【鬼頭明里】苦しかった下積み時代、「売れっ子になりたい」を手放して起きたこと

【鬼頭明里】苦しかった下積み時代、「売れっ子になりたい」を手放して起きたこと

特集:推しのお仕事!

いま日本各地で熱烈に「推されている」注目の人に、仕事に対する知られざる努力とこだわりをテーマにインタビュー。彼・彼女たちがファンから「激推し」される理由を探ります!

『鬼滅の刃』の竈門禰󠄀豆子役で一躍ブレイク、数々の人気作でキャラクターに命を吹き込んできた声優・鬼頭明里さん。2019年にはアーティストデビューし、今期はTBS系日曜劇場『VIVANT』第2シーズンでニュースキャスター役で出演し、俳優デビューしたことでも話題を呼んだ。

そんな鬼頭さんが、9月18日公開の『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』で演じるのは、自信が持てず、不安を抱えている14歳の少女・かりんだ。

今の活躍からは想像しにくいが、鬼頭さん自身にも、同世代の声優を前に自信が持てず縮こまっていた時期があるという。

かつて映画館の客席で『プリキュア』にライトを振っていた少女が、どうやって今の「応援される側」へとたどり着いたのか。鬼頭さんが仕事の“リミッター”を外すまでを聞いた。

鬼頭明里さん

鬼頭明里さん

10月16日生まれ、愛知県出身。2014年より声優として活動。主な出演作に『鬼滅の刃』竈門禰豆子役、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』近江彼方役、『ウマ娘 プリティーダービー』セイウンスカイ役、『ようこそ実力至上主義の教室へ』堀北鈴音役など。19年にアーティストデビュー。21年、第15回声優アワード助演女優賞を受賞。X Instagram

あの日客席で振ったライトが、今度は自分に向けられる

鬼頭明里さん
編集部

『プリキュア』といえば20年以上続くアニメシリーズですね。鬼頭さんはご覧になっていましたか?

鬼頭さん

はい、子どもの頃によく観ていました。なので、今回オファーをいただいて本当にうれしかったです!

私は特に『Yes!プリキュア5』の映画が好きで、劇場に行って客席でライトを振ったのを覚えています。あの頃ライトを振っていた私が、今度はライトを握り締める子どもたちに見守られる側になったというのは、非常に感慨深いですね。

編集部

鬼頭さんが演じるかりんは、キラキラした誰かが近くにいるほど、「私なんて」と不安を感じてしまう女の子です。大人の心にも刺さる感情ですよね。

鬼頭さん

まぶしすぎる存在が近くにいると「できていない自分」が浮き彫りになって、凹んでしまうことってありますよね。かりんちゃんも人と比べて「自分はダメだ……」と思ってしまう女の子です。

私自身にもそういう経験があるので、彼女の気持ちに共感しながら演じることができました。

劇中画像
編集部

かりんの痛みを、ご自身の記憶と重ねた部分もあったのでしょうか。

鬼頭さん

特に重なったのは、地元の愛知県から上京したばかりの駆け出し時代です。

オーディションで思うような結果が出ない中、同世代の声優さんがデビュー直後から大きな役に次々と抜てきされていく。それがすごくまぶしく見えて、よく落ち込んでいました。

編集部

鬼頭さんにもそんな時期が…!

鬼頭さん

とはいえ、私は人と比べること自体がダメとは考えていません。今回の作品でかりんちゃんが人と比べて「私なんて……」と苦しくなるのも、それだけ頑張っているからなんですよね。

自分が掲げた高い目標にしっかりと向き合って、努力しているからこそ、その基準に届かなくて苦しくなっちゃうんだと思います。

「売れている人」との間にあった明確な差

編集部

華やかな世界を目指す中で、当時はどんな毎日を送っていましたか。

鬼頭さん

一番大変だったのは、単純にお金がなかったことです(笑)

実家も、全面的に支援してもらえるほど余裕があったわけではないので、生活はかなりカツカツで。シェアハウスに住み、ラーメン店でアルバイトをしながら、オーディションを受ける毎日でした。

鬼頭明里さん
編集部

お金もない、オーディションにもなかなか受からない。一方で、同世代は次々と大きな役をつかんでいく。かなり焦る状況だったと思います。

鬼頭さん

そうですね。駆け出しの頃は「めちゃくちゃ売れっ子になって、オーディションにもバンバン受かりたい!」と高過ぎる目標を掲げていました。

でも、現実の自分はそこに届いていない。それで「私はダメなんだ……」と、自分の悪いところばかりを見て、弱気になってしまっていました。

そんな時に「自分と売れている人とでは何が違うんだろう?」と、俯瞰して考えてみたんです。

編集部

何が違いましたか?

