結婚、昇進、転職―― 若手女子が抱きがちな「将来への不安」の対処法
入社2~3年目の若手女子は、将来に漠然とした不安を抱きがち。仕事に慣れてくる反面、少し落ち着いて周囲を見渡せるようになると、「本当にこの仕事や会社でいいの?」「こんな働き方を続けられるの?」といった疑問が浮かぶようになる。
Woman typeのアンケートでも、「自分の将来を考えたときに、キャリアや働き方についての不安を感じる」と答えた若手女子は78%に上った。この結果について、女性のライフプランやキャリアについて多数の著書がある少子化ジャーナリストの白河桃子さんは、「変化のスピードが速く、正解のない時代だから、若い人が将来を不安に思うのはごく普通のことでは」と理解を示す。そこで、若手女子から寄せられた不安の中身について、白河さんに不安に思う背景と対処法を教えてもらった。
「小売業界の販売職は、女性比率が高い割に出産後も働き続ける人が少ないので、この人の周りにもロールモデルとなる先輩がいないのでしょう。育児支援の環境が整っていない会社なら、仕方ないかもしれませんね。だったら、今の会社で一生懸命働いて結果を出し、自分の市場価値を高めて、長く働ける会社に早めに転職することを考えては? 『資格もキャリアもない』と言っていますが、22歳の若さならそれも当然。これから自分の強みを磨けばいいのです。妊娠適齢期を考えると、できれば28歳ぐらいから真剣に、パートナーや親からの協力体制を含めた両立しやすい環境を、転職も視野に入れて整えていきたいところ。同じ小売業界でも、例えば赤ちゃん用品を扱う企業などでは、育児の経験を仕事に活かしてほしいと考えて出産後の女性を積極的に登用しています。こうした理解ある会社も探せばたくさんあるので、販売の経験とスキルを活かせる場を探ってみてください」
「まずは『営業のどこが嫌で、何に自信がないのか』をきちんと分析することをお勧めします。やりがいを感じられないのは、扱っている商材やサービスに興味が持てないだけという可能性も。それなら職種は変えず、自分が好きなものを扱う会社への転職を目指すことが解決策になります。忙しいのが嫌だとしても、営業は結果で評価される職種ですから、本来なら残業しなくても目標さえ達成できればいいはず。だったら今は営業スキルを高めることに専念して、短時間で効率的に結果が出せるようになれば、いずれ結婚や出産をしても家事や育児と両立しやすいでしょう。それに営業職はいつの時代も採用ニーズが高く、将来を考えれば非常に強みのある職種。しかも“営業は全ての仕事に通じる”と言われ、その経験はどんな業界や職種に転職しても必ず役立ちます。将来が不安だからこそ、営業職を究めるという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか」
「厳しいことを言うようですが、事務職を選ぶということは、この先も大きな昇給がない人生を受け入れたようなもの。結婚して夫と二人のお給料ならやっていけるかもしれませんが、ご存知の通り、今は誰もが必ず結婚できる時代ではありません。本当に老後が不安なら、営業職など結果次第で高いお給料を手にできる仕事に就くしかない。『営業は大変そうだから』という消去法で事務職を選ぶ人もいますが、飛び込み営業のようにハードな働き方はごく一部。同じ顧客を継続して担当するルート営業や、店舗に来たお客さまに対応するカウンター営業など働き方はさまざまですから、思い込みは捨てて情報収集をすれば、自分に合う営業職が見つかる可能性は大いにあります。しかも営業職は未経験可の求人も多い。悶々と不安を抱えたまま事務職を続けるくらいなら、思い切って稼げる職種への転職を検討する方が前向きだと思いますよ」
「こうして自分探しを延々と続けてしまう人は、転職エージェントなどのキャリアの専門家と一度話してみるのがお勧め。自分のスキルを客観的に判断してもらい、今の会社や仕事とマッチしているかを相談すればいいのです。人間はなかなか自分を冷静に捉えられないので、本人は自分を活かせないと思っていても、第三者から見れば『あなたのスキルは今の仕事にぴったりですね』と評価される可能性も。逆に、自分では気付いていないスキルがいつの間にか身に付いていて、それを発見してもらえることもあります。転職を考えるのは、それからでも遅くないのでは?」
「若い世代の人手不足を背景に、最近は非正規社員の正社員化を推進する企業が増えています。安倍政権が打ち出した女性活用の影響もあり、これまで非正規雇用から抜け出せなかった若い女性は今がチャンス。正社員になることを前提に、仕事を変える具体的なプランを立てましょう。正社員への登用実績が多い会社の契約社員に応募する、一定期間派遣社員として働いた後でその会社に直接雇用されることを前提とした『紹介予定派遣』の制度を利用するなど、今は正社員への道も多様化しています。広く情報を集めて、この機を逃さないよう積極的に動いてください」
「悩むということは、考えているということ」と白河さん。
「漠然と『何だか不安だな』と思っていると暗い気持ちになってしまうものですが、悩んだり不安に感じるのには理由があります。不安の正体にしっかり向き合えば、対処法も見えてくると思いますよ」
最後に白河さんは、「女性が長く働き続けることは、社会への大きな貢献になることを知ってほしい」と若手女子へメッセージを送る。
「日本女性の就業率が男性並みに上昇すれば、最大でGDPが13%増えるという試算もありますし、女性の収入が増えれば、当然家計の消費も増えて経済が活性化する。何より、働いてお給料をもらい、税金を納めているだけで立派な社会貢献なのです。普通の人が普通に働き続けることの価値をもっと知ってもらいたいですね」
今不安を抱えている女子たちも、「こうして働いていること自体が社会の役に立っているのだ」と考えてみたらどうだろう。目の前のモヤモヤが晴れて、今の自分にもっと自信が持てるようになるはずだ。
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少子化ジャーナリスト、作家 白河桃子さん
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。山田昌弘中央大学教授と共に「婚活」を提唱し、婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。『妊活バイブル』共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター 不妊診療科医長)と共に、東大や慶応、早稲田大学などで『仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座』を行ったりと、講演、テレビ出演も多数。相模女子大客員教授や経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員など、多岐に渡り活動中。主な著書に『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』、最新刊『「産む」と「働く」の教科書』など
『妊活講座 「産む」 × 「働く」の授業』動画:http://www.youtube.com/user/goninkatsu
【アンケート調査概要】
●調査方法:転職サイト『女の転職@type』の20代~30代女性会員およびWebマガジン『Woman type』サイト読者へのWebアンケートより、20~27歳の回答を抽出
●調査期間:2014年7月17日~23日
●有効回答者数:98名
取材・文/塚田有香