お節介な人は全無視! 苦難は全部笑い飛ばす!――発達障害の息子を育てるシングルマザー芸人に学ぶ“潰れない”生き方【柏崎桃子(ももち)さん】
この人の人生は激動だ。17歳で妊娠、結婚。18歳で一児の母となるも、23歳のときに可愛いひとり息子の障がいが発覚した。さらに夫の浮気が原因で離婚。介護の仕事に就きながら息子と二人三脚で人生を歩みつつ、まさかの35歳で芸人デビュー。
柏崎桃子さん――通称“ももち”さんは、今も介護福祉士と芸人のパラレルキャリアで働きながら、多忙な毎日を笑顔いっぱいで送っている。
人から見れば、波瀾万丈な人生。だけど、ちっともネガティブなものを感じさせない。ちょっぴり人より大きめの体につめこんだ、さらに大きいパワー。逆境まみれの人生を、彼女が潰れずに生きてこられた強さの秘訣とは何なのだろうか。
「あのとき死ななくて良かった」どんな辛いことも、過ぎてしまえば全部笑える日が来る
いやあ、本当いろいろありました、私の人生(笑)。でもね、これでも昔はもっと普通の幸せに憧れていたんですよ。それこそ17歳で出産・結婚を決めたときなんて幸せな家庭を築く未来しか見えていなかった。ずっと夢見ていましたからね、おとぎ話のお姫さまみたいに大好きな人と幸せに暮らす未来を。
普通に結婚して、普通に子どもを産んで、普通に明るい家庭をつくって。そして40歳くらいになったら子育てがひと段落して、旦那とのんびり第二の人生。たまには優雅にハワイでバカンスを楽しんだり。そういう「普通の幸せ」が手に入るんだって信じ込んでいました。
が、違った。
全然、思い通りにはいかなかった~! っていうか、「普通」ってものすごく難しい(笑)!
付き合っていた頃は頼もしい大人の男に見えていた夫が、実は超金づかいが荒くて、すぐに借金をつくってくる人だということが発覚。パチンコばっかりで、全然生活費を入れてくれないから、私たち家族の生活はどん詰まり。借金の取り立てに怯える毎日が始まりました。もう一時は、近所のパチンコ屋をどうすれば一掃できるかってことばっかり考えてましたよ(笑)。
そして、愛しの息子は、なかなか言葉を話さない。何とか自分なりにやってみようと、絵本の読み聞かせをしても、すぐに逃げようとする。孤独だったなあ、あの頃は……。
軽度の発達障がいがあると診断されたのは、息子が5歳のとき。しかも、間もなく旦那の浮気が発覚。女にお金を貢いで、また借金が膨らみました。もうこれはないな、と離婚です。
「普通の幸せ」をあんなに夢見ていたはずの私が24歳でシングルマザーに。ハワイでバカンスどころじゃなくなりました。まあ、そのあと自力で稼いでハワイには行きましたけどね(笑)!
シングルマザーになってから、今年で14年が経ちました。息子も高校を卒業し、いよいよ子離れの季節。私は私で、介護福祉士兼芸人という、17歳の頃に夢見ていた未来とはかけ離れた人生を送っています。
そりゃあ大変なこともありました。旦那と離婚した直後なんて、それこそ息子と一緒にこのまま死んでしまおうかって考えたこともある。
でもね、あのとき死ななくて良かったー(笑)!
