25 NOV/2016

安藤美冬さん流・20代女子のための「転機」の招き方――納得感あるワークライフを30代で築くために必要な行動力とは

現状に大きな不満があるわけではない。でも、何となく目の前の仕事をこなし、同じような毎日を送り、漠然と「このままでいいのだろうか」という不安を抱えている……。そんな、20代女性は少なくない。特に30代を目前にすると、その“焦り”はますます強くなっていくもの。

そこで、独自のノマドワークとライフスタイルを実践し、自分らしい働き方とキャリアを築き上げてきた安藤美冬さんに、女性たちが30代からの人生を“納得感を持って生きていく”ために必要な「行動力」についてお話を伺った。

安藤美冬

株式会社スプリー代表
安藤美冬さん

1980年生まれ、東京育ち。慶應義塾大学在学中にアムステルダム大学に交換留学を経験。株式会社集英社を経て独立。組織に属さないフリーランスとして、ソーシャルメディアでの発信を駆使した、肩書や専門領域にとらわれない独自のワーク&ライフスタイルを実践、注目を浴びる。月間4000万PVを記録する人気ウェブメディア『TABI LABO』エッジランナー(連載)、越後妻有アートトリエンナーレオフィシャルサポーターなどを務めるほか、商品企画、大学講師、コメンテーター、広告&イベント出演など幅広く活動。これまで世界50か国以上を旅した経験を活かし、海外取材、内閣府「世界青年の船」ファシリテーター、ピースボート水先案内人なども行なう。TBS系列『情熱大陸』、NHK E テレ『ニッポンのジレンマ』などメディア出演多数。著者に『20代のうちにやりたいこと手帳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『ビジネスパーソンのためのセブ英語留学』(東洋経済新報社)『やる気はあっても長続きしない人の「行動力」の育て方』(SBクリエイティブ)などがある。会員制オンラインコミュニティ《Wonderland》主宰。

20代後半は人生で最もつらかった時期。
思うように仕事ができない自分への失望感や焦りから抑うつ状態に

慶應義塾大学を卒業し、大手出版社に入社した安藤さん。一見華々しい経歴に見えるが、実は26歳の時、自分の未来が見えず、ひたすら迷い悩んだ時期を過ごしたという。

安藤美冬

「入社当初、“自分は何かができる人間だ”という大きな期待を抱いていました。けれど、実際に仕事をしてみると失敗の連続。会議でもうまく発言できずに落ち込む日々で、自分への “がっかり感”がハンパじゃなくて……。『自分はもっとできるはずだ』という失望感の中、必死で働いていました。一方で、『私が輝ける場所はここじゃない』と転職を考えたり、『せっかくいい会社に入ったのにすぐ辞めるのはもったいない』と揺り戻したり、ずっとその繰り返し。20代後半は特に、自分の未来が見えず、焦りと不安に苛まれていました」

入社3年目となる26歳の頃には、ストレスから体調不良を起こしてしまった安藤さん。医師に“抑うつ状態”と診断され、半年間の休職も余儀なくされた。また、過度のストレス状態による浪費を続けて貯金も使い果たし、そんな姿を見ていた恋人も安藤さんの元を離れていった。

「当時は本当に悲惨な状態でした。けれどこの時、何もすることがなく、時間だけはたっぷりあるという状況に無理やり置かれて、人生で初めて『立ち止まって考える』という経験をすることになりました。今までは足踏みしている自分が嫌で、いろんな人に会ったり、転職サイトを見たり、占いに行ったり、とにかく何かしなきゃともがいていましたが、実は『自分の心に向き合う』という一番大事な行為を怠っていたのだと気付いたのです」

『7つの習慣』を読んで“真逆のこと”ばかりやっていた自分に愕然!
普段は読まないビジネス本が転機を招くきっかけになった

安藤美冬

「自分が本当にやりたいことは何だろう」、「どんな人生を送りたいんだろう」、そんなことを考えながら、ふと立ち寄った書店で、安藤さんは一冊の本を手に取った。それは、世界的ベストセラーとなっている自己啓発のビジネス書『7つの習慣』だ。

「最初は『ハーバード大学を出ているような著者が説く成功者の教えなんて、普通のOLの私に役立つはずがない』と思ったのですが、どうしても気になって、試しに本を開いてみてびっくり。この本の中で良いとされている習慣が、当事の自分には何一つ当てはまらなかったんです(笑)」

自分自身が変わらないと、この苦しい状況からは脱出できない。そう痛感した、安藤さんは、「7つの習慣のうちの1つでもひっくり返すことができれば、状況が変わるのでは?」と考えたそうだ。