鬼頭さん

私の目には、売れている人たちが、明るくて元気で、自信を持っているように見えたんです。今の自分とは真逆だなって。

当時の私は、自分のダメなところにばかり意識が向いて、アフレコ現場でもオーディション会場でも、「怒られないようにしなきゃ」と縮こまっていました。

でも、うまくいっている人たちは、周りの評価や叱られるかどうかを恐れていない。「私はこうした方がいいと思う」と、自信を持って、自分が良いと思えるお芝居をしていたんです。

鬼頭明里さん
編集部

「私はこうしたい」ではなく、「怒られないようにしよう」になっていた。そこまで萎縮していたら、自分らしい芝居を出すのも難しそうです。

鬼頭さん

そうだと思います。「怒られない正解」を探すことに必死で、自分から何かを出すことができていなかった。

それに気付いてからは、「私も、怒られないためにやるんじゃない。自分が良いと思えるものを出そう」と腹をくくりました。

「そういえば私って、もともとは結構、陽気で面白いやつだったはずだよな」とも思って(笑)。失敗を怖がるうちに、本来の自分まで見失っていたんですよね。

編集部

とはいえ、「怒られてもいい」と思えるようになるのは、かなり大きな心境の変化です。何がそこまで鬼頭さんを吹っ切れさせたのでしょう。

鬼頭さん

最終的には、「もう声優として成功できなくて、地元に帰って会社員になったとしても、私はきっと幸せになれる」と思えたんです。

声優として成功することだけが、幸せになる道ではない。そう思ったら、すごく気持ちが楽になりました。

そこからは、無理に誰かに合わせず、素の自分でいられるようになったと思います。

編集部

「声優になれなければ人生は終わり」ではなくなったことで、逆に声優の仕事がうまくいき始めたんですね。

鬼頭さん

はい。不思議なんですけど、吹っ切れてから、オーディションの合格が何本か同時に決まったんです。

「受からなきゃ」「正解を出さなきゃ」と思っていた時よりも、自信を持って、のびのびとお芝居ができるようになった。その変化が、結果にもつながったのかなと思います。

「素の自分」を好きでいてくれる人を大切に

編集部

「周囲が求める正解」ではなく、「自分がいいと思うもの」を出す。その姿勢は、お芝居だけでなく、“鬼頭明里”としてファンの前に立つ時にも通じていますか?

鬼頭さん

私は嘘がつけないタイプなんです。なので、ファンの皆さんや周りから求められている姿に自分を合わせるのではなく、お芝居と同じように、素の自分でいることを大切にしています。

万人に好かれようとも思っていません。素の自分を見せた上で、「それでもいい」と応援してくださる方たちを、大事にしていきたいです。

鬼頭明里さん
編集部

ファン目線で言えば、“好かれるための鬼頭明里”ではなく、鬼頭さん自身が心地よくいられる姿を見せてもらえる方が、長く推し続けられる気もします。

鬼頭さん

本当にありがたいです。ファンの方が応援してくださっているのは、今まで出演してきた作品のおかげなので、その作品やキャラクターに恥じないように活動していきたいです。

編集部

「推し」としてファンの方々に活力を与えている鬼頭さんですが、逆にご自身にとって日々の仕事を頑張るためのモチベーションになっているものはありますか?

鬼頭さん

やっぱり、お芝居をすることです。何より楽しいですし、私の一番の活力になっています。声優はもちろん、テレビドラマでのお芝居もそうですし、アーティストとして歌やパフォーマンスを届けることも、私の中ではある意味「お芝居」なんです。

お芝居を軸に、仕事の幅がどんどん広がっていく。それが今のモチベーションになっています。

編集部

最後に、かつて映画館で「プリキュア」へライトを振っていた鬼頭さんから、今度はスクリーンに向かってライトを握る読者へとメッセージをお願いします。

鬼頭さん

『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』は、誰もが一度は経験したことのある感情が描かれた、心が温かくなる物語です。

大人の方にも共感していただけたり、心に響いたりするシーンがたくさんあると思います。ぜひ、お子さんはもちろん、大人の方にも観ていただけたらうれしいです!

取材・文/小島浩平 撮影/笹井タカマサ

『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』2026年9月18日(金)全国公開

ある日、バツ印をつけられると大切なものが動かなくなったり、使えなくなったりする「バツ印事件」が街で発生!主人公の明智あんなたちは事件を追う中で、夢のようにきれいな場所「かりんの庭」で少女・かりんと出会い、仲良くなるのだが、突然ダメダメが現れて…。

ダメダメって一体なに?そして、不思議の庭に隠された秘密とは? その謎を「名探偵プリキュア」と一緒に映画館で解き明かそう!

映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密

■声の出演:
千賀光莉、本渡楓、長谷川育美、東山奈央、
松岡美里、髙橋ミナミ、高森奈津美、南條愛乃、花井美春、
長縄まりあ、種﨑敦美、松田颯水、上田麗奈、
加藤英美里、礒部花凜、羊宮妃那、梶裕貴、
鬼頭明里、島﨑信長、内山昂輝、コットン

原作:東堂いづみ
監督:上田華子
脚本:成田良美
音楽:深澤恵梨香、馬瀬みさき
キャラクターデザイン・総作画監督:宮本絵美子
美術監督:藤井里咲
色彩設計:竹澤聡
撮影監督:新井拓己
製作担当:直田宏隆

映画公式ホームページ:http://2026.precure-movie.com/
映画X:https://x.com/precure_movie

🄫2026 映画名探偵プリキュア!製作委員会

■ヘアメイク:坂本 由梨奈 (Leading)