よく波瀾万丈と言われますが、過ぎてみれば全部笑いごとですよ。「あのときは大変だったわ~」って笑って、それでおしまい。人生なんて、そんなもんです。自分の心持ち次第で、どんな辛いことだって乗り越えられる。潰れずに生きていくことってできるんですよ。
幸せの基準は人それぞれ。勝手に“可哀相”認定してくる人は全員スルー
私の人生で一番辛かったのは、離婚とか貧しかったこととかいろいろありますけど、やっぱり息子の障がいのことだったかもしれない。特に何が辛かったかというと、周囲の声です。
私だって、そりゃあ人並みに自分のことを責めましたよ。実は、出産のとき切迫流産になりかけて、それが原因だったんだろうかって考えたり。なかなか月齢通りの反応をしない息子に対して、私には普通の育児ができていないんだろうかって、部屋の隅で膝を抱えて涙したことも。まあ、このおっきな体じゃ、ちゃんと膝を抱えられないんですけど……(笑)。
そんな私に周りは言うわけです。「子どもが子どもを産んだからだ」とか、「若いからちゃんとした育児ができないんだ」とか。もう、18歳で出産したことを大罪か何かのように言ってくる。
他にも、シングルマザーであることや、障がいのある子を持つ母親であることに対して、勝手に「可哀相」認定してくる人もいますね。私たちにとっては普通の日常なのに、よく知りもしないで、「辛そうね」「可哀相ね」と自分の幸せの基準を押しつけてくる人たちがいっぱいいました。
一方で、私とは逆に高齢出産をされた方に対して「遅くに産んだからお子さんに悪い影響が……」とか、ああだこうだ言ってくる人とかもいますよね。世の中にはなぜか人の人生にあれこれ口出ししてくる人がいっぱいいるんです。
これに対する助言はただ一つ。全部無視!これに限ります。
だってもう、余計なお世話じゃないですか。私も心が弱っているときは、些細な一言にいちいち傷ついたりもしましたけど、そうやって言ってくる人は、大抵私のことをよく知らない人たちばかりなんです。そんな人たちの声に傷ついて、萎縮して過ごしているなんて、人生もったいなさすぎる。だから気にしないのが一番。
潰れない生き方の秘訣その一、それは、外野の声はスルーすることですね。
「普通」なんて物差し、捨てちゃいましょう
そして、「普通」という呪縛から自分を解き放つことも大事ですよ。普通の結婚、普通の夫婦生活、普通の子育て、普通の老後。17歳の頃に描いていたものは何一つ手に入りませんでしたけど、だからと言って私は全然不幸じゃない。毎日が楽しいです。
それこそ、他の子に比べて息子の発達がゆっくりなことに対して不安になったし、悩みもした。いい子って何だろう、いい母親って何だろうって、めちゃくちゃ考えた。でも、そういうありもしない理想像に縛られるのをやめたら、ずっと気持ちが楽になりました。
「ちゃんと美味しい料理を作らなくちゃ」とか、「部屋はいつも綺麗にしていなくちゃ」とか、そんなの全部が完璧にできるわけがない(笑)。働いているお母さんならなおさら、仕事も家のことも完璧になんて絶対無理です、無理無理、絶対無理!だから、手を抜けるところは抜いて。何もかも完璧なスーパーワーキングマザーなんて目指さなくていい。うちの子なんて、毎朝コストコのパンがあれば大喜びでしたよ。それに、ちゃんと大きくなって今は立派な大人の男になろうとしてる。手を抜くところは抜いて、愛情だけはしっかりそそいであげたらいいと思うんですよね。
35歳で芸人デビューしたのも、人から見たら普通じゃないって言われるかもしれないですけど、私からすればやりたいと思ったからやっただけのこと。でも、もし私が世間の普通を気にするような人間だったら、とても35歳から芸人になろうなんて行動を起こせなかったかもしれない。普通なんて物差しを捨てたおかげで、人生の可能性も、自分の視野も広がった気がします。
潰れない生き方の秘訣その二。それは、普通なんてものに縛られないことです。
とにかく笑え! 周囲がつられちゃうほど笑っちゃえ!
じゃあ、普通の幸せを夢見ていたはずの私が今思う幸せは何かと言うと、答えは単純。笑っていることです。アハハッて笑ってりゃ、人生なんとかなりますよ。確かに人生思い通りにはいかなかったけど、はっきり言えることは、昔の自分より今の自分の方がめちゃくちゃ笑っているってこと。それだけで、最高に幸せですね。
私ね、毎朝、ママチャリで介護福祉士として働く職場に通勤するんです。ところが、職場までの道は坂がキツくて。もうすっごい傾斜。私は自転車を押しながらヒイヒイ坂道を登るんですけど、その度にこう思うんですよ、何か私の人生みたいって。「登っても登ってもまだ坂! 一体いつになったら平らになるの!?」って。そうツッコミを入れてたら、何かおかしくて笑っちゃうんですよね。辛い通勤の道だって、気持ち次第で笑えるものに変えられる。しかめっ面しているよりも、そっちの方が絶対楽しい。
介護施設の利用者の皆さんと話をしていても、ふと気づけば笑っている自分がいる。「今夜はステーキだ」なんて夕飯のことを考えたら、もうニヤニヤが止まらない。
皆に言われます、「桃ちゃんはいつも笑ってるね」って。
だから、潰れない生き方の秘訣その三は、とりあえず笑え!ってこと。自分が笑っていれば、何とかなります。つられて周囲の人まで笑っちゃうくらい、笑ってみて。これは騙されたと思って是非やってみてください。自分のことが可哀相だなんて、一切思えなくなってきますから。
そうやって笑いながら棺桶に足を突っ込めたら、むちゃくちゃ幸せな人生じゃないですか。「アノ人いっつも笑ってたよね~」って家族とか友達も最後まで笑ってくれて。
だから、私は何があっても死ぬまで元気にアハハッて笑いながら生きていきたい。人生は辛いことも多いですけど、良くするのも悪くするのも自分次第ですよ、ほんと。
取材・文/横川良明 撮影/赤松洋太
『どすこい!! ももち日和 ~芸人母と、発達障がいの息子の奮闘記』(宝島社)
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