女優・川島海荷が“苦手な仕事”にあえて挑み続ける理由――「できることに安住しているうちは、自分の可能性は見えてこない」
「問題のある学校を、問題の転校生が解決する、問題作」――そんな奇妙なキャッチコピーを冠した『炎の転校生 REBORN』。Netflixのオリジナルドラマとして、2017年11月10日に全8話が配信された。ジャニーズWEST扮する個性的な男子高校生の中で、紅一点。謎めいたドSのヒロイン・日花里を演じるのが、川島海荷さんだ。いままでに、これほどエキセントリックな川島さんを見たことがあるだろうか? 随分とテンションが高い彼女の演技に、思わず目を奪われる。
「ポールダンスしてみようか」
サプライズ演出に体当たりで挑戦!
きよらかな顔立ちに無垢な瞳。まだまだ制服を自然に着こなせる23歳だ。しかし、そんな川島さんは意外にも、学園ドラマの経験がさほど多くない。同年代ばかりの現場は久しぶり。地方ロケで団体行動も多く、笑顔の絶えない撮影がとても楽しかったという。
「日花里は大声をあげたり、激しく命令したりと勢いのある役。最初はキャラクターがつかみきれず、戸惑いました。ジャニーズWESTの皆さんもそれぞれに個性的な役だから、みんな手探りで……監督からは『とにかく全力でやれ!』というストイックな指導が飛びましたね」
濃密な撮影の日々を思い出したのか、とてもおかしそうに微笑む。
「第一話では私がポールダンスをするシーンがあるんですが、これは完全にサプライズ。当日現場に行って初めて、そんなシーンがあることを知ったんです。もちろん未経験だし『皆を誘惑する目で!』と言われても、どうしていいか分からなくて……本当に、チャレンジが盛りだくさんの現場でした」
とは言うものの、出来上がったシーンでポールダンスを披露する日花里は、しっかりと妖艶だ。メイクをいつもと変えてみたり、視線や体の使い方を工夫したり……さまざまな即興のアイディアで、監督のオーダーに立ち向かった。それは、ポールダンスの場面だけではない。
「ある意味とても自由で、正解のないドラマだったんですよね。面白くできれば、やっちゃいけないことなんてないくらい、アイディアを出した者勝ち。最初は緊張していたけれど、だんだん現場や役に体が慣れて、躊躇なく動けるようになっていきました。皆の個性に日花里が埋もれてしまわないよう、大きな声を出して、トーンや間を変えて……。キャストも撮影スタッフも一緒になって、いろんなことを試していく楽しさがありました」
コメディーにニュース番組……
瞬発力が試される仕事にあえてチャレンジした
女優の仕事は、いわば“チーム戦”だ。たとえ一人芝居だったとしても、そのうしろには大勢のスタッフがいる。「周りと呼吸を合わせて、良いものを作りたい」、そんなふうに考えられるようになってきたのは、ここ数年のことだという。
「これまでは無我夢中で、自分のことで精一杯という感じで仕事をしてきました。でも、最近ようやく、周りを見る余裕が出てきたんだと思います。おかげで今は、どんなときも『一人じゃない』って思いながら仕事ができるようになって、少し肩の力が抜けたような気がします」
川島さんは、コメディーにずっと苦手意識があった。変わったキャラクターを演じるのは恥ずかしいし、アドリブもぽんぽん出てこない。「こういう仕事は向いていないかもしれない」と思ったこともあったという。しかし、自分の可能性を諦めずに多くの経験を重ねた。あえてコント番組に挑戦したり、瞬発力が試される生放送番組のレギュラーを務めていることも、今の成長へとつながっている。
「もちろん緊張するし、不安になったりもします。でも、自分でやると決めた仕事だから、細かいことでくよくよせずにやりきる。今回もそんな覚悟で臨んだら、どこかふっきれた気がして……皆と一緒に作品を作り上げていくことを、純粋に楽しめました」
毎日同じ仕事なんて無い。「小さなチャレンジ」を仕掛けるのは自分自身
「できることが増えて安定していくのはもちろん素敵だけど、基本的には飽き性なんです。ときどきは刺激がほしいし、初めてのことも試してみたい。自分が歩いてきた道のりを振り返ってみても、やっぱり新しいことにトライした経験が与えてくれるものって大きいんですよね。新たなチャレンジをしてこなかったら、今の自分はいなかったんじゃないかなって思います」
朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ)の総合司会も、ちょうど2年目に入った。就任当初は、大学を卒業して、長く続けてきた音楽活動にピリオドを打ったばかり。川島さんにとって、ターニングポイントになり得る大きなチャレンジだった。ほぼ深夜といえるほど朝早くに起きて、さまざまなニュースをお茶の間に届ける毎日。今では、さわやかな川島さんの笑顔に、その日の活力を得ている人も少なくないだろう。
「朝のレギュラーは毎日同じことをしているように見えるかもしれないけど、全然違うんですよ。ニュースも違うし、感じることも違うから、それって毎日新しいんです。むしろ土台があるおかげで『今日はこうしてみよう』『こんなアクションを試してみよう』って、自分から“小さなチャレンジ”に踏み出せたりもする。ささいなことでも、新しい発見や工夫を心掛けていたら、楽しくモチベーションが保てるんです」
どんな仕事でも、毎日同じようなことの繰り返しに思える瞬間がある。でも、アンテナをぴんと立てていれば、自分を変えてくれる“瞬間”をキャッチできるはず。
いつだって新しい一歩が自分を成長させることを、川島さんは知っている。少しでも前に進むために、彼女は日々の中で“新しい何か”を探すのだ。そして不意に「去年だったらこんなコメントできなかったな」「いつの間にかこういうお芝居ができるようになってたんだ」と、自分の成長を知る。
「チャレンジは、私に“ワクワク”を与えてくれるもの。始めるときにはドキドキもあるけれど、それも含めて楽しみながら、成長していく機会になると思っています」
みずみずしい笑顔の奥に、強い向上心。昨日よりも今日、今日よりも明日、もっといい仕事ができるようになりたいという、川島さんの意志を見た。
取材・文/菅原さくら 撮影/赤松洋太
作品情報
Netflixオリジナルドラマ『炎の転校生 REBORN』配信中
http://www.tenkousei-netflix.jp/
『Another Action Starter』の過去記事一覧はこちら
>> http://woman-type.jp/wt/feature/category/work/anotheraction/をクリック