28 SEP/2021

大人の発達障害はなぜ増えている? どんな症状? もややちゃんが脳内科医の先生に聞いてきた:脳の学校代表 加藤俊徳さん

大人の発達障害はなぜ増えている? どんな症状?――もややちゃんが脳内科医の先生に聞いてきた【Part1】

最近よく耳にする「大人の発達障害」という言葉。だけど、実際のところ、どういうものなのかよく分からないという人も多いのでは?

そこで今回から5回に分けて、脳内科医の加藤俊徳先生が「大人の発達障害」の基礎知識をまるっとレクチャー。知っているようで知らない発達障害について、もややちゃんが聞いてきました!

加藤俊徳さん

【お話を伺った方】
脳内科医/脳の学校代表 加藤俊徳さん
脳内科医/医学博士/脳科学者。株式会社「脳の学校」代表。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。米国ミネソタ大学放射線科MR研究センターでアルツハイマー病や脳画像の研究に従事。発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。慶應義塾大学、東京大学などで脳研究後、2006年、株式会社「脳の学校」を創業。2013年、加藤プラチナクリニックを開設。発達障害やグレーゾーン、認知症などの診断・治療だけでなく、MRI脳画像を用いて社会人の脳が成長する脳トレ医療を実践。著書に『脳の強化書』(あさ出版)、『発達障害の子どもを伸ばす 脳番地トレーニング』(秀和システム)『めんどくさいがなくなる脳』(SBクリエイティブ)『脳を強化したければ、ラジオを聴きなさい』(宝島社)などがある

「発達障害」ってどんなもの?

先生こんにちは。私、『Woman type』のキャラクター、もややちゃんと言います。

モヤっとすることが日々多いんですが……、今日は最近特に私のことをモヤつかせている「大人の発達障害」について聞かせてください。

分かりました。どうぞ。

ここ数年で、「大人の発達障害」という言葉を耳にする機会が増えた気がするんです。

でも、それって、ただ仕事ができないとか、さぼっているとか、そういう人が増えているわけではないんですよね? 具体的な症状としては、どんなものがあるのでしょう?

発達障害は、読んで字のごとく脳の発達過程に障害が見られることを言います。

特に「大人の発達障害」でよく見られるのは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、自閉症スペクトラムの2つですね。

AD(注意欠陥)とは、いわゆるうっかりとか忘れっぽいと言われるような症状のことで、仕事の面ではケアレスミスや整理整頓、時間の管理が苦手といった傾向が見られます。

HD(多動性障害)とは、落ち着きがないと言われるような症状のことで、貧乏揺すりをしたり髪をいじったり、そういったクセがある人が多いですね。

実際、こうした症状に悩む大人は増えているのでしょうか?

そうですね。今、こうした相談は急速に増えています。女性にも多いですよ。

それってなぜなんでしょう?

増悪因子はいろいろあるのですが、その一つとして考えられるのがスマホ利用者の増加です。

スマホが「発達障害」を招くんですか!?

原因の一つにはなっていますね。

スマホに夢中になっていると、自然と視野が狭くなるでしょう? そうすると健常の人でもいつの間にか注意障害が悪化してしまうんです。

あとはコミュニケーション障害。スマホをはじめとしたITメディアの発達により、自閉化が進んでいると問題になっています。

えっ……! 結構四六時中スマホさわっちゃっているんですけど。どうしてスマホを使っていると自閉化が進むんですか?

スマホがない時代はみんな自分の足を使って情報を収集し、直接面と向き合って人とコミュニケーションをとっていました。

でも、スマホがあれば、画面をタッチするだけでいろんな情報が取得できるし、顔を見なくてもコミュニケーションができるでしょう? 

それはそれで便利ではあるけれど、肉体行動を伴わないコミュニケーションが増えていくことで、脳がコミュニケーションの練習ができなくなってしまう

結果的に、それが自閉化の促進につながっていると考えられています。

スマホを使わないというのは無理ですが、少しは見る時間を減らすとか、もっと視点を違うものに移したりする意識は持った方がいいということですね。

そう思います。

「大人の発達障害」の約半分は後天的なもの

ところで、そもそもなんですけど、発達障害って先天的なものではないんですか?

先天性のものもありますが、昨今、「大人の発達障害」と言われているもののおよそ半分は後天的なものと考えられます。

つまり大人になって症状が表れたものがほとんどです。学校というコミュニティーで生活していたときは特に問題にならなかったことが、社会で仕事をしていく中で表面化していったという感じですね。

と言うと?

例えば、学校ではよく勉強ができた子がいたとします。

学力の面では何ら問題はなかったはずなのに、社会に出てみると簡単な電話番もできず、頻繁にミスを起こすというのはよくある話

これが実際に診断を受けてみると、発達障害だったというケースは非常に多いです。つまり、気が付かれにくいタイプがあります。

メモを取りながら電話をするのって意外と難しかったりしますよね。それも発達障害が原因ということがあるんですか?

十分あり得ます。あとは30代~40代になって急に小さなミスが増えたり忘れっぽくなったりするのも、発達障害が原因である可能性がありますね。

てっきり単にボケてきたのかと……。

確かに認知症の始まりだと誤解する人は多いです。特にご両親が認知症だった方なんかはそう思うことが多いようですね。

ですが、実際に認知検査をしてみても正常範囲で、脳のMRI検査でも一見、健康で、特に問題は見当たらない。ただ、詳細に解析すると、加藤プラチナクリニックで行っているMRI脳画像解析では、症状に特有の脳タイプが見つかっています。

その場合、注意欠陥障害の徴候であることも十分に考えられます。

自閉化に注意欠陥。いろんなワードが出てきましたが、ぜひそのあたりの違いを次回じっくり聞いてみたいと思います。引き続きよろしくお願いします!


【お話を伺った方】
脳内科医/脳の学校代表 加藤俊徳さん
脳内科医/医学博士/脳科学者。株式会社「脳の学校」代表。加藤プラチナクリニック院長。昭和大学客員教授。米国ミネソタ大学放射線科MR研究センターでアルツハイマー病や脳画像の研究に従事。発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。慶應義塾大学、東京大学などで脳研究後、2006年、株式会社「脳の学校」を創業。2013年、加藤プラチナクリニックを開設。発達障害やグレーゾーン、認知症などの診断・治療だけでなく、MRI脳画像を用いて社会人の脳が成長する脳トレ医療を実践。著書に『脳の強化書』(あさ出版)、『発達障害の子どもを伸ばす 脳番地トレーニング』(秀和システム)『めんどくさいがなくなる脳』(SBクリエイティブ)『脳を強化したければ、ラジオを聴きなさい』(宝島社)などがある。
【書籍紹介】
『脳を強化したければ、ラジオを聴きなさい』(加藤俊徳/宝島社)
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※この記事は、2018年6月25日に公開し、2021年9月28日に更新しています

 

取材・文/横川良明