安藤美冬

「自分なりの解釈とアレンジを加えながらですが、一つ一つ、本に書かれていることを愚直に実践していこうと決めました。例えば、『思考を変える』という習慣については、ネガティブな“口癖”を直すことから始めました。当時の私の口癖は、『最悪だ』、『無理』、『とりあえず』、『まあまあ』、『一応』など。無意識に使っていた言葉だったけれど、こういう言葉が自分の人生をあいまいにしていると思ったのです」

また、安藤さんは自分を客観的に把握するため、日記をつけることも開始した。

「ただ考えていても、すぐに忘れてしまうことって多いですよね。なので、その日の自分の振る舞いや感情を手帳に書き留めていくようにしました」

目的地と現在地が分かっていてこそ、今後やるべきことが見えてくる!
寝る前の「3行日記」が自己理解を深めるカギに

あいまいな言葉を使うのをやめ、自分の気持ちを日記に書いていくに連れて、次第に自分がどういう人間なのかが見えてきた。すると、この先どうすれば自分が納得感を持って働き、生きていくことができるのかが少しずつ分かってきたそうだ。

安藤美冬

「私もそうだったように、20代の女性の中には、これから何を成し遂げたいか、どう生きたいのか、それが不明確な人も多いはず。でも、山登りにしても、電車でどこかに行くにしても、第一には“目的地”があるものですよね。また、自分の“現在地”を把握していなければ、そこに向かう“経路”も見つからない。現在地と目的地。この2つが揃わなければ、何となく自分の周辺をうろうろとさまよい続けるだけ。不安に陥って当然です」

自分の「現在地」と「目的地」を知るための手段として安藤さんがオススメするのは、自身も実践した寝る前に書く「3行日記」だ。

「その日、誰かとの会話や読んだ本の一節などで、印象に残ったことを自由に書いてみてください。そして、ここが面白い、こんなことを言われて嫌だったなど、何かを感じたその背景、理由をしっかり考えていけば、自分を知ることができます。自分が何を良しとし、何を嫌だと感じる人間なのかを知るうちに、人の意見や世間の価値観にまどわされないようになっていきます」

また、「転機を招くために何らかの行動をしようと思ったら、1回のアクションで終わらせることなく、継続することが重要」と安藤さん。点と点が繋がり、線になっていくと、自分が向うべき目的地へのルートが見えてくる。

他人の意見に振り回されるのをやめないと、“自分らしい30代”はやってこない

逆に、「何か変えたい」と行動を起こした女性がやりがちな失敗は、人の意見を聞きすぎることだと安藤さんは指摘する。

安藤美冬

「不安を感じている時に人に相談すること自体は悪くありません。でも、他人から何かアドバイスを受けたとき、全てを鵜呑みにしないでほしいと思います」

安藤さん自身も、転職するのか、独立するのか、働き方の選択に迷っていた時にはさまざまな人に話しを聞きにいったそうだ。だが、『会社に残れ』という人もいれば、『独立した方がいい』という人もいて、それらは全てアドバイスする人たちがこれまでどんな経験をしてきた人物なのかによって変わってくる。「●●さんが言っているんだから絶対的に正しい」ということはなく、その人がなぜそう言うのかということを自分なりに考え、最終的には自分で決断しなければならない。

また、「行動と思考、双方のバランスを崩さないことも大切」と安藤さんは語る。

「行動し続ける人は、一度立ち止まって自分を見つめる時間を取ること。逆に、頭で考え過ぎる人は行動を怠らないこと。転機を招きたいなら、いつもやっていないことをやるのが近道です。普段は絶対に読まないビジネス書を手に取ったことがきっかけとなって私の人生が変わったように、自分の感覚やスタンスの反対を意識してみるといいと思います」

改めて、安藤さんは「他人の意見に振り回されているうちは、いくつになっても納得感のある人生は歩めない」と念を押す。

安藤美冬

「自分の人生を生きるためには、自分で決断するということが一番大切です。それができるようになれば、どんな選択をしたとしても自信を持って前に進んでいけると思います」

これから30代をむかえ、“自分らしいワークライフ”を築くためには、20代のうちから「自分を知り、自分で考え、自分で決める」このプロセスを身体化させていることが絶対条件といえそうだ。

安藤美冬

『やる気はあっても長続きしない人の「行動力」の育て方 自分を変える「7+1の習慣」』(SBクリエイティブ)

踏み出す勇気は「習慣」から生まれる!
ノープランで独立し、今では海外で自由に仕事をしながら活躍の幅を広げている安藤美冬さん。本書は、安藤さんが座右の書としている『7つの習慣』をモチーフに、自らの失敗=今すぐやめるべき7つの悪習慣と、現在の成功を導いた安藤美冬版『7つの習慣』をご紹介いたします。今すぐ自分を変えたくなる1冊です!
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取材・文/上野真理子 撮影/赤松洋太