしその目的が十分に果たせているのであれば、さらに細かな表現を何時間もかけて磨き続けることが、必ずしも成果につながるとは限りません。
完璧を諦める必要はありませんが、「成果に繋げる」ことが最優先であるという目的に立ち返ることができるようになると、自分を追い込みすぎず、強みを発揮しやすくなるのではないでしょうか。
【2】優先順位を「会社が求めていることに応える」→「質にこだわる」に変える
もう一つ考えてみたいのが、会社の評価軸との向き合い方です。相談者さんは仕事の質に価値を感じている一方で、会社はスピードや仕事量といった部分を重視しているようです。
ここで大切なのは、「どちらが正しいか」という話ではないということ。会社がスピードや量を評価するのには理由があります。限られた人数で成果を出すためには、一定の処理能力や生産性が必要だからです。
しかし、相談者さんが大切にしている品質へのこだわりも組織にとって欠かせない価値だと思います。現に、営業担当から感謝されているという事実は、その品質が誰かの成果を支えている証拠でもあります。
だからこそ、質にこだわったことを会社の評価に結び付けるために、自分の中での優先順位を入れ替えてみることをおすすめします。
まず、依頼を受けた段階で会社が期待していることを明確にしてみてください。「いつまでに必要ですか?」「どの程度の完成度を求めていますか?」と確認してみるといいでしょう。
仕事は一人で完結するものではありません。相手が求めているレベルや納期を把握することで、「今はスピードを優先するべき仕事なのか」「時間をかけて品質を高めるべき仕事なのか」が見えやすくなります。
質、スピード、量を総合的に見て、会社が求める基準を満たすことを優先した上で、余力や納期までの時間的余裕に合わせて、こだわりを乗せていく。
そんな風に優先順位を入れ替えてみると、「期待に応えてくれた」ことに+αで「ここまでやってくれた」という印象に変わり、より相談者さんのこだわった「質」の価値も際立ってくるのではないでしょうか。
会社の評価=自分の価値ではない
また、会社の評価が必ずしも自分の価値そのものを表しているわけではない、ということも忘れないでいただきたいです。
組織によって、重視するポイントはさまざま。スピードや処理件数を重視する会社もあれば、品質や顧客満足度を重視する会社もあります。だからこそ、「評価されていない=価値がない」と考えないことも大切です。
また、キャリアを考える上では、「会社からどう評価されるか」だけでなく、「自分はどんな仕事にやりがいを感じるのか」という視点も重要です。
相談者さんの場合、単に仕事を早く終わらせることよりも、相手の役に立つ資料を作ることに価値を感じているように見えます。その価値観は決して間違いではありませんし、長期的には相談者さんの軸になっていくはずです。
仕事の目的を意識しながら力の入れどころを見極めること。会社の期待値をクリアした上で、強みを発揮すること。そして、会社の評価と自分自身の価値を切り分けて考えること。
この三つを意識してみると、完璧主義は自分を苦しめるものではなく、あなたらしさを支える強みへと変わっていくかもしれません。
どうかその長所を大切にしながら、自分自身にも優しく接してあげてくださいね。応援しています。
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