「私には何のスキルもない」と焦る28歳へ。2000人以上の女性を支援してきた田中美和が伝えたいこと
あの頃、迷っていた自分へ。今、同じように立ち止まっている誰かへ。仕事や人生でさまざまな選択をしてきた女性たちに、「28歳にいま伝えたいこと」を自由に綴ってもらいました。人生の先輩たちから届く、十人十色のエッセイ集。
28歳。それは、私にとって「このままでいいのだろうか」と初めて立ち止まった年齢でした。
当時の私は、出版社で働く雑誌の編集記者。仕事は充実していて、毎日が慌ただしく過ぎていく一方で、ふと周りを見渡すと大学時代の同期が結婚したり、転職したり……それぞれの道を歩み始めていました。
「横並び」だった景色が少しずつ変わっていく中で、「私はこの先、どう働き、どう生きていきたいんだろう」――そんな問いが、心の中に浮かんでは消えるようになったのです。
あれから時間が経ち、私は会社員、フリーランスを経て、女性のキャリア支援を行う会社Waris(ワリス)を2013年に仲間と立ち上げ、これまで2000名以上の女性たちにフリーランスやリモートワークの仕事を紹介することで自分らしい生き方づくりのご支援をしてきました。
これまで数多くの働く女性たちの声に耳を傾けてきた立場から、今、分岐点に立つあなたに伝えたいことが4つあります。
1. キャリアは「与えられるもの」ではなく「選ぶもの」
1つ目は、自分のキャリアを、自分で選ぶということ。
会社の辞令、周囲の期待、「普通はこうするよね」という空気。私たちの周りには、知らず知らずのうちに進路を決めてしまう「他人の物差し」があふれています。でも、あなたの人生の主語は、いつだって「あなた自身」です。
大切なのは、正解を選ぶことではありません。「自分で選んだ」という実感を積み重ねることです。その積み重ねこそが、将来どんな変化が訪れても揺らがない、あなた自身の軸をつくってくれます。
2. ホームを飛び出して「越境」してみよう
2つ目は、いつもの場所の外に出てみるということ。
28歳の頃の私は、仕事に追われ、自分のための時間がほとんど取れない毎日でした。そんな中であえて挑戦したのが、チャリティーマラソンの事務局でのボランティア活動です。強制的に別の予定を入れることで、仕事一色の日々にメリハリをつけようとしたのです。
この「越境」が思わぬ発見をくれました。当時の職場は、筆力も企画力も私よりはるかに優秀な人ばかり。「私はダメだ」と自信をなくすことも多かったのですが、ボランティアの場では「物事を言語化するのが上手だね」「田中さんの文章は分かりやすいよ」と認めてもらえたのです。
自信になりましたし、ホームを離れてアウェイな場に身を置いたことで、自分では当たり前だと思っていた「らしさ」や強みが、くっきりと浮かび上がってきました。
もし今、「私には何のスキルもない」と感じているなら、いつもの場所を出てみることをおすすめします。ボランティアでも、副業でも、いつも行くカフェを変えてみるだけでもいい。小さな越境が、自分への新しい視点を運んできてくれます。
3. 働き方の「選択肢」を知っておこう
3つ目は、今の時代、働き方は驚くほど多様だということ。
正社員として組織で経験を積むことも、フリーランスとして専門性を武器に働くことも、リモートワークやフレックスタイムを活かして暮らしと仕事を両立させることもできる。副業や複業で、複数の顔を持つ人も増えました。
結婚、出産、介護、パートナーの転勤――ライフステージが変わるたびに、キャリアを「あきらめる」のではなく、働き方を「選び直す」。そのためには、まず選択肢を知っておくことが何よりの備えになります。28歳の今から、ぜひアンテナを立てておいてほしいのです。
4. 「学び続ける自分」が、最強の資産になる
そして最後は、自分をアップデートし続けること。
人生100年時代。私たちは、かつてないほど長く働く時代を生きています。20代で身につけたスキルだけで、その長い道のりを走り切ることはできません。
しかも今、AIをはじめとするテクノロジーは、とてつもないスピードで進化しています。私はこれを脅威ではなく、チャンスだと捉えています。実際、私たちが働く女性たちに行った調査でも、9割以上の女性がAIを「業務を効率化し、自分の可能性を広げてくれる相棒」と前向きに受け止めていました。
新しいツールに触れてみる。興味のある分野を学び直してみる。そんな小さな「リスキリング」の一歩一歩が、5年後、10年後のあなたの選択肢を大きく広げてくれます。学び続ける人にとって、変化の激しい時代は、むしろ追い風なのです。
「無理ゲー」を、「自分らしいゲーム」に
正直に言えば、今の日本社会には、まだ個人の努力だけでは越えられない壁もあります。だからこそ私は、環境そのものを変えていくために、これからも事業を続けていきます。
でも、それを待つ必要はありません。あなたには「選ぶ力」があります。柔軟にキャリアの形を変えながら、しなやかに、長く走り続けていく。そんな生き方が、もうすでに可能な時代です。
28歳のあなたへ。 あなたの人生には、あなたが思っているよりずっと多くの選択肢があります。 どうか、選ぶことをあきらめないで。誰かの物差しではなく、あなた自身の「心の声」を大切に。
その一歩一歩の積み重ねが、10年後のあなたを、きっと自由にしてくれるはずです。
株式会社Waris共同代表/共同創業者
国家資格キャリアコンサルタント
田中美和さん
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、日経BP社で雑誌「日経ウーマン」の編集記者として3万人以上の女性の声に耳を傾けてきた。2013年に株式会社Waris(ワリス)を共同創業し、フリーランスとして働きたい女性への仕事紹介、リスキリングによる女性の転職・就職支援、女性役員・管理職紹介等の事業を展開。女性のキャリア支援の専門家としてNHK、日経新聞などメディア出演多数。著書に『自分らしく働くための39のヒント』(KADOKAWA)がある。一般社団法人フリーランス協会理事■X
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